【skeb】『ヒーロー達は怪しいバーで潜入調査するも、ヴィランの罠に嵌まりAV男優と化す』

  ドーンッ!

  爆発が起こる。前方にいる巨漢の熊獣人に爆撃が直撃している。だが、少しの後退だけで済んでいるのは、この茶毛の熊のヒーロー、インデュア・ベアーの能力の賜物だ。

  「今だラビット!」

  「任せろ……!」

  すぐにベアーの肩に飛び乗り、そのままベアーの肩を蹴って飛び、離れた場所から砲撃していたヴィランに向けて瞬時に飛び掛かり様に蹴りを入れる。

  「ガハッ……!」

  能力による高速の一撃に、ヴィランは吹っ飛び、そのままビルの一階にガラスを突き破って吹っ飛ぶ。まだ見えないが、流石に気絶していそうなものだ。

  「平気か?」

  「勿論だ!」

  爆風を受けて煤に塗れているにも関わらず、ベアーは平気そうにヒーロースーツから埃を払う。筋骨隆々のボディが惜しげもなく浮かび上がる赤いヒーロースーツは、ザ・ヒーローと言う風貌だ。頭部は目元を隠すような赤い布のマスクをしている。

  俺はラピット・ラビット。ベアーのバディのヒーローだ。白毛の兎獣人で、兎の割には筋肉のある、細マッチョと言えるくらいには筋量があるし、背も高いものの、180㎝では2mオーバーのベアーと並ぶと低く見えてしまうだろう。スーツはベアーの色違いで青いスーツだ。マスクも目元を隠す、青い布のものだ。

  「さ、ヴィランをとっ捕まえようぜ!」

  そう言いベアーはさも当然のように窓ガラスの破片散らばる中を歩いて行き、雑に気を失ったヴィランを担いで戻って来た。ヒーロースーツのブーツが頑丈とはいえ、能力で殊更頑丈なベアーでなければ多少は躊躇するだろう。

  「いやぁ……なんとかなって良かったけど……」

  「ああ、なかなか暴れてくれたものだ」

  改めて現場を見ると、かなり建物が壊されている。無差別的爆撃でオフィス街が襲撃されたせいで、あちこち煙が上がり、ガラスが割れ、倒壊していないことが奇跡に感じるような損壊まであるほどだ。

  「よーし、もう安全だ! みんな、怖かったと思うけどよく頑張った!」

  ベアーが拡声器無しの大声でそう叫び、ひとまずの収束を宣言する。後の避難者の救援なんかはある程度消防に任せて……。

  「インデュア・ベアー!」

  子供の声にピクリと耳が反応する。ベアーは子供に人気だから、サインをねだりに来たか、単にファンとしてなのか。

  「あっ……!」

  俺は瞬時に動いて走って来ていて転ぼうとしていた、猫獣人の子供を抱き止める。

  「まだ道路も壊れている。気を付けるんだぞ」

  「……ふぇ、はい……」

  少年をしっかり立たせてから、注意を促しておく。見ればしっかりサインペンを持参している。

  「あ、あの……」

  「っと、ベアー、この子に……」

  「サインしてください!」

  ベアーにサインを促そうとしたら、その子は俺に自分のシャツを広げてサインをねだってきた。

  「いいのか? ベアーにサインを貰いに来たんじゃ……」

  「ラビットのサインが欲しくなった!」

  まだ小さい子だし、移り気もするか。大人しく猫の子が持っていたサインペンを受け取って、シャツに『ラピット・ラビット』のサインを書く。

  「ありがとう!」

  サインペンを受け取って、本当にそのまま親らしき猫獣人達の所へと戻ってしまった。ちゃんとベアーの分も開けておいたんだがな。

  「おいおい、また幼気な子供の性癖を壊したのか?」

  「なんでそうなるんだよ。子供の気持ちなんて、移り気なものだろ」

  一通り子供の相手を終えたベアーがこちらに来て、ヒーローに有るまじき事を言って来る。そもそも、性癖を壊されそうなのはこのマッチョボディをボディスーツに浮かばせているベアーじゃないか?

