【リクエスト】~If_Desire~「雪豹ヒーローは鮫にされて堕ちる」

  カンカン照りの夏日。いつもなら涼しくしている事務所の中でゴロゴロしているか、もしくは仕事で外にいるかだけど、今日は外は外でもいつもと違う。

  僕の名前は[[rb:雪平>ゆきひら]][[rb:氷空>そら]]。白毛に黒の斑点模様の、太くて長い大きな尻尾が特徴的な雪豹獣人だ。童顔で低身長なのもあって、余裕で中高生に間違われるような容姿をしているけど、今年で二十歳だったりする。もうお酒だって飲めちゃう歳だ。これでも子供の頃から少年ヒーローだったけど、今や正式なヒーローだ。

  「海だー!」

  けど、今日はヒーローじゃない。僕は休暇で海に来ていた。正確には僕達。

  「海くらいでそんなはしゃぐかよ」

  僕の隣には、茶と黒毛のシェパード犬獣人のおじさん、[[rb:狗巻>いぬまき]][[rb:繋>つなぐ]]がいる。多少鍛えてるとはいえくたびれたおっさんって感じだけど、元刑事、現ヒーローで、僕の同僚にして保護者、そして僕の愛する人でもある。今年で41歳だから、倍以上年上だけど、僕のこの気持ちは本物だ。

  今僕らは、N市の海側、大企業や工場の連なる港町、N市南区の海水浴場に来ている。久し振りに休暇を取って、レジャーってわけだ。ウィンタースポーツなら一人で行っちゃう僕だけど、さすがに海水浴に一人っていうのも寂しかったから、あんまり気乗りしてないのは百も承知で繋を連れて来た。

  「なんて言って、ちゃっかり新しい水着買ってるじゃん」

  「海なんか当分来てなかったから、そもそも無かっただけだろうが」

  既に僕らは水着に着替えていた。繋は青系でハイビスカス柄のサーフパンツで、僕はボックスタイプの、グリーンの股間に肉球の描かれてる水着だ。いっそ紺の無地のスク水みたいなのにしようかとも思ったけど、それじゃいよいよ遊びに来た親子になっちゃうから止めておいた。

  「まっ、折角来たんだし、たまにはあれこれ考えずに、息抜きしてこ」

  「ったく、しゃあねぇなぁ」

  なんて言ってたけど、繋はなんだかんだ僕の方に付き合って遊んでくれた。こんな時期だから海水浴のお客さんが、カップルや親子連れ、学生或いはもっと上の友達の集団と、まぁバリエーションは豊富だった。N市の海なんてここくらいだから、集まりもするよね。

  折角だしと浜辺で水遊びしたり、やたら本格的なビーチバレーをしてたからそこに飛び入りで参加させて貰ったりなんかしてたら、あっという間に正午を迎え、海の家で昼ご飯を食べることにした。

  「海の家と言えば、やっぱり焼きそばだよね!」

  「まぁ、気持ちは分かるな」

  結構いいお値段のする焼きそばを二人で食べて、かき氷はちょっと悩んだけどいつでも食べられるからいいやってジュースだけにしておいた。繋はビール頼んでたけど。別に悪酔いするタイプじゃないし、帰りもバイクじゃないからそこは大丈夫だ。

  「ふー、ジョッキなんか久々に飲んだな」

  「大丈夫? 安いお酒酔わない?」

  「心配すんな、出れなくなる程飲むこたねぇよ」

  何にとは言えない僕らだからそこは濁してたけど、まぁヒーローとして出動出来るくらいなら問題なさそうか。繋の顔、ちょっと赤いけど。

  「んじゃ、折角だし泳ぐ?」

  「ホント元気だなお前は……ってか、飲んだ後に本格的に泳げるかよ」

  「あ、それもそっか」

  「俺はのんびりしとくぜ」

  なんて言われてしまった。まぁ、繋がおじさんな以前に、飲酒して海に入るのは普通に良くないよなぁ。けど、繋がいなくとも折角海に来たんだから泳ごう。お金はロッカーに戻したし、酔ってても何かトラブルに巻き込まれたりは、多分ない。泥酔してたらさすがにマズかったけど、あれくらいなら平気かな。寝ちゃうことはあってもね。

  「さーてと」

  軽く柔軟してから、海に入る。海水浴場だからそんな遠くまで泳げることはないけど、本格的に泳ぐ距離くらいはあるかな。泳ぎは特別得意ってわけじゃないけど、水中は上下が自由になるから程々に好きだ。

  今日はいつもの変身アイテムのスノボゴーグルの代わりに、普通の海中用のゴーグルを着けている。物凄く綺麗な海ってわけじゃないけど、汚いわけじゃないから見る甲斐はあるね。

  ビーチの喧騒が嘘のように、海の中は静かだ。思ってるより潜ってる人はいないかぁ。まぁ、本格的に泳ごうって人は、こんな人のいる海水浴場には来ないのかな? そういう名所ってわけじゃないし、もっと潜るならダイビングとか行くか。

