ほんのりイザ武な人間×獣人パロのみっち愛され……になってるといいな
幻覚とか妄想とかを捏ねくり回した結果の産物
最後の世界線から並行世界に移動してる
みーんな仲良く会社立ち上げて社畜してるよ
獣人は今のところみっちのみ
最終的にはハッピーエンド……を目指したい
もう好きに詰めればいいやと思ったから今回は黒龍との交流編
あと天竺編と東卍編も書く予定
いずれ本になるかもしれない
前回のコメント・スタンプやいいねにタグなどなどありがとうございます
未だに夢見てるんちゃうか?って思ってる←
著作権は放棄してないんで無断転載とか止めてくだせぇ
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場地の簡単な診察結果としては、目で見た分には栄養が足りていないのと複数の怪我以外は健康ということだった。これには武道はもちろんイザナや鶴蝶も胸をなでおろす。
ただ詳しい内容を調べるためには、やはり見習いではないちゃんとした医師と機器の揃った場所で調べるのがいいということで、後日改めて検査をしに行くこととなった。その際には場地も説明のために共に来てくれるらしい。
場地の検査後に三ツ谷が簡単に武道のサイズを測り、後日いくつかサンプルを作って持ってくると言う。長い時間ここに居ても武道のストレスになるだろうということで、2人は執務室を後にしていった。
2人と別れた後、イザナと鶴蝶は自分達の仕事を後日に回し、武道の必要な生活用品などを揃えることにした。三ツ谷には服を頼んだがすぐできるわけではないため、必要最低限の服や生活雑貨なども買わねばならない。
また獣人を家族として迎え入れる場合、役所への申請が必要になるため、そこも優先的に回らなければいけない。イザナも鶴蝶も会社の中では重役の立ち位置だ。何度も仕事を後回しにしたり休みという訳にはいかないため、武道にも今から忙しくなること、また疲れたら寝てもいいということを伝えて2人は執務室を飛び出した。
服屋、役所、家具屋を連続してハシゴをし、イザナの家に入れたのは夜だった。買い物の時は鶴蝶が武道を抱き上げ、イザナが店でポンポンと商品を買い込んで行く。荷物は配送し、家具などは恐らく自身の部下に組み立てなどを依頼したのだろう。イザナの家に入った時には、昼に買った商品が組み立てられ設置までされていた。
鶴蝶はイザナと武道を家まで送り届けると自身の家へと帰っていった……とはいっても、鶴蝶の部屋はイザナの部屋があるマンションの1つ下の階なので、すぐ駆けつけることもできる。流石この王にして下僕なだけはある。
そして鶴蝶が帰ったため、部屋には公園以来イザナと武道の2人しかいなかった。
「悪ィな、疲れたろ。どうしても今日中にやらねェとオレが暇じゃねェからな」
イザナは武道と対面になるようにソファーに座ると謝罪から始まった。確かに出会いは誘拐と言われたら否定できないが、武道にとっては見知った相手であるため特に気にしていなかった。
道中も仕事の電話が入るのか、都度その対応をしている姿を見ていれば、武道のために時間を無理矢理にでも作ってくれたのが嫌でもわかる。武道もニコリと笑顔を作り、首を左右に振ることで気にしていないと懸命に伝えた。
恐る恐るといった感じでイザナの手が武道の頭に伸びてくる。ゆっくりと伸びた手はふわりと武道の癖毛に手を置かれ、暫くして少しぎこちないがクシャクシャと撫でられる。
(わ、わー!!これオレが犬になったせいか!?めちゃめちゃ気持ちいい!)
