【skeb】『雑魚ヴィランの俺が負けるとヒーローにお願い出来るから、頑張ってヒーローにエロい事する』

  とある悪の組織の研究所。工場にも見えるその場所で、今日も彼らは世界征服を企み、恐ろしい実験を行っている。

  頭全体を覆うヘッドギアをされ、他にはパンツさえ穿いていない狸獣人。そして、その前に立ち観察する、白衣の腹の出たパンダ獣人。

  「131番、何が見える」

  「フラッシュ・ボディ……」

  「ほう……って、身体が光る力? ふぅむ……雑魚戦闘員だな」

  狸獣人の身体が眩しく光り、その光景に明らかに不満そうに一息付き、次の実験体である、狐獣人の前へと立つ。こちらもヘッドギア以外に何も身に着けておらず、そんな状況でも若干ぼんやりしながらもただ立っている。

  「次、132番、何が見える」

  「ルーザーズ・ボーナス……」

  「なんの力だ? 見た目には反応なし。能力の発動も確認出来ん。如何にも雑魚の力だ。これも雑魚戦闘員だな」

  やはり不満そうにパンダ獣人は大して検証せずに次の実験体の前へと移動する。

  「……ふぅむ、今回はこの『ショート・サーキット』くらいか。では、戦闘員に加工するとしよう」

  ほぼ裸の被検体達はヘッドギアから流される命令に従い、次の工程に回される。工場のようなところに並び、ベルトコンベアで流され黒い液体ラバーを纏わせられ、戦闘員としてのボディスーツを着せられた。真っ黒で体型の差しかないような状態だ。

  その状態から更にコンベアに流され、胸元に組織の髑髏マークと、その下に実験体番号をそのまま戦闘員番号として割り振られる。

  「戦闘員達よ、無能力者であったお前達に力を与えてやったのだ。その恩義に報い、使命を果たすのだ!」

  『はい!』

  今また悪が動き出す……かに思えた。

  数時間後。戦闘員と共に現れたヴィランが街に出て、破壊活動、および拉致活動を始めた。数分の間は上手く行き、街は混乱していた。

  「そこまでだ!」

  しかし、ヒーローがすぐに現れる。黄色ベースのボディスーツを着た、凄まじくマッシブな牛獣人、パワフル・ブルというヒーローだ。

  『出たなパワフル・ブルめ。戦闘員、一斉に掛かれ!』

  ベテランのヒーローで、この街を守るヒーローとして活躍しているパワフル・ブルの到着に、積年の恨みを晴らさんと指示を飛ばす。その命令に従い戦闘員達は一斉にエネルギーライフルを構えて攻撃する。

  「そんなもの、当たらんぞ!」

  武装はしているが、所詮能力を与えられただけの、実戦経験皆無の集団。一般人相手に脅迫が出来ても、ヒーロー相手では決定打にならない。凄まじい速度で走り抜け、物凄い勢いで戦闘員を吹っ飛ばしてしまう。

  『ええい! ショート・サーキットよ! お前の力を見せてやれ!』

  「はっ!」

  一人の上級戦闘員、能力と同じ名を付けられたヴィラン、ショート・サーキット。その力を生かすべく背から二本の電極が伸び、両手に電極を持っている。そこに力を込めて電気を流し、地面に電流が流れパワフル・ブルを襲う。

  「むぅ! ならばこうだ!」

  足から電流が流れ身体が痺れるも、ブルはその足で地面を踏み抜きコンクリートの道路を破壊する。それにより地面を流れる電流は阻まれた。

  「発射!」

  「なんの!」

  電極を合わせ空中放電し、ブルを狙う。稲妻の速度を避け切れはしないが、ブルは痺れも痛みも全て飲み込み、ヒーロースーツの防御力を信じ突破し、ヴィランに拳を叩き込む。パワフル・ブルの、『スーパー・パワー』という、筋力を強化する、ある意味ではただそれだけの力の加わったパンチ。たった一撃ながら、ヴィランを倒すには十分であった。

  『なんじゃと!? だが、今ならやれよう! 戦闘員共!』

  戦闘員の何人かがなんとか立ち上がり、エナジーライフルを向けて放つも、ブルはそれを避け、ブルの攻撃で戦闘員達は吹っ飛ばされ、地に伏す事となった。

  ---[newpage]