  ちょっと潜って行けば、届くところに砂地が広がってる。ビーチの延長って考えれば当然か。魚の姿もちょっと見えた。けど、こっちに気付いたのか、すぐ逃げちゃう。南区、海水浴場もあるのは知ってたけど、港の近くで企業ビルから工場まで色々あるから、勝手に水質悪いものだと思ってたけど、案外綺麗だ。これだけ綺麗なら、そりゃ人も集まるよなぁ。

  「ぷはぁっ」

  息継ぎの為に水面に戻る。うん、まだ余裕だ。しっかり息を吸って、もう一回潜ろう。外が暑いのもあって、気持ちいい。上がったらびしょ濡れで不快に思うんだろうけど、今は気持ち良さに身を任せよう。

  「ぷっはぁっ」

  しばらく遊泳を続けて、息継ぎをする。気付けば、結構沖に出ちゃってた。あんまり流されてたような気がしてなかったけど、これは、ちょっとマズいかな。そろそろ戻らないと……。

  「えっ……!?」

  それは、あまりにも突然の事だった。海中から、強い力で引っ張られる感覚に襲われ、その感覚の通りに海中に引きずり込まれる。

  声を上げる暇さえなかった。誰かが足を引っ張っている。そっちを見れば、灰色の影が見えた。長いヒレのある尾に、背ビレのある姿。変なものや野生生物よりも、まだ現実的な、鮫獣人だ。

  「ガボッ……!」

  『何っ?!』て言おうとしたけど、そういえば海中だ。って、こんな悪戯じゃ済まないようなことして来る相手に見覚えもないし、全力で抵抗しなくちゃいけない。

  足を振り払おうとするけど、180㎝はあろう体格のいい鮫獣人相手に力じゃ到底敵わない。けど、ディザイアを使うべきかどうか。海中で『凍らせる』力を使うのは、正直かなり問題がある。足先だけになんとか集中して……。

  「んっ……!」

  けど、向こうの方が先に動く。足を強く引き込まれ、鮫獣人の身体に抱き寄せられる。マズいマズい、接触面が多いと本当に自爆してしまう。なんとか、無理矢理叩けば、離してくれないかな。

  鮫獣人と目が合う。そこにあるのは、敵意でも悪意でもなく、なんなら久し振りに直接的に向けられる、たっぷり劣情の籠った目だ。こんな状況で、僕に対して劣情を抱いてるっていうの?! やってることほとんど殺人だっていうのに?!

  うっ、そろそろ、息がやばい……。

  「んんっ……!」

  なんとか上に上がろうとした僕に対して、鮫獣人は僕の顔を引き寄せ、その大きな口で齧り付く。頭を食い千切られそう、かと思ったけど、差があり過ぎただけで、どうやらディープキスのつもりらしい。

  息が限界で、口を開くと息が出来る。魚人とはいえ獣人でもあるから複合呼吸っていう肺呼吸みたいなのも出来るから、空気は送れるみたい。空気だけじゃなく、唾液なんかも入って来てるし、ちょっと噛まれてるけど……そういう変態さん?

  「いぎっ……!」

  なんて場違いな事を考えていると、急に痛みが走る。最初は頭痛くらいのものだったけど、すぐに頭の割れそうな痛みに変わる。明らかに何かがおかしい。ただの強烈な頭痛とは違う、頭の中から何かが突き破って来るような、そうとしか言えない痛み。

  続いて耳が千切れるような痛み。短いマズルの口元が、痛みと共に伸びるような感覚。そうこうしている内に頭痛が頂点に達して、痛みが突き抜ける。

  明らかに、異常だ。それも超常寄りの異常。ただの異常者かと思ったら、まさかヴィラン?! こうなったら、自爆覚悟でなりふり構わずディザイアを……!

  そう考えた時、口の中から解放された。あれ、頭と身体の感覚が、おかしい。身体に張り付く毛の感覚が、顔にない。

  「あがっ!」

  どうなってるんだって手で顔に触れようと思った時、痛みが身体を駆け下りていく。腕に、もっと言うと肘に、さっき頭に感じたような、身体の内側から突き破るような痛み。

  「がぼっ……!」

  改めて自分の腕を見た時、思わず声を出そうとして泡を吐き出してしまった。肘のところまでの毛が無くなっていたし、肌が灰色になっている。それがどんどん広がり、痛みと共に手の毛が抜けていき、灰色の皮膚に覆われていく。ただ毛が抜けているわけじゃない。身体が、別の何かに変わっている。

  なんとかしなくちゃ。けど、痛みで集中できない。残った部分だけでも海ごと凍らせようにも、上手く行かない。そうこうしている内にも手が完全に灰色の皮膚になってしまい、肘から何かが飛び出して、痛みの頂点を迎えた。これは……ヒレ……?