  「ともかく、とっとと戻るぞ」

  ---[newpage]

  ヒーロー協会。所属ヒーロー達が集まり、各ヒーローに事件が起きた際に指示を出す、司令部のある場所でもある。

  「インデュア・ベアー! すぐに司令室に来い!」

  「へ?」

  戻って早々、中年の梟鳥人の司令にベアーが凄い剣幕で呼び出される。他のヒーローや職員は……なんだ? ざわざわしているのは間違いないが、あれだろうという確信があるような様子だ。ベアーが何かやらかしたか?

  ひとまず一緒に司令室へと向かう。膨大な数のモニターが並び、街中を映し出しているその部屋で、司令は日々異変を探しヒーロー達に指示を出している。今は司令しかいないようだが、本来ならサポートの職員がいるはずだ。

  「それで、なんですか? 司令」

  「なんですか? だと? これを見てもまだ同じことが言えるか!」

  「何を……って、いきなりなんてもの……はぁ!?」

  携帯端末の画面を見せられて、コロコロ表情の変わっていたベアーは凄い声を上げ、画面に食いつく。ベアーの巨体で端末は見えないが、何があったんだ?

  「こんなの知らないぞ!?」

  「ベアー、何だったんだ……!?」

  司令に食って掛かっている間に、俺は端末の画面を見る。するとそこには、茶毛の熊獣人が映っていた。目元に薄い目隠しはされているが、見る人が見ればベアーにしか見えない。

  ただ、その絵面があまりにも問題で、パッと見ではヒーロースーツを着たヒーローなのだが、深く腰を下ろしたガニ股ポーズで、両手でピースをしているという、かなり下品なポーズだ。それだけでも信じられないものだが、ヒーロースーツが一部破れ、ベアーのチンポがガチガチになって晒され、尻にディルドを咥え込んでいるとあっては、驚かない方が難しい。

  「司令、これは……」

  「アングラなアダルトサイトに投稿されていた、ライブ配信のサムネイルだ」

  「クソッ、性質悪い合成を……!」

  「おい、本当にそうなのか?」

  「へ?」

  司令は訝し気にベアーの事を見て、近くの端末を弄り画面を表示させる。どうやらそのアングラサイトから取って来た映像のようだ。

  『さぁ、今日のゲストは某ヒーローだ! この我慢強い屈強な肉体の持ち主は、チンポも我慢できるのかぁ?』

  そんな下劣な紹介と共に、ヒーロースーツを着た状態でベッドの上に座る、ベアーの姿が映されている。どういう倫理なのか目元は黒線で隠されているが、着ているヒーロースーツからしても、見る人からすればどう見てもベアーだ。

  覆面をした、黒毛の牛獣人が映る。ベアーに負けず劣らずの巨漢で、それ以上におおよそ普通のものとは思えないような、巨根だ。薬か何かで大きくしているのだろうか。

  『おら、ヒーロー様はこいつを我慢できるかぁ?』

  ベッドに上がり、ベアーの目元に黒線替わりにチンポを乗せる。当のベアーは口を大きく開き、息荒くしている。

  『って、もう興奮してるんじゃねぇか! ほら、おねだりしてみな?』

  『ああ、そのぶっといチンポをくれぇ!』

  聞こえた声は、確かにベアーのものに聞こえる。合成にしたって、出来過ぎているように思える。

  後はもう、見るに堪えないポルノ映像だった。映像のベアーは顎が外れていそうな程口を開け、牛獣人の巨根を咥え込み、乱暴に腰を振られる様を横から撮られ、そのまま射精され鼻から精液を垂らしているのまでしっかり映されていた。

  「解析をさせたが、合成ではないという結論になった」

  「だ、だとしても俺はこんなの知らない! 俺がこんなことするわけないだろ?!」

  「司令、いくらなんでもこいつがこんなことをするとは思えません。変身能力を使って偽装したのでは」

  「ふむ……」

  「司令! 俺の目を見てください! 俺が、こんなことをするような男だと思いますか!」

  グイッとベアーは司令に詰め寄り訴える。折角人が理論的に説明してたというのに……ベアーだしそこはいいんだが。

  「……私とて信じたくはない。だから、二人で調査して貰いたい」

  「調査、ですか?」

  「ああ。ある裏通りの会員制のバーで、良からぬ噂があるということだ。中身までは判明していないが、VIP会員とやらになると違法なサービスを受けられると噂になっている」

  「そこが、発信源だと?」

  「可能性はあるだろう。これが事実でないというのであれば、二人で潜入調査を行って貰いたい」

  潜入調査か……本来ならば俺達のようなタイプのヒーローが行うような事でもないが、ベアーの嫌疑を晴らすためならば仕方ないか?