  ううっ……痛い……折角能力手に入れたのに、何の役にも立たないし、戦闘員になっても結局弱いし……。

  「ううっ……」

  『ルーザーズ・ボーナス獲得』

  なんだ……? 今の。

  「むっ、まだやるか!」

  「ひぃ!」

  運悪くまだヒーローが傍にいるのに声を出してしまって、パワフル・ブルがこちらに来る。

  「う、頼む、『見逃してくれ……!』」

  どうせ戦う義理はないし、土下座してでも見逃してもらいたい。けど、情はありそうで、同時に頭堅そうなヒーローに通じるもんじゃないよな……。

  『ルーザーズ・ボーナス発動』

  「……仕方ないな。行け」

  「へ?」

  「どうした、さっさと行け」

  あろうことか、パワフル・ブルは俺を見逃してくれるようだ。ともかく、このチャンスを逃すわけにはいかないから、俺はライフルを捨てて一目散に逃げ出した。

  俺は[[rb:小社>こやしろ]]カイ。中肉中背、狐色の毛皮の狐獣人という、普通も普通の男だ。普通じゃないのは、今は悪の組織所属の戦闘員だっていうことだ。いや、本当ならただ能力を貰うって話だったはずなのに、なんか頭に取り付けられてから頭がぼんやりしてきて、いつの間にか悪の組織の戦闘員にされていた。

  俺、なんであんなヤバいの持って戦闘員なんかやってたんだか。逃げようが無かったと言われればそうなんだけど。

  取り敢えずこんな格好で出歩くわけにも行かないから、人目を気にしながらマンションに帰る。ヒーローは見逃してくれたけど、顔見られてるし普通にバレたらヤバい。

  幸い住んでる場所の治安が終わってるのもあって、昼間には誰もいなかった。家に帰ってなんとかスーツを脱ごうとしたけど、チャックもないしピッチリモッコリしててどうやって脱げばいいんだ状態だ。

  仕方ない。ちゃんと着込めばスーツは分からないだろう。首まで完全に覆ってなくて良かった。どうにか組織に戻って、この趣味全開のピチピチスーツを脱がせて貰おう。

  「うわぁ……」

  しかし、それは叶いそうになかった。アジトのある工場に、ヒーローが突撃していったのを、見てしまったのだ。勿論幹部層のヴィランはいるだろうけど、基本悪の科学者の博士がメインの組織っぽかったし、複数のヒーローに殴り込まれたら、返り討ちには出来ないんじゃないか?

  工場の中でドッカンバッコン凄い音がする。俺、あんな破壊力あるヒーローにぶっ飛ばされてよく生きてたな……取り敢えず裏口から侵入して、スーツの除去とか出来るものがないかと探す。

  「これ……違う。これ? なんだよこれ……」

  警報鳴る中、博士の発明品置き場みたいなのの中から色々物色する。なんか空のカプセルとか俺達が着けられたバイザーとか、それから何に使うのかも全然分かんないようなのとか、色々ある。

  「ん?」

  このバイザーに付いてるの、小さいけどUSBメモリか? 悪の博士が標準規格使ってるんだとか馬鹿な事を考えて、それを取り外す。あ、本当にUSBだ。なんでこんなものが……。

  ドゴンッ!!

  「やべっ!」

  部屋の入口がぶっ飛んだ。マズいマズい、今度こそ見付かったら洒落にならないって!

  「あっ、貴様!」

  部屋に入って来たのは、よりにもよってパワフル・ブルだった。結構分厚いドアを殴って開けたんだ。いやいや、そんなこと考えてる暇ないって!

  俺は持っていたUSBを取り敢えずポケットに入れて、ダッシュで裏口に走る。でも、パワフル・ブルの足じゃ一瞬で追い付かれて、今度こそアウトだ。

  ……。

  ……?

  走りながらも、来るだろう衝撃に目を閉じていたんだけど、全然そんな様子無い。ふと振り返ると、ブルは博士の発明品を確認していた。俺の事なんて、気にしていないように。

  「へ? な、何して……」

  「お前が見逃せと言ったんだろう。親玉はもう捕まえた。お前のような戦う気の無い戦闘員にまで手を回せん」

  「じゃ、じゃあ……あ、だったら俺のボディスーツを破ってくれたりは……」

  「忙しいと言っているだろう」

  「ですよね~……じゃあ、俺はこれで!」

  こんなことあるか? いや、今はとにかくこのチャンスを逃さずに逃げよう。他のヒーローには顔バレしてないと思いたい。工場から出てしまえば、野次馬に紛れてしまえばバレない……よな?