  「んぶっ!」

  突然、痛み以外のものが身体を突き抜ける。すぐにそれが何なのかは分かったから、僕は自分の身体を見降ろす。腹部どころか、既に太股くらいまで毛はなく灰色と、腹部や股間は白の肌に覆われている。そう、股間も既に変化していたのだ。今のは間違いなく、チンチンへの刺激の気持ち良さだった。

  ただ、僕の股間にあったのは、全く見慣れないチンポだった。まず、玉がない。スリットになっていて、そこからサツマイモみたいな形の、赤いチンポが出ていた。しかも、二本。それで、やっと分かった。僕の身体が、目の前の男と同じ、鮫獣人に変化しているってことが。

  「ごぼっ!」

  急に刺激が強くなる。僕の二本のチンポを、目の前の鮫獣人が両手で一本ずつ掴んで来たのだ。露出してる時点で既に勃起してるチンポを急に掴まれて、痛みが余裕で紛れるくらいの気持ち良さに声を出そうとたくさん泡が出る。

  チンチンの先を弄られている内に、足が、そして尻尾までもが変化していく。足はふわふわだったけど海水でべっとりの毛皮は、目の前の鮫獣人と同じ灰色と白の、サメ肌になっていく。雪豹の太い尻尾も、身体の続きのような灰色の皮膚の太い尻尾に変わっていき、先端がヒレになる。

  「あぼっ……!」

  けど、そんなことを気にしていられない程に、強い刺激に襲われる。ただチンポ扱かれてるだけなのに、いつもより快感が強い。二本あるから快楽も二倍ってこと……?

  マズイような気がしてならないけど、痛みが治まったのもあって、ただ純粋な、腰が抜ける程の快感に力が入らない。抗わなくちゃという気持ちと、このまま致しちゃいたい気持ちがせめぎ合う。

  「ぼはっ……!」

  そして、すぐに快楽に抗えなくなり、僕は射精してしまった。二本のペニスから同時に精液が飛び出て、白濁液が海中に漂うのが見えるほどのザーメンが出ている。

  力が抜ける。意識が遠のく。たった一発、二発? なのに、滅茶苦茶凄かったせいで、こんなに……疲労が……。

  ダメだ……眠い……。

  ---[newpage]

  海だ……深い、深い海。キラキラ光る水面が、遥か遠くに見える。青の煌めく光に手を伸ばす。その手は、灰色の鮫肌だった。

  「わっ!」

  バッと飛び起きる。なんか、身体が重いし、床は固いし……っていうか、ここ何処?

  「おっ、起きたか? 俺の可愛い番よ」

  声に反応して頭を上げると、鮫獣人の姿があった。一糸纏わぬ姿で、灰色の鮫肌はおろか、股間のスリットが見えちゃってる。僕と違って筋肉質で背も高く、よく見るとかなりカッコイイ。

  「って、君は……!」

  思わず手の中に氷柱を作り出す。ディザイアは使えるみたいだけど、氷柱を握る手が冷たすぎる。どうやら身体に起こった変化は夢ではなかったようだ。だとしたら、この人はヴィランってことになるから……!

  「おいおい、そんな物騒なもの、向けないでくれよな」

  「……っ!」

  そう言われて、氷柱を下ろしてしまう。言葉に強制力があるのか、強烈な躊躇が出てしまって、攻撃しようという意志がなくなってしまった。うっ……なんだろう、変な感じがする。顔が火照ってるような、そんな感じ。

  「俺は[[rb:灰鮫>はいざめ]][[rb:蒼海>そうかい]]。お前は?」

  「雪平氷空だよ……って!」

  聞かれてつい名乗ってしまう。わざわざヴィランに情報を与える必要なんてないのに、なんでか自然に応えてしまった。

  「っていうかそれ、お前もディザイア能力者だったんだな」

  「え、知っててこんなことしたんじゃないの?」

  僕は顔バレしてるヒーローでもあるから、知ってる人からすれば知ってるんだ。だから、プライベートをヴィランに狙われてもおかしくはないと思ってた。変態ヴィランに狙われることも、一度や二度じゃないし。

  「いや? お前みたいなドストライクな子、知ってたらすぐ手出してたぞ」

  「……はい?」

  思いも寄らない言葉が出て来て、僕はポカンとしてしまった。いや、確かにそういう兆候のある目はしてた。けど、色々おかしくない? ドストライクとか言ってるのに、なんでこんなことしてくるの?

  「ドストライクって割に、なんで僕を鮫にしたのさ」

  「ん? 何言ってんだ? 鮫にしたら最高だと思ったから手出したんだぞ」

  「何言ってんだ? はこっちのセリフだけど?!」

  思わず突っ込んじゃったけど、目の前の鮫獣人は大真面目に言ってるのが表情から分かる。本当に何言ってるんだろう……いや、ヴィランの言い分は聞くだけ無駄だって分かってるけど、にしたって酷い。最速で破綻してる。

  「もう、話しになんないから、僕行くよ」

  って、ここ何処だろう。改めて周囲を見回しても、全面岩っぽいし。天然の洞窟? こんなとこ何処に……。

  「……え?」

  日の射す方へと向かい、洞窟の外に出ると、海の見える浜辺だった。ただ、どう見ても周囲の様子がおかしい。陸側には文明の気配はまるでなく、なんなら少し行ったら森だ。

  「止めといた方がいいと思うぞ? 海で迷子になったら、さすがに大変だからな」

  「こ、ここ何処なの?!」

  「んん、沖合のどっかの無人島だな」

  「無人島!?」

  呑気に応える鮫獣人。確かにこの人の手の付いて無さに、この鮫獣人のヴィランの突飛な行動といい、全然有り得ることだ。けど、それは実質的に監禁されたも同然の状況というわけで。