  「分かりました! 必ずやそいつらの悪事を暴いて見せる!」

  ベアーはかなり張り切っているようだ。ベアーだけじゃ潜入なんて出来ないだろうから、俺がしっかりしなくては……。

  「取り敢えず、変装の準備だな」

  ---[newpage]

  「ど、どうだ?」

  「ある意味似合いはしているが……」

  仮にも行先は高級バーということで、俺達は普段着ない良いスーツを引っ張り出してから、目的のバーへと向かう。寂れた裏通りに、場違いと言えるようなモノクロを基調にしたシックな店構えだ。

  ベアーは、その体格の良さから、スーツがパツンパツンになっていて、いっそ少しラフな格好をさせた方が良かったかも知れない。変装のためのサングラスも相まって、ヒーローよりヤクザにでも見えるかも知れないな。

  「ハヤトはホストみたいだな」

  ハヤトは俺の本名だ。いや、確かに今はヒーロー名で呼ぶべきではないから、それはいいんだが……。

  「ホストはこんなキッチリしてないだろ……」

  「そうか?」

  そんなやり取りをしてから、店に入る。高級な店構えに対して、警備員も黒服もいるわけでもなく、すんなり店内に入ることが出来た。薄暗い店内は多少怪しい雰囲気こそあるものの、露骨に違法になるものは見えない。純粋に酒と会話を愉しむための場所のようで、客は疎らながら誰も彼も身形がいい。

  「いらっしゃいませ、初めてのお客様ですね」

  店内に入り周囲を観察していると、バーテンダーの格好をした狐獣人が声を掛けて来る。毛先までしっかり整っていて、如何にも人の良い顔をしている。いっそ胡散臭くさえ思えるくらいだ。

  「お二人でしたら、まずはカウンター席へどうぞ。当店のご説明をさせて頂きたく思います」

  「お、おう……」

  「分かりました」

  ひとまず言われた通りにしておこう。店内を歩きながら、長い耳で客同士の言葉を拾ってみるものの、どれもこれも他愛のない会話だ。

  「どうぞおかけ下さい」

  言われるままに俺達は席に座る。黒い革張りの丸椅子は、俺はともかくベアーが座っても軋む音一つしないような、頑丈で大きなものだ。

  「まず、当店は会員制となっております。本来であれば他会員様の紹介が必要ですが……ええ、問題は無さそうですので、そこは省略しましょう」

  そう言って、バーテンは二枚のカードとペンを俺達に渡して来る。黒いカードの表面には『Bar_MidNight』と書かれていた。すぐに裏返され、記入欄を指差される。

  「ここに署名してください」

  「署名だけでいいのか?」

  「はい、署名だけで結構です。問題のないお客様だと分かればいいので」

  「そういうものか……」

  「お分かり頂けたなら署名してください」

  言われた通りに、『[[rb:卯野>うの]]ハヤト』と署名する。本名ではあるが、俺の名前自体は表に出ていないから、ここからヒーローだとはバレないだろう。ベアーも『[[rb:熊山>くまやま]]ゴウタ』と本名を書いていた。

  「書けたら署名を見せて下さい。はい……はい、大丈夫です。次回からはそのカードをお見せ下さい」

  それから、料金体勢なんかを教わる。ぼったくりかと思ったが案外チャージ料は安く、入会費もそんなに掛からないようだ。しかし件のVIP会員に関しては、入会費も維持費もとても一般的とは言えない料金で、なおかつ信用を得られた人にだけ与えられるという。

  「説明は以上です。では、何かご注文なさって下さい」

  「じゃあ生……」

  「居酒屋じゃないんだぞ?」

  さも当然のように何頼もうとしてるんだベアーは。こんな早くボロを出してどうするんだ。

  「構いませんよ。卯野様は何を注文なさいますか?」

  いいのか……俺はどうするか。無難にカクテルにでもしておくか。

  「なら、ギムレットを」

  「かしこまりました」

  すぐにシェイカーを振い、バーテンの狐獣人はカクテルを作る。他にも注文されそうなものだが、カウンター席には俺達しかいないし、他の席は……客同士か、或いは別のウェイターがいるようだ。