  しばらく外に出て様子を見ていたら、あのパンダの博士が簀巻きにされて担がれて運ばれ、他にも幹部っぽい奴らもしょっ引かれていた。つっても、幹部っぽいの、二人しかいなかったのか……。

  その光景を見届けてから、俺は帰りに大きいハサミを買って家に戻った。ちょっと怖かったけど、首元に強引に隙間を作ってから、そこにハサミをに入れてスーツに切れ目を作り、なんとか忌々しい数字付きのスーツから逃れられた。こんな『私はヴィランです』って主張するスーツなんか着て生活してられない。

  「ふぅ……」

  共同の風呂に行ってから部屋に戻り、今日の事を考える。取り敢えずいくら金無し底辺とはいえ、あんな見え透いた罠踏み抜いたのは良くなかった。貰った能力『ルーザーズ・ボーナス』も結局……あれ、なんか発動してたよな。

  「えーっと……」

  パパッと検索してみる。『ルーザーズ・ボーナス』、『敗者の特典』ってところか? 敗者ってのがもう……って思ったけど、考えようによっては、弱いなら負けるの自体は難しくない。今更負け組の俺が負けたってどうって事は無いし。

  つまり俺はヒーローに負けたから、能力が発動した? でも特典……あっ、そうか。『見逃してくれ』って頼んで、それを実行したのか。あれ、でも後に頼んだスーツは破ってくれなかったから……一回限りって事か?

  ……これ、負ける度に発動するんだろうか。そもそも負けるっていうのが問題だけど、それが可能なら……。

  「よし!」

  ---[newpage]

  取り敢えず、通販でボディスーツを頼んだ。後目出しのマスク。どっちも黒で、ヴィランって感じのものだ。まぁ、俺が着ても様にならないんだけど、この際それはどうでもいい。

  ただの犯罪でも、ヒーローは出動することがある。とは言っても果たして上手い事もう一度パワフル・ブルに当たれるかどうか……。

  おっ、いたいた。巡回中とは都合がいい。負けるためにはまずヒーローと戦う必要がある。他のヒーローと戦ったって、結局『見逃してくれ』と頼むしかないなら意味がない。

  「や、やい、パワフル・ブル!」

  俺は取り敢えず適当なその辺に落ちてた角材を持って、ブルの前に立つ。いやけど怖いなこれ。身長2mオーバー、筋肉がスーツに浮かび上がる姿はエロいものの、それが暴力に変わるのは痛いなんてもんじゃない。

  「お? なんだ? 何処のヴィランだ?」

  やばい、舐められてるとはいえ、あの巨体が迫ってくるのは普通に逃げたい。けど、逃げたら意味ない。

  「や、やあー!」

  絶対効かないって分かってるけど、俺は、手に持った角材を振り、パワフル・ブルに当てる。当たった。手が痺れる。なんか、ベキッて音が聞こえた。

  「こんなもので、俺を傷付けられると思ったのか?」

  バシンッ!

  「いってぇえ!」

  ただのデコピン。だけど、パワフル・ブルの力の篭ったデコピン。額に当たったそれはそりゃもう痛くて痛くて、何なら身体が宙を飛び吹っ飛んで、背中から道路に落ちる。ううっ、普通に通行人に見られてるし、これで何もなかったら……。

  『ルーザーズ・ボーナス獲得』

  お? 来た来た。よし、これで……。

  「ん? なんだ?」

  「パワフル・ブル、『今すぐオナニーしてくれ』!」

  「は? こんなところでするわけないだろう。何を言っているんだ」

  あれ?! な、なんで発動しないんだ? さっき、確かにボーナス獲得は出たのに……お願いに限度があるのか? あーもう、やっぱりハズレ能力かよ!

  「い、いや……」

  「むっ、お前、こないだの……仕方ない、『見逃してやるから』とっとと行け」

  ……え? あ、マスクズレてるから、顔見えてる……っていうか、そっちはまだ有効なのか? じゃあ、一個だけ? それとも、ダメな願いのラインがあるのか? だったら……。

  「あ、じゃあ、『巡回の予定を教えてください』」

  『ルーザーズ・ボーナス発動』

  「む? ……まぁ、それくらいならいいぞ」

  結構それくらいって言えない情報を、ブルは教えてくれた。自分のものだけとはいえ、私服で巡回しているタイミングまでちゃんと教えてくれる。割と時間がしっかり決まってるのと、人目の付かないところを通るのまで、しっかり教えてくれた。

  「もういいか?」

  「あ、はい……それじゃ!」

  俺は圧倒されながらも、ちゃんと見逃された通り裏路地に逃げ出した。もう倒されたヴィランなんて一般人もそんな興味がないみたいで、俺の事を追うようにみたいな事を言う奴はいなかった。

  買った全身タイツは、背中側が結構汚れたの以外はそんなに問題ない状態だ。っていうか、収穫の方が大事だ。まず、いくらお願い出来ても、無茶なことはさせられない。巡回予定が無茶じゃないのかと思うけど、ブルはそういうの気にしないってだけなのか?

  そして、一回得たボーナスは、ずっと続くってこと。いや、ずっとなのかはまだ分からないにしても、一日では消えないみたいだ。これなら、一回見逃してもらえばそのヒーローからはずっと見逃して貰える。気絶でもしない限り、捕まらないってことだ。

  んー、けどあの感じだと、別にヒーローにエロいこと出来るわけじゃないんだよなぁ。出来ない事をさせられないんじゃ、特になぁ……。

  「なんとか出来ないかなぁ……」

  考えながら、昨日着てた服とタイツをまとめて洗うために、昨日の服とズボンを手に取る。なんか入ってたっけ……?