  「ああもう! とにかく……」

  ぐぅ~

  家に帰してと言おうとしたら、お腹が鳴ってしまった。外の明るさからして、あの時昼だったから一晩は経ってそうだし、お腹空いてて当然か。

  「なんだ、飯か? 朝飯には丁度いいな」

  「丁度いいって、無人島に食糧なんてあるの?」

  「んなもん、獲って来るに決まってんだろ?」

  「とって……?」

  とって……盗って……は無人島だから無いにして、採って? それとも獲って? まぁ、無人島ならどっちかになるのか。にしても、あまりにも無計画過ぎる。

  「おら、さっさと海に入るぞ」

  「へ? 海?」

  「そりゃそうだろ。俺達鮫だぞ? 魚くらい獲れなくてどうすんだよ」

  「いや、でも……」

  鮫獣人はさも当然のことのようにそう言い、僕の手を引いて浜辺へ向かおうとする。言わんとすることは分かるけど、僕はそもそもが鮫獣人じゃないし、鮫獣人だからって、誰でも魚捕まえられるとは思えないんだけど。

  「いいから来いよ。手本見せてやるから」

  「あっ、ちょっ待ってよ……!」

  そう言われて半ば強引に海中にまで引き込まれてしまった。体格差に押し切られちゃったというのもあるけど、なんか反抗出来ない。

  「ぼぽ……」

  海の中に入ると、思わず声が出そうになって、口から泡が出るほど不思議と気持ち良かった。ただ泳ぐ気持ち良さじゃない。なんと言えばいいか、安心する? まるで、海の中にいることの方が自然なくらい……そういえば、息苦しさがない。それもそうか。鮫なんだから、エラ呼吸出来るんだ。

  鮫獣人、灰鮫……さんは、手足を使わず、尾ヒレを動かして、まるで魚のように泳いでいる。そんな器用に出来るものなのかなと思いながら、僕は手足を使って泳いで、それに着いて行く。着いて行く義理なんてないのに、小さな子が親に着いて行くような、そんな風に。

  ふと魚の群れが見える。魚の種類なんて詳しくないから分からないけど、熱帯魚とかではなさそうだし、多分食べれそうな種類っぽい。

  で、どうやって獲る気なんだろう。そもそも普通の鮫ってどうやって魚獲ってるんだろう。そんなこと、全然分かんないや。

  不意に灰鮫さんの気配が海の青に溶けて消える。目の前にいるのに、見ていないと気配が分からない。そして、一瞬で魚群へと飛び込んだ。灰鮫さんが魚群の中に入ってから、魚達が逃げ出すほどだ。口に一匹、両手に二匹、魚を捕まえていた。

  すぐに陸に戻って、一匹魚を貰った。

  「えっと、火起こしとかは……」

  「んぐんぐ、んん? 生で食っても平気だから、ちゃんと海の恵みを余さず頂きな」

  当たり前のように生魚を頭から食べる灰鮫さんが、僕にも同じようにしろと言って来る。いくらなんでも生魚は……って思ったけど、僕の思いに対して、美味しそうだなって感情が沸いてきてる。気付けば口の中に唾液が溜まってるし。

  理性の上では抵抗があるけど、案外すぐ魚のお腹から齧り付いていた。なんか生臭さが口に広がるけど、おかしい事に忌避感はない。美味しい、というにはなんかこう、調味料的に物足りなさがあるものの、海水の塩気があってそれだけでバクバク食べられる。

  あっという間に丸々一匹食べちゃった。っていうか、骨ごと食べちゃったけど、歯が鋭くなってるみたい。いくら鮫の人でも、ここまで歯が鋭いことあったっけ。知り合いのおじさんは、おじさんだからそうでもないのかな? 灰鮫さんは……すっごいギザ歯だ。

  「んぐっ、いくらチビでも一匹じゃ足りないだろ? 次は自分で獲るんだぞ」

  「自分でって……」

  確かに、まだ食べ足りない。けど、あんな風に泳ぐの自体、どうしていいのか分からないから、獲るって言ってもなぁ……。

  「ほら、着いてってやるからよ」

  何がほらなんだかって感じだけど、どうせそこに理屈はないんだろうからまた海に着いて行ってもらうことにする。

  「まずは泳ぎ方からだな」

  海に入って少し泳いだところで、後ろから抱き締められて浮上させられてから、そう言われた。言われたことより近すぎて何も当たってないのにドキドキするんだけど……。

  「もっとこう、本能に従って泳いでみろ。泳ぎ方を知らない鮫なんていない。出来るはずだ。尾ビレと、腕のヒレを使え」

  僕は鮫じゃないんだけど……とも言えない状態だから、大人しく言うことを聞いておこうか。本能のままにかぁ……泳ぐ。いや、進むって考えた方がいいのかな。歩くのに、いちいち足を前に出してとか考えないって考えなら、その方がいいのかな。

  もう一度潜って、手足を使わずに進もうとする。尻尾を揺らし、身体を動かして、ヒレで水を掴んで進む。あ、意外と進んでる。あんまり意識しなくても、泳げちゃうものだなぁ。