  「お待たせしました。どうぞお受け取り下さい」

  ベアーの前にジョッキビールが、俺の前にカクテルグラスに注がれた白いカクテルが置かれる。言われた通り手に取りはするが、果たしてすぐ飲んでいいものか。怪しい動きは無かったように見えたが、一応匂いくらい確認してみるが……そこは問題ないか。飲まずに怪しまれてもマズいから、少しずつ……。

  「っぷはぁ!」

  「おい」

  当たり前のようにゴクゴク生ビールを飲んでいるベアーに、思わず突っ込んでしまう。そもそもの目的という点もだが、こういう静かなバーでの振る舞いとして突っ込みたかった。

  「まぁまぁ、折角だから酒を愉しもうぜ?」

  「はぁ……まぁいいか」

  ひとまず酒を愉しむか。あまり飲んで下手な事を言わないようにしなくてはならないし、ベアーが変な事を言わないようにも見ておかなくては。

  しかし、思いの外普通にバーでの時間を過ごしてしまった。ベアーと会話しつつもしっかりと周囲を観察してはいたのだが、スタッフの出入りする部屋の存在しか確認出来ておらず、そこもスタッフが出入りしているだけだった。

  結局その日はVIP会員について何も分からないままだった。そもそもVIP会員が何処にいるのか。特別なサービスとは一体なんなのか。しばらく通う必要がありそうだ。

  ヒーロー協会で経費を申請して、翌日またバーを訪れる。今日はカウンター以外の座席に座り、他の客に聞き込みを行うことにした。

  「VIP会員? へへっ、VIPってだけあって、あの馬鹿高いの払える金持ちなんじゃねぇ?」

  「時々いるけど、普段はここで飲んでるみたいだぞ?」

  「兄ちゃん、いい身体してんなぁ、俺と良い事……おっと、そういうのはダメだったな」

  多少酔っている相手を選んで言葉を引き出させたが、思ったより理性があるな。身形こそしっかりしているが、表社会で生きてい無さそうなのもいたというのに、それだけこの店のルールは厳しいのか?

  数日通い、常連客といくらか話してみたものの、大した成果は上げられていなかった。VIP客らしき男と知り合いにはなれたから、それとなくVIPの扱いについて聞き出そうとしている。

  「へっへっ、そいつを聞いてどうする気なんだ?」

  「どうって……いや、気になるだろ? あんな説明された割に、そんな特別なサービスされてる奴もいないから……」

  「まぁ、そう言われるとなぁ……」

  白豚獣人の男はジロジロと俺の事を値踏みする目で見て来る。さて、お眼鏡に適うか……?

  「……よぉし、なら、俺が紹介してやろう」

  「紹介?」

  「そうさ。VIP会員は紹介制だからな」

  ここに来て進展したか。チラリとベアーにアイコンタクトしてから、豚獣人に着いて行く。カウンター席にいるバーテンダーの狐獣人の元へ向かうようだ。

  「やぁマスター、この人が、VIPサービスに興味があるってよ」

  「おや……そうですか。でしたらそうですね……」

  バーテンは一つカクテルを作り始める。すぐにシェイクを終え、カクテルグラスに、ピンク色のカクテルを注ぐ。

  「これを飲んでください」

  「ん? 分かった……」

  言われた通り、俺は出されたカクテルを飲み干す。甘いカクテルは飲みやすく、飲むのに苦が無くて良かった。

  「これでいいか?」

  「ええ、結構ですよ。ご案内いたしますので、着いてきてください」

  そう言い狐獣人はカウンターから出て、スタッフルームらしき扉へと向かう。俺と豚獣人もそれに着いて行き、中に入る。そこはスタッフルームではなく、赤絨毯の敷かれた廊下だった。