  「ん?」

  ズボンから、USBメモリが出て来る。そういやこれ、結局なんのデータが入ってるんだろう。ちょっと見てみるか?

  USBをパソコンに接続する。今更だけどウイルスとか入って無いよな? って思ったけど、取り敢えず中身を見れそうだ。

  「えーっと、何々?」

  映像フォルダがあるな。これ、何が入ってるんだ?

  「ん……?」

  なんか、カラフルな渦巻みたいな映像から始まる。ビカビカ光って、目に痛いはずなのに目が離せない。頭がぼんやりして……。

  「……あれ? おあっ!?」

  気付けばなんと一時間経ってた。え、これ何? 催眠映像なのか? って、テキストファイルもあるぞ?

  どれどれ……えーっと、映像を見せることで対象の意識を朦朧とさせて、外部からの命令を聞くようにするための催眠映像で、映像中に声を混ぜることで、その声に対する命令をより強固にする。ただしこの効果は短いため、習慣的にこの映像を見せて脳に刷り込まなくては、完全な傀儡にはならない。

  うーむ、そういえばヘッドギアを着けられた時に、この映像を見せられた気がする。これにあのパンダの博士の声も入っていたから、あんなにあっさり戦闘員として駆り出されたんだろう。あの時は確かに躊躇なかったもんな。

  つまり、この映像をヒーローが見てくれれば、ヒーローを洗脳出来る? 『これ催眠映像だから見て』とか説明せずに、『この映像を、一人だけの時にしっかり見てくれ』って頼んで渡せば、洗脳出来るかも……。

  そうと決まれば映像をコピーして、音声を入れればいいのか? 多少知識はあるから、編集してっと……これでいいのか? ものがものだから試すわけにはいかないし、ぶっつけ本番かぁ。

  オリジナルのこれはさすがに怪し過ぎるから、適当なUSBメモリ買って渡すようにしよう。一応頑丈なのを選んでっと。後は通販で届くのを待つのみ……金ねぇなぁ。

  数日経って、届いたUSBメモリにデータを入れて、いざ次の計画だ。

  「食い逃げだー!」

  腹減ってたし、ついでに食い逃げをすることにした。丁度ブルの巡回予定の裏路地に近いとこにちょっと良い飯屋があって良かった。どうせならって数千円食い逃げするけど、急に走ってちょっと腹痛くなりそう。ヒーローにならともかく、そもそも店員に捕まったら世話ないから、頑張って全力疾走だ。

  「うわっ!」

  そして、物の見事に正面からパワフル・ブルと鉢合わせる。今回は私服ではあるけど、さすがに向こうは顔覚えてるからか、すぐ俺の手を掴んでそのまま一本、背負い投げされて地面に叩き付けられる。ヤバッ、壊れてないといいけど……。

  「いってて……」

  「またお前か!」

  しっかり取り押さえられた形になってしまった。それを狙ったとはいえ、こうも毎回あっさりとは……いや、あっさり負けた方が楽でいいんだけど。

  『ルーザーズ・ボーナス獲得』

  おっ、来た来た。

  「ブル、これを……」

  「ん?」

  なんとかポケットから黒い長方形のよくあるUSBメモリを取り出して、掌に置いてブルに見せる。

  「『この中身を一人だけの時に、一日一回見てくれ』」

  『ルーザーズ・ボーナス発動』

  「なんだ? まぁ、良いぞ」

  ブルがUSBメモリを受け取り、俺の上から退いて了承してくれる。結構細かい指示でも良いんだな。条件的には無理なくやってくれる範囲ならいいのか?

  「ほら、とっとと行け。どうせ大した事してないんだろ」

  「ハ、ハハハ……じゃあ!」

  実際大したことではないから良いか。それよりも、ちゃんと成果が出るかの方が大事だし。

  ---[newpage]

  「ふぅ……」

  今日の巡回が終わり、ヒーロー協会近くの自宅へと戻るヒーロー、パワフル・ブル。都市の中心部に建てられたヒーロー協会は、この能力社会の治安を守るべく作られた自警団である。厳密には公的組織ではないが、市民にとっては警察なんかより頼られている存在だ。

  マンションの一室に一人で暮らすパワフル・ブル。帰ってすぐにまずシャワーを浴びて、ヒーロースーツで蒸れて汗臭くなった体を洗う。大雑把なブルではあるが、人を不快にしない程度のケアくらいはしている。

  風呂から上がり、ブルは今日ヴィラン……と言うにはあまりにも小物なヴィランに渡された、USBメモリを手に取る。明らかに怪しいものではあるが、ブルはそれを自分のパソコンに刺し、ファイルを確認する。