  そのまま沖の方までゆっくり泳いで、魚群を見付ける。さて、自然に泳げるようになったものの、あんな早く移動出来るのかな。とりあえず、やってみるしかないか。

  集中して、水中を蹴るように飛び込む。けど、思ったより推進力が付かずに、魚達はあっさり逃げて行った。うーん、灰鮫さん、どうやったんだろう。灰鮫さんの方見ても、なんか師匠ポジションみたいな感じで腕組んで見てるだけだし。

  っていうか、別に手掴みの必要はなくない? 僕には便利な力があるんだから、それと文明に頼ったっていいよね。前は近すぎて自爆の可能性があったからやらなかったけど、集中して準備すれば海中でも出来るはず。

  手の中に、細い氷の棒を作り出して、その先に尖ったところを作る。氷柱、というよりは、もうちょっと持ちやすい、氷の槍だ。陸で呼び出した時よりは冷たく感じないから、持って使えはしそう。

  改めて魚を探して、岩場にいるかなと見て、魚の姿があった。多分食べれそうかな。槍を構えて、サッと放つ。けど、水中なのを加味してなかったから、勢いが足りずに避けられちゃう。もっと早く、確実に……。

  シュッ

  今度は、思いっ切り氷の槍を放って、魚に当てる。今度こそ命中したようで、小さな魚に槍が突き刺さり、そのまま少し凍り付いた。あ、これ後処理が面倒かも。

  「銛か。悪くはないな」

  水面に上がり、最初に言われたのがそれだった。銛って言われれば、確かにこれは銛なんだなぁ。直接凍らせるよりは食べやすそうだけど、ガリガリするくらいじゃ済まなさそう。

  実際ちょっと齧ってみたけど、凍ってない部分はすんなり食べられたけど、やっぱり凍ったところはちょっと固いばっかりだ。

  それからもう一匹小さい魚を獲ってから、無人島に戻る。今度はなるべく凍らせず、ちゃんと解凍してから食べた。まぁ魚の味って感じ。ひとまずは満足だ。

  「……で、いつまでこんな無人島にいる気なの?」

  「いつまでって、ここで暮らすんだぞ?」

  「はぁ?!」

  いや、ヴィランのやることだし整合性なんて求めても仕方ないけど、拉致監禁となんら変わらない。ちょっと絆されかけたけど、やっぱりなんとか帰らないと。

  「僕は帰らなくちゃいけないんだ。僕は……!」

  言葉の前に、無理矢理抱き寄せられて、口で口を塞がれる。これで相手が……相手が、誰なら……? いや、繋だ。繋になら、されて嬉しいのに。

  「氷空、お前が何者でも関係ない。俺はお前を愛してる」

  「……!」

  長いキスを終えて、灰鮫さんにそう言われる。こんな状況じゃなければ、ロマンチックに聞こえる口説き文句だけど、絆されるわけにはいかない。いかないんだ。

  「もっと良くしたら、きっと一緒に生きたくなるはずだ」

  砂浜で押し倒される。この状況でそんなことを言われたら、何をするかなんて否応なく分かるというものだ。

  「ここを舐めろ」

  と言われて、僕の顔の前に灰鮫さんのスリットを鼻先に当てられる。磯の生臭い臭いもするけど、違う生臭さもスリットから感じる。この臭い自体は嫌いじゃないけど、今は良くない……。

  ピチャッ

  良くないのは分かるけど、灰鮫さんの言葉には抗えない。興奮はするけど美味しいとは思わない部位だけど、なんか少し旨味も感じちゃう。スリットの表面を舐めつつも、中のチンポを舐めるべく舌を突っ込む。

  「うっ……上手いな、氷空……慣れてるのか?」

  「んっ……まぁ、ね……」

  散々知らないおじさんや繋のチンポしゃぶってたから、慣れてると言われれば慣れてる。声からして舐められるのには慣れてないようだから、案外すぐ勃起して、二本の鮫チンポが出て来た。

  「よ、よし、そこまでだ……」

  「あっ……」

  勃起したチンポを一本咥えていたんだけど、灰鮫さんに止められて離すしかなかった。むぅ、これからいいところだっていうのに。

  「まず、一本行っとくか」

  「え、さすがに解かしてないのに入らないってえぇ……!?」

  もう挿入するのかと思ったら、思ってた場所とは違う場所に鮫チンポが当てられた。僕のチンチンの収まっている、スリットにチンポが当てられて、ゆっくり挿入される。

  「あひんっ!」

  スリットという未知の部位から来る快楽に、僕の身体が大きく仰け反る。スリットの中自体が敏感で、しかも中で勃起してないチンチンと触れ合っているのもあって、お尻に挿入されるよりも凄い快楽に目の前が白く点滅する。

  「あっ、まっあああ!!」

  灰鮫さんは待ってくれる気なんかなく、容赦なく腰を振られてしまい、今まで感じた事のない快感に背筋に電流のように快感が走り続け、頭がおかしくなりそうになる。

  「凄っ、氷空、お前、エロいな……!」

  貪るように腰を振る灰鮫さん。余裕のない腰振りでスリットからチンポを出し入れして、グチュグチュ厭らしい音を立てる。こんな、僕だってスリットからの刺激で余裕なんか無いのに、初々しさを覚えて愛おしく思ってしまう。

  気持ち良さでチンチンがスリットから出て来ようとしてるのに、灰鮫さんのチンポが当たってそれを遮り、孔責めと兜合わせが同時に起こってる。ダメ、こんなの、良過ぎてハマッちゃう……!