ぎこちない撫で方に少し違和感はあるものの、本能が動物寄りになっている武道は目を輝かせてしまう。そして武道も武道で慣れていないため、おずおずとイザナの手に擦り寄った。片や虐待されていたと思われるため怯えられないか考え、片やあのイザナに撫でてもらうのは恐縮とお互いに考えていることは真逆に近いが、傍からみれば綺麗にハマっている。
「オマエの名前を決めねェとな……」
暫く武道の髪や犬耳を両手で堪能していたイザナはポツリと呟いた。役所では名前は後日でもいいと言われており、とりあえず保護した経緯とイザナが家族に迎え入れたいことは役所には伝えてある。イザナ自身の個人情報も伝え済みで、今はイザナが迎え入れても大丈夫かどうかの審査待ちだ。それまで武道はトライアルという形を取られる。
家族として迎え入れることに関して、イザナはあまり心配はしていない。何せ急成長中の会社役員であり財力はある。何より役所では武道がイザナに懐いている姿も見せられ、プラスに取られているのでほぼ確定みたいなものだ。
しかし今は名前である。武道自身が言葉を伝えられればいいのだが、生憎人語を発することができない。イザナは口元に手をあて真剣に考えてくれているが、イザナが仮に決めたとして決めてもらった名前に武道は反応できる自信はなかった。
(どーする、どーする!?どうしたらイザナくんにオレの名前伝えられる?口から出るのはワンとかキャンとかの鳴き声だし……そうだ!)
控えめにイザナの服を引っ張り、掌を表にして軽く握る。
「ん?どうした?」
人の言葉が話せないならとイザナの掌に一文字ずつしっかりと指で字を書いていく。言葉にできないなら書けばいい!と実践したまでである。
「た……けみ……ち?」
「わん!」
そのお陰かイザナに無事伝わり、思わず嬉しくなり笑顔で鳴いて返事をしてしまった。そう思うと恥ずかしさが込み上げてきて、じわじわと両頬から耳にかけて熱くなるのがわかる。
「じゃあオマエはタケミチだな」
先程と比べて慣れたのかワシワシと頭を撫でるイザナ。何とか自身の名前を伝えられて嬉しくて、そっと目をイザナに向けるとイザナも少し嬉しそうに微笑んでいた。
「タケミチは怪我もあるし、鶴蝶が入れたから今日はいいか……。シャワー浴びてくるから少し待ってろよ」
最後に大きくクシャリと頭を撫でると、恐らく浴室がある扉へとイザナは向かって行った。暖かい部屋、見知ってる人、気を張らなくてもいいというのは途端に武道を夢の世界へ誘おうとしてくる。
(考えなきゃなんねぇこと山程あるのに……めちゃくちゃ眠てぇ……ちょっとくらい、寝ても、いいかな……)
ほんの少しだけ……そう思ってソファーに身を横たえたが最後、夢の世界へと駆け足で飛び込んでいってしまうのは容易なことだった。
「タケミチ、出たぞ」
いつもより数倍早く浴室から出て、先程まで共に座っていたソファーに向かって声をかける。しかしソファーからは何も反応がない。もしやと思いソファーを覗き込むと武道が丸まって眠っていた。しかも器用にごめん寝状態である。
とりあえずテーブルに置いていた携帯を手にパシャリと1枚。ちょっと気に入らなくて数枚続けて写真を撮る。満足いくアングルが撮れたので鶴蝶に写真だけを送ると、そっと武道を抱き上げ自身の寝室へと共に入っていった。
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外から鳥の鳴き声が聞こえ、徐々に意識が覚醒し眠りが浅くなる。施設に居た時は数日とはいえ熟睡できなくて常に浅い眠りになっていたが、久しぶりに深く眠れたな……なんて思いながら目を開けるとそこには顔面宝具。イザナが武道を抱き込むように寝ていた。
イザナといい武道の周りにはタイプこそ違うが顔のいい男が揃っている。ずっと一緒にいると感覚が麻痺ってそこまで気にならないが、改めて見ると知り合いみんな顔がいい。そりゃ世の中の女の子は夢中になるわけだ。顔が良くてちょっと?ワルなところもあればホイホイされるのも納得の顔面である。
しかし何故一緒のベッドで寝ているのか。武道にとって全く不明だったが、恐らく寝落ちた武道を連れて一緒に寝てくれたのだろうと予測する。口は悪いが施設育ちだからか年下や子供には案外優しい王様なのを武道はよく知っている。
(しかし本当に顔がいい。こういうのをアジアンビューティー?って言うんだっけ?)