  「これか?」

  中身を見ろと言われていたが、あったのは一つの動画ファイルだ。ブルがそれを躊躇なく開くと、画面全体に映像が映し出される。

  「なんだ? これ……」

  渦巻模様を中心に、目に痛いカラフルな色で構成された画面から始まる。明らかにおかしな映像だが、ブルは違和感に気付く前に映像に引き込まれてしまった。不可解な模様と色、点滅が続き、ブルの頭はぼんやりしていながら映像に、そしてそこに仕込まれた声に集中していく。

  『しっかり見て、しっかり聞け。この声に、従え。この声が、お前の主人の声だ』

  その声がヴィランのものであることを、いや、そもそも自分がその声を聞いていることを認識してさえいないが、確かにその言葉が脳の奥底に染み込んでいく。

  「ん……? もうこんな時間か」

  映像が終わると共に洗脳効果は消え、パワフル・ブルは一時間も映像を見ていた事に気付き、しかしそれだけで、普段ほとんど使わないパソコンの電源を落として、すぐに睡眠に入った。

  翌日も別のヴィランを相手に戦い捕まえてから、自室に戻り、『ルーザーズ・ボーナス』によって頼まれた通りに催眠映像を見るパワフル・ブル。能力を使われた自覚さえないブルは疑問一つ抱くことはない。

  ブルは映像を見るだけの、ボーっとして時間を過ごす。同じ映像だが、効果が少しずつ大きくなっていく。しかし、当然ながらブルがそれに気付くことはない。気付くタイミングが訪れていない。

  僅かな変化を繰り返して、一週間が経った。

  「おい、またお前か、カイ!」

  パワフル・ブルは、再びコードネームさえない、無名の雑魚ヴィランに会った。一応目元を隠している黒いマスクはしているものの、狐色の毛色の狐獣人というのは分かっている。何なら住居だって、そもそも小社カイという本名も分かっているが、大したことをしないから見逃している状態だ。今も壁に落書きをしているだけで、見ようによっては犯罪にさえ取れない。

  「あっ、パワフル・ブル! なんだか久し振りだな」

  「お前なぁ、反省してるのかしてないのか、どっちなんだ!」

  すぐにブルはヴィランに近付き、その首根っこを掴んで宙吊りにする。殴るまでもない、こうして簡単に捕まえられる相手なのだ。

  「やだなぁ、反省はしてるよ。だから、優しく負かしてくれよな」

  「この!」

  ブルは挑発とも取れる発言を受けて、空いた手でバチンとデコピンする。とはいえブルのデコピンとなれば、普通に痛い。現に狐ヴィランも、痛みでおでこを押さえている。

  「いってて……これもなんか久し振りだな」

  「ったく、見逃してやるからさっさと消すんだぞ」

  

  「その前に、いいか?」

  「うん? なんだ?」

  「『この後、ブルの家に連れて行ってくれないか?』」

  ヒーローがヴィランに頼まれて、そもそも誰に頼まれても受けるはずのない頼み事。普通であれば、いくら大雑把なブルでも確実に断るような事。しかし……。

  「……分かった。けど、これを掃除してからだぞ?」

  「ああ。勿論、ブルも手伝ってくれるよな?」

  「ったく、仕方ない奴だな」

  あろうことか、ヒーローがヴィランの悪行の尻拭いをする。パッと見ではヒーローがヒーロー姿で、ブラシで壁を擦り落書きを消す様は微笑ましいが、確実にヒーローの心の奥に、大きな変化があった。

  そして、掃除が終わった後には、頼まれたままにヴィランを自らの部屋に招くブル。本来許されざる行為をしているが、ブルは特に違和感なく狐ヴィラン、カイを受け入れていた。

  「カイよ、いい加減悪事を止めたらどうだ? 正直お前、ヴィランに向いてないぞ? 他のヒーローにもやられていただろう」

  「いやぁ、皆なんだかんだ構ってくれて嬉しいよ」

  「全く……」

  全然反省の意志を感じず、ブルはカイに呆れるばかりだ。

  「そういや、ちゃんと渡した映像見てくれたんだな」

  「見たが……あれは一体……」

  「ああ、ただのリラックス用の映像だよ。ヒーローって大変そうだからさ」

  確かに見た後ぼんやりしていたから、そういうものと言われればと、ブルは納得してしまった。大変な原因のくせにとも思うが。

  「ブル、折角だから腕相撲しないか?」

  「腕相撲だって? お前がか?」

  誰がどう見てもカイに勝ち目のない競技。手を合わせた時点で既に大きさから何から倍は差がある。ブルも鼻で笑っている。それでもカイはビビることも引くこともなかった。

  「いいのか? レディー、ゴー!」

  バンッ!