  「お先にどうぞ」

  廊下を進み、辿り着いた豪奢なエレベーターに乗る。下に降りているようだ。これで証拠を手に入れられれば、ようやくヴィランを捕まえられる。

  エレベーターを降りた先は、紫の絨毯の敷かれた廊下だった。薄暗いのだが、静かなバーとは違い、紫の照明のせいか、何処か扇情的な空気を作り出している。

  場に似付かわしくない、重苦しい鉄扉に突き当たる。バーテンが扉の前に立つと、鉄扉が見た目に反して横開きで開く。

  「どうぞ、お入りください」

  「VIPって割には、随分と物々しいな……」

  促された通り中に入ると、そこは廊下に続き艶めかしい紫の光に照らされた部屋だった。大きなハート型のベッドが部屋の中心に鎮座し、部屋の端には透明なガラスで仕切られたシャワールームなんかもあり、カメラ機材が置かれている部屋だ。パッと見では性的サービスを行うための部屋だが、そこには誰もいなかった。

  「誰もいない……?」

  「そちらの席にお座り下さい」

  気付けば、俺はベッドの近くにあるソファに座っていた。いや、俺は何をしている。もう問い詰めるべきだろう。

  「ここはなんなんだ。事と次第によっては……!」

  「どうぞ、大人しく座ってお待ちください、卯野様……もとい、ラピット・ラビット」

  「なっ……!」

  立ち上がって詰め寄ろうとしたにも関わらず、バーテンの言葉に俺は従ってしまった。どういうことだ? この部屋に仕掛けが? 或いはヴィランが?

  「ふむ、改めて見ると、やはりカメラ映えのする顔している」

  「貴様は一体……!」

  「私はしがないバーテンダです……なんて誤魔化せはしないだろうな。お探しの悪の組織の長、マスター・フォックスさ」

  「なっ……!」

  組織のボス自らがバーテンなんかやってるとは、さすがに思わないだろ……。

  「私の能力は君のように単純なものではなくてね。『相手が自分の言葉に従うに連れて、命令に強制力を与える力』なのさ」

  「クッ、だから立てないのか……いや、けど従ってなんて……」

  「『どうぞおかけ下さい』『署名してください』『署名を見せてください』『お受け取り下さい』。案外、バーでバーテンに従う機会は多いものだ」

  そんな馬鹿なと言いたいところだが、能力というものは人理を超えるものだ。現状を考えれば違うとは言い難い。

  「君の所の司令は随分役に立ってくれる。すぐに次のヒーローを送ってくれるとはね」

  「司令が!? そんな馬鹿な……!」

  「余程人に弱みを見せたくなかったのだろうね? おかげで君やベアーが手に入ったのだから、感謝しなくてはね」

  仮にこいつ、マスター・フォックスの言っていることが本当なら、あの映像は本物ながら、俺を釣るための口実だったことになる。ベアーは大方、記憶を奪われているのだろう。器用な演技が出来る奴ではない。

  「さて、それじゃあ早速だけど、服を脱げ」

  「ぐっ……!」

  俺は座ったまま、着ていた上着を脱ぎ、カッターシャツを脱ぎ、上裸になる。それでは止まらず、ズボンを脱ぎ、パンツにまで手を掛けてしまう。

  「ふむ、顔も良ければ身体も良いな。売れっ子になれるよ」

  「動け、動け……!」

  抵抗するためになんとか動こうとしているのに、身体が自分の意志で動かせない。

  「そうだな、やはりまずはこれを着て貰うとするか」

  フォックスの部下らしき牛獣人が部屋に入って来ると、そいつは俺、ラピット・ラビットのスーツにしか見えないものを持っていた。

  「なっ、なんで……」

  「よく出来ているだろう? スタッフが気合を入れて作ったものさ」

  ラバースーツを渡され、頭に靄が掛かり抵抗出来ず、俺はスーツに足を通して、手も通してから、背中のチャックを上げて着る。ヒーロースーツのようなものではあるが、その実ブーツやグローブと言った装備はなく、尻が丸出しになるような侮辱的なものだ。