褐色の肌に銀色の髪、普段は見えているアメジストのような瞳はあいにく閉じられているが、銀色の髪と同様の長い睫毛がカーテンの隙間から入ってくる陽の光でキラキラと光って見える。まさに絵画のようなシチュエーション。1つ前の世界線では映画監督を目指していただけあって、映画でこんなシーン撮りたいな……などと現実逃避をしてしまうのは無理もない。
イザナは顔に光があたり眩しいのか少し身動ぎをした結果、前髪が顔を覆ってしまう。何故かそれが勿体ないと思ってしまった武道は、イザナの前髪を横に払うために手を伸ばした。もう少しで触れられる……というところでパシリと手首を握られる。
「あ"?」
「きゅー……ん(こっ……えぇぇ……)」
流石元暴走族の総長を張っていただけはある威圧マシマシの声。さっきまで彫刻のような美しさで幻想的だったのに途端に世紀末覇者になった。反射で武道の目にも涙が浮かぶ。獣人になり幼くなったこともあって、今までよりもさらに感情が揺さぶられまくっていると言っても過言ではない。
「……ん? あー……タケミチか」
寝ぼけていたのか徐々に覚醒し、最終的に気まずげな顔で武道を見る。イザナにとって普段他人から触られることがない。また気配にも敏感なため咄嗟に手と声が出たが、覚醒して認識したのは虐待を受けていたかもしれない獣人の幼子に圧をかけたということだった。特徴的な青い瞳にも涙を浮かべているから気まずいことこの上ない。
「……悪ィな」
少し気まずそうに武道の頭をわしわしと撫でる。怖かった筈なのに思考が単純になっているのか元からか、思わずケラケラと笑ってしまう。イザナもイザナでどんどん撫でる箇所が遠慮なくなっていき、只管色んなところをわしゃわしゃと撫でつけた。
「タケミチ、よく生きてこれたな……」
余りにも野生を忘れた姿にイザナの口から思わずといった感じで零れ落ちる。撫でられて段々楽しくなっていた武道に聞こえていなかったのは、幸いと言えるのだろう。
下の階から鶴蝶も合流し、簡単な朝食をしているなかで困ったのは今後のことだった。今日は特に外回りもなく室内での仕事のみのため、武道を会社に連れて行くつもりだ。昨日の今日で家に1人で留守番させるのは気がかりではあるし、会社へ連れて行くことにイザナも鶴蝶も問題はなかった。
しかし仕事のため急遽外に出ることがあるかもしれない。そうなった時に1人にさせるのは可哀想なため、その時誰かに武道を預けなければならないが、預けさせる先に頭を悩ませていた。
天竺メンバーで考えると1番マシな武藤や望月は県外出張のため不在。それ以外のメンバー……特に灰谷は論外。
東卍だとマイキーは面倒を見られる側なので除外というのもあるが、イザナが万次郎に会わせるのが嫌なためそもそも選択外。ドラケンはマイキーの面倒を見ていてほぼセットのためこちらも無理。
ペット部門の3人。場地・松野・羽宮は基本は店にいるため無理。三ツ谷は今日からショーにかかりきりで不在。忙しい中で武道の服を頼んだのは悪いと思って一応伺いは立てていたが、本人がやる気だったのでそこは問題ない。
選べられない選択肢が多い中、唯一もしもの時に室内に居て面倒を見てもらえそうなヤツらは1グループいる。イザナにとってある意味古巣とも言えるが、余り貸しを作りたくない。だが背に腹は代えられないため渋々連絡を入れることにした。何かあった時の保険というものは大事である。
「……オレだ、朝から悪ィな。頼みごとができるかもしれねェからお前と九井と乾、朝から会えねェか?」
「珍しいな。どんな頼み事だ?」
「会った時に纒めて話す」
「特に今日は予定はないから可能だ。犬猫も今日はコッチだから丁度いい」
少し不機嫌そうな声だがこれがデフォルトなことはイザナもよく知っている。貸しを作るのは癪だが武道のためと思えば致し方ない。電話を終えてその武道を見ると小さい手でスプーンを握り、鶴蝶に補佐されながらだが一生懸命に朝食を食べている。口の端に食べカスが付いてるのも何故か可愛く見える。鶴蝶がすかさず拭いている姿はさながら幼子に世話を焼く母親のようだ。
武道は人語は話せなくても余計に鳴くことはなく暴れないし煩くない。拙さはあるものの食事もトイレも問題ないようなので、これから頼む相手も最低限は見てくれるだろう。
◇◆◇
「……ちいせぇな」
「……あぁ」
「頼みたいことっつーのはコイツか?」
イザナ・鶴蝶・武道の3人と対峙したのは黒龍10代目であった柴大寿・乾青宗・九井一であった。大寿は飲食をメインに九井は会社全体の経理、乾はドラケンと共にバイク屋でメンテナンスなどに携わっている。乾は店もあるため会社へは来たり来なかったりするが、大寿は視察や接待くらいでしか外に出ないし、九井に至ってはほぼ会社にいるためある意味適役だった。1番頼まれそうな九井は苦そうな顔をしているが……。
「なんだ九井、獣人苦手か?」
「苦手っつうか生き物全般にあんま好かれないんだよ」
「ココはよく動物や獣人から逃げられてるよな」
「ア?武道がそんなことするかよ」
行けタケミチとイザナの足の後ろに隠れていた武道を優しく押しやる。武道は武道で久しぶりに会う黒龍の面々に嬉しくなっていた。
(3人共やっぱり大きい!あ、でもイヌピーくんに火傷痕がないのはよかった!)