  「うおっ、出ちまう……! がああああ!」

  「んひぃ! あああっ!」

  一際強く腰を打ち付けて身体が密接して、スリットの中に熱いものが流し込まれる。僕も限界を迎えてしまい、スリットの中で射精してしまった。すごっ、気持ちいい……。

  僕のスリットから灰鮫さんのチンポ一本がズルりと抜けて、抜けたおかげというべきかせいというべきか、二本のチンチンがスリットから飛び出す。出したばっかりなのに、まだまだ僕のチンチンは元気だ。

  「ふっ、まだやれそうだな」

  「ひゃんっ!」

  そう言って僕のスリットから溢れる白濁液を指で掬い、今度はぶっとい尻尾の付け根辺りのお尻の穴に、ザーメンと一緒に指を突っ込まれる。こっちはむしろ慣れてる感覚ではあるけど、だからこそ気持ち良くって、その気持ち良さが欲しくなっちゃう。

  「もう一本も、満足させてくれよな……!」

  「うん、来て……!」

  解かすのも程々に、灰鮫さんのチンポが尻に入り込む。馴染みのある快感が背筋を走り抜け、僕の頭を焼いていく。気持ちいい。お尻ぐちゃぐちゃにされるの、気持ちいい……!

  「うおっ、こっちもすげぇな……!」

  「ああん! いい! チンポ、いい!」

  更に乱暴に腰を振られて、僕の二本の鮫チンチンもビクビク反応する。スリットから解放されて自由になったチンポが空気に触れて、より熱く感じて、またすぐイッちゃいそう。

  「シャアアア! また、出ちまう……!」

  「ああ!」

  お腹の中に、熱いザーメンが注がれる。気持ちいい。鮫になったせいか、熱いものが余計に熱く感じる。それを感じて、僕もまた二本のチンポからザーメンを吐き出した。

  「ふぅ、ふぅ……」

  「はぁ、はぁ……」

  灰鮫さんは僕のお尻からチンポを抜く。僕は、身体から力が抜けて、倒れたまますぐには起き上がれなかった。

  「良かった、だろう?」

  「う、うん……」

  身体が変わったことで、こんなに気持ち良さが変わるなんて……ダメだとは分かってるけど、身を任せちゃいそう……。

  ---[newpage]

  結局意識が飛んで、昼過ぎぐらいまで寝ていた。その間に海で身体を洗われていて、中に出されていたザーメンも全部掻き出されていた。

  昼ご飯に、灰鮫さんの獲って来た大きな赤身の魚を二人で別けて食べた。あんなの手掴みで獲って来るなんて……とは思ったけど、知り合いの鮫獣人のお寿司屋さんがやってたなぁ、そういえば。ここ、こんな時期でも獲れるんだ……。

  さて、ご飯を食べてから、特にやることなんてなかった。この無人島で、魚獲るのとセックスしかしてない。そして、特に何をするでもなく、灰鮫さんは当たり前のように海に入ろうとしていた。

  「……暇じゃない?」

  「泳いでいるだけでも時間は過ごせるぞ?」

  「いや、そうかもだけど……僕は灰鮫さんのこと、何も知らないわけだし、少しはお話もしたいかなぁって」

  こうなったら、相手を理解してどうにか地上に誘導するしかない。僕をヒーローとして認識して凌辱するために捕らえているわけじゃないなら、対話の余地はあるはずだ。

  「そうか。ならまず、俺のことは蒼海って呼んでくれ。灰鮫さんはさすがによそよそしいだろ」

  「分かったよ、蒼海」

  要求通りにするけど、距離感の詰め方がおかしいよなぁ……なんか、氷空呼びされてたし。セックスの感じからして、遊び慣れて無さそうだし、経験ない感じなのかな。

  「しかし、何を話したものか」

  「ずっと無人島暮らしなの?」

  だとしたらそもそも僕を拉致しに来たのは矛盾してることになるけど、どうなんだろう。

  「ずっとではないな。正確には数えてないが、多分一年くらいだ」

  「一年も、一人で?」

  「ああ」

  サラッと言ってるけど、殆ど遭難じゃん。でも、結局は孤独に耐え切れなかったってことなのかな。

  「じゃあ、どうして人里に?」

  「番を探しに行ったんだ。そしたら氷空を見付けた」

  「番って……じゃあ、女の子の方が良かったんじゃ?」

  「俺はそうじゃない」

  そうじゃないらしい。番っていう言い方をするからには子作りがメインだと思ったけど、そうでもないのかぁ。

  「んじゃあ、セフレが欲しかったってこと?」

  「む……いや、半分はそうだな。けど……」

  半身を海に浸かったまま喋っていた蒼海が、海から上がり岩場に座っていた僕を抱き寄せる。バリバリ変温の身体は冷たくて、幸い夏の日差しの下だからむしろ気持ちいい。

  「ただ傍に居て欲しい気持ちもある。言葉を交わさなくたっていい。ただ一緒に泳いだりするだけでもいい」

  「じゃあ、一緒に帰ったっていいんじゃ?」

  「それはダメだ。願いまでしたんだ。簡単に、帰化主義は捨てられない」

  うーん、そう簡単じゃないか。帰化主義……この場合、四足帰化主義だよなぁ……鮫獣人だから海洋帰化主義か。菜食主義とかよりはメジャーなものではないけど、獣らしく生きようというもので、過激派が多いせいで忌避感を持たれることの多いものだ。特に大破壊の一端となって東北を丸々森にしてしまったのが大きい。

  「それこそ簡単なことじゃないよ。僕は……!」

  「心配ない。俺の力で生きていける」

  「そういうことじゃないんだよ。僕は……僕は……?」

  あれ、僕は……なんだっけ? 何か、大切な事を忘れてるような……?