  「良く似合っているじゃないか。では、ベッドに座れ」

  俺は命令のまま立ち上がり、言われた通りにハート型のベッドの縁に座る。なんとか、命令外の事をして抜け出さなくては……。

  「ラピット・ラビット、君はセックス狂いの淫乱AV男優だ。ラピット・ラピット役として、存分にチンポに狂って醜態を見られる快楽に酔い痴れろ」

  「うぐっ……!」

  頭の中が、命令で掻き混ぜられていく。俺は淫乱AV男優……違う……俺は、ヒーロー……役の、男優……チンポ狂いで、それを見られたくて堪らない……違う、俺は今日、調査で、今日こそヴィランを摘発……けど潜入に失敗というシチュで、チンポに負けるAVを撮るために、ここにいる。

  「では、撮影を始めようか。まずは、シチュエーションに沿って、あらすじを言え」

  「……クッ、潜入作戦に失敗して、このザマだ」

  俺はベッドの上に移動してから座り、別に縛られていないが、後ろでに縛られている演技をしながら、セリフを言う。

  「ヘッヘッヘッ、ヒーローなんて言ってるけど、如何にもド淫乱な兎ちゃんじゃねぇか!」

  既に全裸になっている、筋骨隆々で巨根の牛獣人が、如何にもなセリフを言いながらこちらに近付いてくる。ベアーのAVにも映っていた黒毛の牛獣人で、勃起していないにも関わらず物凄まじい大きさのチンポだ。

  「クソッ、俺はお前達になんか屈しないぞ!」

  「ほぉ、威勢がいいな! そんなケツの破れたヒーロースーツ着て凄まれても、誘ってるようにしか見えねぇぞ!」

  牛ヴィランがベッドに登り、俺の後ろに回って足を開かせて、カメラに丸出しのケツが映るように見せ付けてさせられる。ううっ、なんて恥辱的なんだ。興奮して、勃起してしまいそうだ。

  「そんなことはない……」

  「おうおう、どうした、これが気になるのかぁ?」

  俺の頭に、牛ヴィランの巨根が無造作に乗せられる。耳の間に乗せられるその凶器と言うに相応しいモノの存在を感じて、頭がチンポに支配されそうだ。まだだ、まだダメだ。

  「そ、そんな、もの……」

  「ヘッヘッヘッ、隠しても無駄だぜぇ? このモッコリはなんだぁ?」

  「ひんっ!」

  股間を軽く叩かれて、ブルンッと揺れる、俺のスーツに覆われた股間。その刺激に反応してしまい、俺のチンポに血が巡り、窮屈な中でその存在を主張し始めた。

  「おら、これでもまだ、チンポが欲しくないってのかぁ?」

  そう言われると同時に、視界が全てチンポに隠される。ただですら存在感の強い牛ヴィランの巨根が、目隠しのように眼前に置かれているのだ。その熱が、その強過ぎる雄の臭いが、チンポへの渇望を昂らせ限界を迎えさせる。

  「お、俺は……」

  自然と鼻が鳴り、口が開いたままになる。ほんの僅かでも、このデカチンから漂う雄臭さが欲しくて、こんな恥辱的な事をしているのに、それさえ気持ちいい。

  「ほらほら、可愛くおねだり出来たら、こいつを堪能させてやるぜ?」

  牛ヴィランのデカチンで、目元をベチベチ叩かれる。やっと、やっとだ……!

  「あひんっ! このド淫乱兎ヒーローに、ヴィラン様の最強雄チンポをください……!」

  チンポを当てられたまま、俺はなるべくヴィランに媚びたセリフを選んでチンポを懇願する。ここはアドリブだから、気に入ってくれるだろうか。

  「ガーッハッハッ! いいねいいねぇ! おら、しゃぶりな!」

  目を覆うチンポが離れ、口の前にチンポが垂らされる。俺はすぐにチンポにキスをしてから、丁寧にデカチンを舐めていく。竿を、先っぽを舐めていく度に雄の臭いが強くなり、もっともっと深く欲しくなる。

  「その小さなお口じゃ咥えらんねぇかぁ? 喉まで使ってちゃんとしゃぶれよな!」

  「んんっ!」

  先っぽをしゃぶっていたところに、後頭部を掴まれて口の中にチンポを捻じ込まれる。顎が外れそうな程口を開いてなんとかチンポを口に入れ、喉まで届かせた。すると牛ヴィランは無遠慮に腰を振り始めて、嗚咽しそうになる。

  ああ、こんなに屈辱的でヒーローとして終わってるシーンを撮られてるなんて。けど、もっと、もっと良いシーンになるはずだ。

  「おぼっ……」

  「へっへっ、そうガッツくなって。ちゃんとこの可愛いケツにぶち込んでやらねぇとな……!」

  ケツを持って持ち上げられて、駅弁の体勢になる。これ、いくら欲しくても入らないよな?