嬉しそうな素振りを隠さずに全面に花を飛ばし、てててっと音が鳴りそうな走り方で3人に近寄る。そんな武道とは対照的に3人の内2人は顔に出していないが心底焦っていた。
片や195cmの巨躯で1部を除いた小さい生き物には怯えられ、片や金を作る天才は何故か生き物にはあまり好かれていないため、どう対応すればいいかわからないためだ。対して乾は特にそういった怯えられたり嫌われるといったことが過去にないため、呑気に武道を見つめている。
武道はまず大寿に近寄ると目一杯首を上に上げて大寿を見つめた。スラックスを軽く握る手も身体も小さいのに、自身を見つめる大きな青い瞳が大寿には酷く印象的だった。
(大寿くんでっけー!ちょっとしたアトラクション並みのでかさに見える。何かここまででけェと逆にテンション上がるな!!)
ジッとその青に暫く見つめられたかと思うとニコリと花を飛ばすように笑った。大寿がポカンとしている間に武道は九井へと目標を変える。九井はタジタジになりながらも武道から目が逸らせない。どう接するのが正解かと頭の中でぐるぐる考えていると、武道からキュッと九井の指先を握られた。
(ちょっと隈はあるけどそこまで荒んでない!イヌピーくんに火傷痕がないってことは、イヌピーくんのお姉さんも無事に救出できたんだな)
九井の心境なんて気にしないというよりも気づかない武道は、九井のトラウマとなる乾家の火事も回避できていたことに嬉しくなる。
1つ前の世界線では何とか介入できたが、それ以外の世界線では九井はいつもどこか辛そうだった。トラウマもなく少し不健康だけど問題のない九井に嬉しくなり、こちらにも花を飛ばすような呑気そうな笑顔を向ける。
この時、九井の心臓がキュンともギュンともいうような、未だ味わったことのない動悸に襲われた。咄嗟に心臓を抑え、目を白黒させている九井。
鶴蝶は1人、わかるぞ……その気持ち……と後方彼氏面ならぬ、イザナの子可愛いだろと親馬鹿を発揮している。イザナは変わらずにドヤ顔をキープしているのは言うまでもない。
最後に乾と思い武道がそちらを向くと、ワクワクしたのを隠しきれない感じで武道と目線を合わせるようにしゃがみ込み、武道に向かって両手を広げていた。
(えっ、あれ!?この世界のイヌピーくんは初対面だよな?何かめちゃくちゃフレンドリーだけど……!?イ、イザナくーん!!)