  勝負は一瞬で終わった。当然ブルが勝った。

  「なんだ? 言う割に手応え無さ過ぎるだろ」

  「ハハッ、やっぱりブルには勝てないよな。じゃあ、『セックスしたいから全部脱いでくれよ』」

  「ああ……」

  ブルは虚ろな目になり、到底受け入れられない願いをされてそれを聞いて、上着を脱いで半裸になる。そのままズボンを下ろして、パンツ一丁になり、そのパンツさえ脱いで、身体に見合った巨根を露わにする。

  ---[newpage]

  「わぁお……」

  流石にまだ過剰な要求かと思ったけど、ブルは全裸になってくれた。思ったよりあの催眠映像、効果強いんだなぁ。

  にしても凄いチンポだな……まだ勃起してないのに俺のと比べ物にならないデカさだ。こんなの挿る奴いるのか? まぁいいか。チンポ挿れられるのはブルの方だ。

  「じゃあ、ケツ出してくれよ」

  「は? なっ、何を言ってるんだ!?」

  あれ? さっき答えてくれたはずだよな? あ、セックスってだけだったら、ポジションまで指定してないのか。仕方ない。この状況からなら……。

  「えー? じゃあ、チンポ比べようぜ?」

  「なんだ、比べるまでもないだろうに」

  そう言いながらもブルは応じてくれて、自分の巨砲を掴んで天に向かせる。俺も下を脱いで、ブルの前ではお世辞にも大きいなんて言えないチンポを晒して、ブルに近付きチンポを当てた。

  「ほら見ろ、こんなの比べようもない」

  「ああ、そうだよな、ブルの圧勝だよな?」

  「当然だ」

  『ルーザーズ・ボーナス獲得』

  はい発動っと。この一週間他のヒーローとかでも実験してたけど、おおよそ発動条件は『ある勝負に対して、相手が俺に勝ったと思い、俺が負けたと思うこと』だと分かった。勝手に敗北感抱くだけじゃダメだし、例え勝負に持ち込んでも相手が勝ってると思わないと発動まで持って行けない。そして、相手がしていいと思うことまでしかさせられない。

  「じゃあ、『ブルが受けでセックスしてくれ』」

  「……仕方ないな」

  けど、ブルは催眠映像を見て、俺の言葉に従ってくれるようになっている。ここまで上手く行くとは。これなら、先の計画も上手く行きそうだ。まぁ、その前にブルで楽しんじゃおう。

  ブルはデカいベッドの端に上半身を乗せ、ケツをこちらに向けて来る。やべぇ、大の男が恥ずかしがりながらもそのデカいケツ見せてくれるの、エロ過ぎる。しかもこれがヒーローなんだから、更にエロい。

  俺も上着を脱いでから、既に元気ビンビンのチンポをブルの尻に当てる。このデカいケツでチンポ擦るだけでもイケそうだけど、折角なら挿れたいよな。

  「まっ、そのままいがあああああ!」

  特に解してないケツにチンポをそのまま無理矢理進ませる。流石のヒーローでも声を上げるような痛みがあるみたいだ。勝手にガチムチだし経験あると思ってたけど、夢の見過ぎか。

  けど、無理矢理捻じ込んでみたら、キツキツな中が段々良くなっていく。なんか催眠映像に、より隷属させやすいようにケツを緩くして感じさせるみたいなのあったな。結構効果出るまで掛かるとかあったけど、一週間でも効果出てるみたいだ。

  「おぅっ!?」

  「へへっ、ケツ感じてるんだな」

  「そ、そんなはずぅ……!?」

  パァン!

  一回大きく腰を振って、チンポを打ち付けると、デカいケツに当たって良い音がして、ブルの口から出たとは思えないような、エロい声が出た。やべっ、気持ち良さもあるけど、ヒーローのエロさに腰が止まらなくなる。

  「おっ、あっ、一回、一回止めっ……!」

  「やっ、無理! 気持ち良過ぎ、ブルのケツマン、強過ぎ……!」

  すげぇ、ブルのケツ、ホントにスゲェ! 雑魚の童貞には刺激が強過ぎる。ブルも良いとこ当たって無さそうだけど、気持ち良さそうな声出してて、もうそのエロい刺激に頭が真っ白になって、構わず中出ししちまう……!

  「あー、負ける、パワフル・ブルのケツマン良過ぎて負ける……!」

  出来るだけチンポを奥に突っ込んで、俺は射精した。あのヒーローに、中出ししてる。こんなにヴィランらしいことしたの、初めてだ。けど、これは最初でしかない。

  「なっ、お前、何中に出して……」

  「ふぅ……いやぁ、ブルのケツマン強過ぎて、俺負けちまったよ。流石ヒーロー、こんなとこまで強いんだな」

  「そ、そうか……?」

  『ルーザーズ・ボーナス獲得』

  俺のアホな言葉も真に受けているブル。さぁて、あんな馬鹿馬鹿しいやり取りで、またボーナスを貰ってしまった。これなら、後一歩で行けそうか?