  「おら、新入り、こいつのケツを拡げろ!」

  「へ……?」

  周りを見る余裕が無かったが、他にも男優がいたようだ。そいつは如何にもヴィランっていう黒い髑髏マークの描いてある覆面だけを身に着けた、茶毛の熊獣人……ベアーだった。

  「ベアー……? ベアーなのか……?」

  「グヘヘッ、ラビット、良い恰好じゃねぇか! これからお前もこのデカマラぶち込まれるなんて、羨ましいぜ!」

  「あひんっ!」

  そう言ったかと思えば、ベアーが急に俺の尻を舐めて来る。すぐに舌が俺の尻穴に入り込み、俺のケツをべちょべちょにしながら、牛ヴィランのチンポを挿入出来るように拡げていく。

  「そろそろ良いだろ」

  「へい!」

  ベアーが離れ、改めて牛ヴィランの極太チンポが当てられる。今手を放されたら、俺はこの巨根に一気に貫かれる。そう思うと背筋がゾクゾクしてきた。

  「おら、行くぞ!」

  「お、おほぉお!」

  尻穴に当たり、巨根の先端が入ったかと思えば、一気に下ろされ巨根が腹を貫きそうになる。凄まじい痛みのはずなのに、頭が真っ白になってショートするような性刺激で、痛みなんてどうでも良かった。気持ちいい。気持ち良過ぎる。

  「ほらよぉ!」

  「あっ、あひんっ!」

  牛ヴィランが腰を動かし、下から乱暴な腰遣いでチンポで貫いてきて、スーツの中でキツくなっているチンポから、今にもザーメンが出そうになっている。ケツ掘られて、色気のある喘ぎ声を出して、見る奴らを扇情しなくては。

  「ああ、俺、もう……!」

  「ヘッ、なら、たっぷり種付けしてやるからな……!」

  極太チンポが一瞬更に膨れ上がり、俺の腹に熱いものが溢れかえり、すぐに零れ出て落ちる。ああ、俺の腹が、ザーメンでいっぱいだぁ……。

  「おぼぉ……」

  牛ヴィランのチンポが抜けて、尻穴がポッカリと開いて、足を大きく開いた状態でベッドの上に座らせられる。アナルから精液が零れる様が、しっかりカメラに撮られている。今の俺、ちゃんとエロいよな……?

  「よし、良い絵が撮れたな」

  「ヘヘッ、ありがとうございます、マスター!」

  狐のバーテン、マスター・フォックスがこちらに歩いて来る。既にカメラは止まっているようで、カメラを遮るような位置に立つ。

  「ラピット・ラビット、今日の撮影は終わりです。今日の事は忘れ、目を覚ました時には、今日の事は全て忘れます。そして、ヒーロー協会には、このバーはなんの問題は無かったと、報告するのです。貴方は……」

  命令が頭に沁み込んでいく。記憶が薄れていき、意識も沈んでいく。俺は……。

  ---[newpage]

  「ん……」

  目を覚ました時、少し気怠さがあったものの、それ以外は大した事無く、自宅からヒーロー協会へと向かった。

  ここ数日の調査の結果、問題のありそうだったVIPサービスも、ただの個室での個別対応でしかなかったこともあり、問題なしと司令に報告しておいた。

  その日の夜、俺とベアーは仕事終わりに『Bar_MidNight』へと向かった。もう調査の必要はないが、サービスも良いし店の雰囲気も気に入ったから、つい行ってしまう。

  「会員証を見せてください」

  「はい」

  俺は、銀色のカードの会員証を狐獣人のバーテンに見せる。ベアーも同じ色の会員証だ。

  「よく来て下さいました。今日はどうしましょう」

  「VIPサービスを」

  「俺も」

  「はい、分かりました。それでは行きましょうか」

  俺達はカウンター席を立ち、唯一の扉を潜り、赤絨毯の廊下を進みエレベーターに乗る。地下に着き、紫絨毯の廊下を進み、途中でベアーとは別れた。

  案内された部屋に入ると、そこは上のバーのような部屋だった。ソファの席とテーブル、小さなお立ち台があり、そこにはポールが立っている、小さ目な部屋だ。既に身形のいい狸獣人がソファに座り、ワイングラス片手にこちらを待っているようだった。