  「氷空、俺がいればいいだろう?」

  「うっ……」

  クイッと顔を蒼海の方へと向けられて、その顔を見せられる。なんだか、ますます格好良くって、目が離せなくって、だけど良過ぎて目を逸らしてしまいそうになる。なんとかしなくちゃという気持ちは確かにあるのに、強烈な恋心に気持ちがグラグラ揺れてしまう。

  「でも……」

  なんとか反論しようとしたら、蒼海はまた僕の口を口で塞ぐ。また、誤魔化されてるのに、強烈な幸福感が考えるのを止めさせて、抵抗心を掻き消していく。ずるい……でも、幸せを感じちゃう……。

  「大丈夫だ。心の底から、一緒にいたいと思えるようにしてやる」

  危険な言葉だというのに、その言葉に骨抜きになっていく。もういっかなって、思わされちゃうような、そんな言葉。大事だったものがあるはずなのに、それも、もう良いかって思えちゃう。

  そのまま一緒に海に入り、少し沖に出てから泳ぐことになった。二人でお互いを追うように円を描いて泳いだり、同じく追うように、今度は縦に円を描いて泳いだり、遊泳というよりダンスみたいだ。

  僕が手を伸ばしてその手を取って、水中でダンスも踊ってみた。社交ダンスみたいな、身体を密着させるゆったりとしたダンスをやってみたり、水中だからって好き勝手ブレイクダンスやってみたり、地上じゃ出来ない回転アクロバットをやってみたりと、なんだか楽しかった。

  夕方まで泳いで魚を獲ってご飯にして、夜の海に浮かんで空を、星を眺めていた。人工の光がないからか、星が綺麗に見える。綺麗で、ここに来て良かったかもって思うのと、なんだか本当に遠い場所にいるんだなぁって思う。

  それから寝る前にまたセックスして、翌朝を迎える。朝昼晩、必要なだけの狩りをして、遊泳や海中のダンス、それからセックスをする毎日。セックスすればするほど、蒼海に惹かれていき、だんだん危機感が消えて行った。

  水面に映る鮫獣人の顔。頭部に長いヒレがあって、灰色と白の皮膚に覆われている。ギザギザの歯にちょっと鋭い目。どっからどう見たって鮫獣人だ。そこに、何かの面影は見出せない。まるで、最初から鮫獣人だったかのような、そんな感覚。

  「蒼海……」

  「氷空」

  何度目かの夜。既に僕からセックスを誘うようになっていた。スリットもアナルも気持ち良過ぎて、他はどうでも良くなっちゃってる。

  蒼海のスリットに顔を近付けて、舌を入れてスリットの中を舐め回す。磯の香りの生臭さと、雄の青臭い生臭さが鼻に飛び込んで来て、興奮してスリットの中の二本のチンポを引き出すべく刺激する。

  「んはっ」

  二本のチンポがスリットから飛び出て、クラクラする雄の臭いを放っている。この二本のチンポを咥えて堪能したくもあるけど、このチンポは口よりももっと良い所に欲しい。

  「蒼海ぃ……」

  「ああ、分かっている」

  蒼海も、僕のスリットを舐めて解してくれる。それだけでもスリットが気持ち良くって、チンチンが元気になっちゃいそう。でも、そうなる前に蒼海はスリットから離れ、二本のチンポを僕のスリットに当てる。

  「ぐっ……!」

  「あんっ!」

  僕のスリットと蒼海のスリットとの距離がゼロになる。僕のスリットに蒼海の二本の鮫チンポが入り込み、交差して僕の勃起したチンポも蒼海のスリットに入っちゃう。

  互いが互いのスリットを犯して、チンポを擦り合わせて、身体が繋がる。スリットセックスの快感が全て詰まってる。僅かに動くだけでもとんでもなく気持ち良くて、身体も心も繋がってみたい。気持ち良さもそうだけど、この繋がりから来る幸福感が、僕を深みに沈めていく。

  「んっ……!」

  「ふぅ、ふっ……!」

  スリットにチンポを入れながら、僕達は激しいキスを交わす。意識して腰を振らなくたって、こうしてキスして身体を近付けて、僅かに動いてるだけで十分気持ち良くなっちゃう。