  「ブルもイこうな?」

  「あっ、おおっ!」

  ケツからチンポを抜いてから、ブルのぶっといチンポを握りシコる。デカ過ぎて手が全然包めてないけど、ちゃんと刺激になっているみたいで、ブルは野太い声を上げて、とんでもない量のザーメンをベッドに放った。

  「おっ、おおっ……」

  半ば飛んでるんじゃないかって顔と声のパワフル・ブル。よし、今なら行ける。

  「パワフル・ブル、この声に従え、『俺に絶対服従の奴隷になってくれ』」

  耳元でキーワードと共にお願いをする。今の判断力なら、もしかしたら……。

  『ルーザーズ・ギフト発動』

  「分かりました……俺は、カイ様の絶対服従の奴隷です……」

  「やった!」

  思わず声が出てしまった。けど、こんなこと出来るなんて、あの能力を知った時には思わなかった。ヒーローを俺の奴隷に出来る。ブルだけでも嬉しいけど、もっと、もっと欲しいな。

  「なぁ、ブル、もっとやろうぜ」

  「はい……」

  「もっと、いつものように喋ってくれ」

  「おう、分かった!」

  虚ろな目で呟いていたブルが、本当にいつも通りの溌剌な返事をしてくれる。なのに尻から、チンポからザーメンを垂らしていて、エロいことこの上ない。

  今夜はまだまだ愉しめそうだ。

  ---[newpage]

  ブルでたっぷり愉しんだ後、今日の事を忘れるように命令して、何食わぬ顔をしてブルの部屋から帰り、翌日を迎える。大体一週間であれと分かったから、他にも催眠映像を渡したヒーローに負けて、家に連れて行って貰う。

  「あひんっ! なんで、こんな……!」

  「あー、鳥マン強過ぎるぜ!」

  次にヤッたヒーローは、ウィンド・ホーク。鷲鳥人のヒーローで、吹き荒れる風の力を持っている。鳥人の割にマッチョだけど、股間は鳥マンだからチンポないのは残念だけど、これはこれでいい。

  「チンポ負けちまう! 出しちまうな!」

  「やっ、まああああ!」

  この一発の中出しで、俺のチンポはホークの鳥マンに負けて、そのボーナスでホークは俺に絶対服従の奴隷になった。ホークの中は気持ち良くって、ホークも俺のチンポでイッてくれて満足した。

  他のヒーロー達も、俺の奴隷にしていく。イケメンヒーローのブライト・ウルフも、ブルに引けを取らないガチムチヒーロー、フレイム・タイガーも、俺の手に堕ちた。

  これだけいればそろそろ、この計画のゴールを目指せそうだ。今まで俺が負けられなかったあの憧れのヒーローに、会うための計画が。

  「へぇ、協会の中ってこうなってるんだなぁ」

  「ああ、凄いだろ?」

  俺は、ヒーロー協会の建物の中にいた。ヒーロースーツ姿のブルに案内してもらって、一般人が入れない区画にまで入っている。色んな機密情報とかあるみたいだけど、俺の目的はただ一つ。

  「ん? 誰だ」

  そこは、大量のモニターと機械の並ぶ部屋で、指令室だ。ヒーロー達に事件の発生を知らせたり指示を出したり、大規模作戦の指揮を行う指揮官のいる部屋。

  こちらに気付き低い声でそう言って来る、黒い鱗の竜人のイケおじ。いい年だが厳つくて白いコートの良く似合う男だ。

  「へぇ、ここが指令室か~。あ、コマンダー・ドラゴン!」

  コマンダー・ドラゴン。既に前線を引いたヒーロー協会の指揮官で、今回のターゲットだ。まだガキだった頃に初恋したヒーローだ。

  「ここは一般人が入っていい場所では……待て、お前は、小社カイか?」

  「え? 俺のこと覚えてるのか?! いやぁ、嬉しいなぁ」

  「どういうことだ。パワフル・ブル、何故ヴィランを、拘束も無しにここに連れて来た」

  険しい顔でブルに詰め寄るコマンダー。前線にいないから、当然まだ一回も力が使えてない相手だから、常識というものがある。

  「どうしてって、カイに頼まれたから……」

  「それがおかしいと言っている! 大体お前も、他のヒーローも、些細な事とは言え常習的に犯罪を行っている者を、何故放置している!」

  おー、コマンダー、カンカンじゃん。前までだったら俺、チビってるよ。けど、今はその偏屈親父っぽいところもまた良いと思える。堕ちた後の落差が楽しめるってもんだ。

  「まぁまぁ、細かいことは良いじゃないか」

  「そう言うからには、捕まる覚悟はあるんだろうな」

  瞬間、コマンダーが俺の首を掴み、壁に押し当てる。ヤバッ、結構苦しい……意識飛ぶ前に、勝ったと思われないと、力が……。

  「ぐっ……俺の……!」

  「お前が最初に活動したのはドクター・タオの元だ。即ち何某かの能力を持っているはず。どんな類だろうと黙らせるべきだ」

  更に力を入れて、言葉を喋らせようとさえしてくれない。ううっ、さすがに指揮官、冷静だし頭が切れる。条件からバレにくかっただけで、最初から警戒されちゃ、簡単には行かないか。