  「さて、全て思い出せ」

  「!!」

  狐のバーテン……いや、マスター・フォックスの言葉で、俺は忘れていた昨日の事を思い出した。VIPサービスとして、こことは別の部屋でAVの撮影のために巨漢の牛獣人とセックスをして、それを撮られたんだ。

  そして、それが終わって、命令を下された。

  『このバーはなんの問題は無かったと、報告するのです。貴方は、ヒーローを演じるAV男優にして、私の配下のヴィランとなるのです。これからはVIPサービスを提供するキャストとして、常連客を装い通うのです』

  全てを思い出した。そうだ。俺は、これから本当のVIPサービスを受ける客のために、仕事をするキャストになったんだ。

  「折角だ、まずは昨日のAVでも見ながら、今日のサービスの説明でもしようか」

  部屋に置かれた大きなテレビに映像が映る。そこには、目線すら入っていない、俺の姿があった。

  「ああ、安心して欲しい。外に出す分は目隠ししてある。これは、VIPサービスを受ける客への、特別な映像だ」

  何を安心していいのか分からないが、そういうことらしい。

  思い出した昨日の痴態が映像として流される。チンポを目元に置かれ、屈してチンポにキスして舐めて、フェラして掴まれ、ケツをベアーに舐められ牛ヴィランのチンポを突っ込まれる。ヒーローらしからぬ嬌声を上げる様は、ただの淫乱な兎獣人だ。

  「さて、ではこれに着替えろ」

  命令されて渡されたのは、黒いテカテカな素材の……バニースーツだった。すぐにスーツを脱いで裸になって、エグいハイレグのバニースーツを着る。耳はないが、自前の耳があるからいいのだろう。

  「今日のお前は淫乱なバニーボーイだ。後はお客様のご要望通りにすればいい。ちゃんと撮るから、しっかりやるんだぞ」

  「はぁい!」

  バニースーツに覆われる股間がキュンとする。上品な身形ながら、狸獣人は既に俺の事をスケベな目で見ている。それでもう興奮するし、これからどんなプレイをさせられるのか、楽しみで仕方ない。

  「ぐふっ、まさかラピッド・ラビットにご奉仕して貰えるとはねぇ。まずは、そのお尻が良く見えるように、舞台でエッチなのを頼むよ」

  「はぁい! ラピッド・ラビット、精一杯ヤらせて貰います!」

  すぐに小さなお立ち台に上がり、ポールを掴んでお客様に向けてお尻を向ける。Tバックかってくらいバニースーツはお尻に食い込んでいて、俺のお尻を強調していた。

  フリフリお尻を振る動きをベースに、足を上げたりポールをお尻で挟むような動きをしてみたり、股間を強調するようなダンスをする。ちらちらお客様の顔を見てみると、退屈そうな様子はなく、完全に鼻の下を伸ばして見てくれている。

  「ああ、いいぞいいぞ! おじさんの息子も、元気になって来たぞぉ!」

  俺以外誰もいないプライベートな空間だからか、お客様はすぐにズボンを下ろし、パンツまで下ろしてしまう。お世辞にも立派と言えるのはキンタマだけで、竿は可愛いものだが、お客様のチンポに文句を言うのは間違いだ。

  「さぁさぁ、おじさんのチンポをしゃぶっておくれ!」

  「はぁい!」

  すぐに舞台から降りて、俺は狸獣人のチンポに飛び付く。しっかりと口の中に含んで、皮の被ったチンポの皮を口の中で剥いたり戻したりして刺激する。

  「おおっ! 気持ちいい……こんな可愛いバニーにエロいことをされたら、おじさん我慢出来ないよ……!」

  皮から出して刺激したからか、あっという間に射精してしまった。

  「ふぅ……まだまだ、これからだよね?」

  「はぁい! まだまだ、たっぷりご奉仕させてもらいますね!」

  ---