  「んはぁっ! 蒼海、蒼海……!」

  「氷空……!」

  互いに限界が近くなって、蒼海が腰を振るのを早める。もう我慢はいらない。感じるままに感じて、射精を求めるだけでいい。

  「ああんっ!」

  「シャアアア!」

  強く打ち付けられて、スリットの中に熱いザーメンが出されて、僕もザーメンを吐き出して、蒼海のスリットに出す。射精の快感と、ザーメンの温もりが齎す、強い多幸感。

  しばらく抱き合ったまま、賢者タイムにただ幸福を噛み締め合っている。僕達普段は冷たい肌だけど、今は互いに温もりを感じている。

  でも、それでは終わらない。一頻り抱き合ってから、僕らは海に入る。セックスの続きをするために。

  海中で言葉はなくとも、尻尾を上げてお腹を向けて、蒼海のチンポを尻穴に誘う。既に再充填されて二本のチンポが勃起していて、二本とものチンポが僕の尻穴に当てられた。

  最早解さなくともゆっくりチンポが沈み込み、二本のチンポを僕の尻穴は咥え込む。嬌声は泡となって海に消える。

  冷たいのに、熱い。尻穴の快感が背筋を走り全身を貫く。お尻の中が二本のチンポで切れてないのが不思議なくらいの圧迫感が埋める。辛さはない。ただ、いっぱいの蒼海のチンポに満足感があるばかりだ。

  互いに腰を振って、蒼海の束ねた二本のチンポを出し入れする。僕達の声が泡になり、卑猥な水音さえ海に溶けていく。激しくて、頭が真っ白になるほど気持ちいいのに、不思議と世界は静寂に包まれている。夜の暗い海の中なのに、世界は点滅している。激しくって、ぐちゃぐちゃになって、僕自身も、海と一つになっていくようだ。

  激しいセックスも、終わりを迎える。蒼海のチンポが両方膨らみ、僕のお腹の中にたっぷりザーメンが注がれる。僕の両のチンポからも海へとザーメンが放たれ、二度目の激しい射精に意識がぼんやりしてきた。

  蒼海の鮫チンポが抜け、お腹から蒼海の熱いザーメンが流れ出る。特に掻き出すようなことはせず、蒼海はそのまま僕を抱きかかえて浮上して、僕らが寝床にしている洞窟へと戻った。

  「おやすみ、氷空」

  「おやすみ、蒼海……」

  洞窟の奥の、海水溜まりの中に入り、二人隣り合い水中に浮かび、眠りに就く。硬い床よりも、今となってはいっそ寝心地がいい。

  すぐに眠りに就き、僕の意識は海へと溶けていった。

  ---[newpage]

  蒼海を受け入れて、そろそろ三十回は日が沈み身体を交える夜を迎えただろうか。

  僕の手には、三又の槍、トライデントって言うのかな。それが握られている。自分の力で作った氷のトライデントで、僕の背丈くらいの大きさがある。

  小さい魚くらいなら鮫の牙の噛み付きで捕まえられるようになったけど、大物を獲るならこっちの方が都合がいい。必要以上に獲らないという信条があるから、そんな大物は獲らないけどね。

  「!」

  けどたまたま見掛けたらやっちゃってもいいよね。鮫。なんか頭が平べったいやつ。同族だからダメという意識はない。ただ美味しいのかは知らないけど。

  トライデントを構える。水の流れを感じて、タイミングを見計らい、僕は水中を蹴った。正確には、足元に作った氷を。回転を乗せて瞬間的に距離を詰めて、下から一発。三本の穂先はしっかり鮫の腹部に突き刺さり、その命を凍らせる。

  魚達が逃げ出す中、僕は鮫の突き刺さったトライデントを引っ張って、僕達の島へと帰った。

  「ただいまー!」

  「おかえり。おっ、シュモクザメか」

  「うん、一発だったよ!」

  「おお! さすがだな、氷空」

  陸に上がって、待っていた蒼海に報告する。それを聞いた蒼海は自分の事のように嬉しそうに声を出して、僕の頭のヒレの側を撫でてくれる。お互いザラザラだから音がするくらいだけど、それでも嬉しくなっちゃう。

  「じゃ、一緒に食べよう!」

  「ああ」

  『いただきます!』

  ちょっとお腹のとこ凍っちゃってるけど、ギザギザの鮫の歯はバリボリ砕いて食べちゃえるから、もう気にせず食べちゃってる。骨までバリボリ食べちゃえる歯で、気にすることもなかったんだ。

  『ごちそうさまでした!』

  あっという間に骨まで完食して、夕飯を終える。お腹がいっぱいになるのがこんなに幸せなんだと、感じられる瞬間だ。

  日課となっている、夜の腹ごなしの遊泳。暗くたって泳いでいられるのは、僕らが単に獣であるわけじゃないのが分かる瞬間だ。帰化主義って獣になることだって思ってたけど、獣として生きる事と獣になることは違うんだなって、この生活をしてて感じる。蒼海がすんごい過激派じゃないからってのもあるかもだけど。

  「蒼海……」

  「氷空、本当にお前は、エロいな」

  「えへへ」

  一頻り泳いで、僕は蒼海を誘う。僕にエロいなんて言うけど、蒼海だってもう目をギラギラさせて、セックスしたがってるのは分かってるんだ。

  今夜も激しくセックスする。こんな生活が、これからもずっと続く。なんだか色々忘れちゃってる気はするけど、でもいいや。忘れちゃったことより、今を大切にしたい。

  「ああんっ!」

  頭が真っ白になるまで、幸せを噛み締めて、僕達は激しく交わった。