  「ふんっ!」

  「ぐおっ……!」

  横からブルがコマンダーに突進して、その巨体でコマンダーを押し退けて俺を解放してくれる。危ない危ない……気絶しても負けはするだろうけど、その後のお願いが出来ないんじゃ意味ないからな……。

  「ブル、お前!」

  「しょうがない、プランBだな」

  指令室に、更に三人、ホークとウルフとタイガーが入ってくる。全員ヒーロースーツ姿だ。

  「お前達、カイを……待て、まさかお前達まで……!」

  ブルが羽交い絞めにして、ホークがインカムを吹っ飛ばして、コマンダーの拘束を完了した。いやぁ、手際いいなぁ。こんなヒーロー達に勝てるはずないわけだよ。

  「コマンダーも、カイの奴隷になるんだ」

  「お前達、目を覚ませ! ヴィランに屈して……!」

  すぐウルフがこの時のために作ってもらったヘッドギアをコマンダーに装備させて、例の催眠映像を見せる。本当はちゃんと『ルーザーズ・ボーナス』で見せた方が効くと思うけど、これでもなんとかなるかな。

  「ぐっ……こん、な……」

  抵抗しようと手足を動かしている。それでもブルの力が強いおかげで、抜け出せないまま力が抜けて来たみたいだ。

  「さーて、しばらく指令さんには休んで貰うか」

  どうやってコマンダーに負けるかも考えないとな。堅物だし、しっかり洗脳出来るまで催眠映像に頼って、いきなりチンポ突っ込んでお願い出来るまでやっちゃうか。

  しばらく指令さんの洗脳を進めながら、他のヒーローとエロいことをする。みんなにヒーロースーツを脱いで貰って、チンポやスリットを晒してもらって、バキバキチンポを舐めたり嗅いだり、スリットにケツにチンポ突っ込んだり、いい具合になった雄臭いブルとタイガーのデカチンポをコマンダーの鼻近くに擦り付けて、洗脳を促していく。

  「うっ……あっ……」

  本来は一時間見せる映像を、三時間見せてたらコマンダーの口から涎が垂れていた。やべっ、コマンダー、壊れちゃったかな? それじゃ困るんだけど。

  「コマンダー、チャンスをやるよ。俺のチンポにスリットで勝てたら、それ外してやるよ」

  「うっ……な、何、を……」

  ぼんやりしているけど、言葉が届いてるみたいだ。それならいっちょやってやるか!

  「んおっ!」

  さっきまでエロいことしててもまだ元気なチンポを、脱がせて曝け出させたコマンダーのスリットに捻じ込む。チンポの方がぬるぬるになってて案外すんなり入って、すぐ快楽を貪りコマンダーを蹂躙するために腰を振る。

  「ああっ、すげぇ、コマンダーのスリット、犯してる!」

  「んっ、うおっ……俺、は……!」

  コマンダーはあれだけ催眠映像を見て頭空っぽになってるはずなのに、必死に我慢している。即イキされたら俺が勝っちゃったかもだけど、コマンダーが少しでも我慢できるなら、俺のチンポはコマンダーのスリットに勝てない。

  「あー、ダメだ、コマンダーのスリットに負けちまう!」

  すぐ限界を迎えて、俺はコマンダーの雄スリットにザーメンをぶち撒ける。はぁ、すっげぇ……やっぱ生でヤレるのいいな……。

  「あーあ、俺、コマンダーに負けちまったなぁ」

  約束通りバイザーを外す。

  「勝った……のか……」

  『ルーザーズ・ボーナス獲得』

  あんな勝負でも、ちゃんと約束を守ったから勝ったと思ってくれたみたいだ。さすがに一発じゃ足りないか?

  「コマンダー、『俺の絶対服従の奴隷になってくれ』」

  「……」

  『ルーザーズ・ボーナス発動』

  おっ?!

  「はい、分かりました……俺は、カイ様の奴隷です……」

  ああ、やった! 俺の憧れが、今や俺の肉便器だ。

  これで、ヒーロー協会は俺のものになる。ゴールって言ったけど、まだまだ足りない。もっともっと、ヒーローを俺のものにしていくんだ。