流石にそうくるとは思っていなかった武道は思わずオロオロとし、イザナと鶴蝶に助けを求める視線を投げる。鶴蝶はニコニコと写真を携帯で撮っているため使い物にならない。イザナにキューンキューンと鳴いてどうしたらいいのか助けを求める。
イザナの心は複雑だった。慣れてない2人にはタジタジな姿にいいぞもっとやれと思ったが、乾に至ってはウェルカム状態なのである。正直言って面白くない。
今後イザナや鶴蝶がいない時のことを考え、武道のことを思えば乾だけ交流をしないというのはあまりよろしくないのもわかる。
昔のイザナであれば自分自身を中心に考えていたが、心に余裕ができ周りをよく見るようになった。また会社を立ち上げて今までと違った立場になってからは、その考えはまずいというのもよくわかる。
だがしかし、自身のお気に入りは自身を1番に見て欲しい気持ちもなくなったわけではない。イザナは眉間に皺を寄せながらも、今後を考え渋々武道にGOサインを出した。
イザナから許可が貰えたことにより武道も安心した顔をし、未だ腕を広げている乾の元に駆け寄った。ぽすんと軽い音と共に乾の腕の中に入ると乾は感動した顔をし、黙ってそっと武道を抱きしめる。
ぽかぽかとした気持ちと共に、子供特有か獣人特有かはわからないが陽だまりのような匂いを武道から乾は感じた。
「……コイツの名前は」
「タケミチ。オレか鶴蝶が居ればいいが、両方いない時は預かって欲しい。あと万次郎には絶対に会わせたくないから店には連れてくなよ、乾」
大寿がそう問いかけてくるということはほぼ了承を得たようなものだ。九井もソワソワと武道と交流したそうにしているし、乾に至ってはお気に入りに即入ったようだ。たった数分の出来事とはいえ、いい年した大人3人を一気に陥落させる武道には関心しかない。
気難しい大寿、生き物を苦手としている九井、気に入ったものしか懐に入れない乾。それを一気にだ。念の為、乾には店に連れて行くなと釘を刺すとショックを受けていた。
コイツ、連れてく気満々だったじゃねェか……とイザナは頬を引きつらせる。釘を刺して正解だった。
店に連れて行くということはドラケンに会う。ドラケンに会うということは万次郎に会う確率も高くなる。ただでさえこの堅物達を陥落させたのだ。万次郎なんて一発アウトな上に、拉致という手段も使ってくることも考えられる。
イザナは心の底から万次郎に会わせなくて正解だったとしみじみと思うと共に、虐待されてたのにこの懐きっぷりは愛情に餓えているのか?と勘違いもしていた。もう何も言うまい。
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顔合わせをしてから数日、イザナも鶴蝶にも仕事で外に出なければならないということは起こらなかった。相変わらず仕事に忙殺されていることに変わりはないが、一種のペットセラピーと言えるのだろうか、武道によって2人は日々癒やされていた。
視界に武道がいるだけで無理せず頑張ろうと思えた。むしろ武道から都度小休憩のお誘いがあり、以前より効率が上がっているのだから恐ろしい。
しかし急遽どうしても外出をしなければならない日がついに出てしまった。イザナと鶴蝶は苦渋の決断で黒龍の面々に武道を預けることになる。
絶対に、必ず夜までには帰って武道を迎えに行くことを黒龍ひいては武道にまで何回も念押しし、イザナと鶴蝶は会社を後にした。
武道が黒龍に預けられた日。乾は店にいるため会社にいる大寿と九井の2人で何とかすることになった。一応乾にも武道を預かることは連絡をしている。連絡をしておかないと後々バレた時、面倒くさくなることが2人はわかっているからだ。
初対面時、獣人に慣れていない2人は預かった際に万が一があるかもしれないことを考え、念のため獣人のことを勉強していたが中身は大人な武道のため、特に問題らしい問題は起こりようもなかった。
それよりもイザナと鶴蝶に対して行っていた小休憩のお誘いをいつものように大寿や九井にもし、休憩を適度に挟ませたため逆にいつもより2人の仕事が進んだくらいだ。
書類に忙殺される2人に小休憩を入れさせ、尚且つそれ以外の時は大人しくソファーに座って与えられた本を読んだり時おり外を眺めている。本やネットで見た獣人よりも大人しいので、イザナや鶴蝶が話していた虐待が頭を過る。
2人の中でも武道は愛情に餓えているが、虐待を受けていたため周りの空気などを読むのに長けていると完璧に勘違いしていたのだった。
「そろそろ飯の時間だな」
「確かタケミチには消化のいい柔らかいものだったか?」
「黒川と相談して既に決めてある。オレらの飯と一緒に届く予定だ」
いつもなら適当なもので昼を片してそのまま仕事をするのだが、今日は武道がいるため珍しく共に昼を取ることになった。武道は栄養が足りてないということでまともな食事をさせてもらえなかった可能性も考慮し、暫くは消化のいい物をとイザナからも鶴蝶からも念押しされている。
武道の食事を頼むついでに大寿と九井の飯も共に頼んでいる。2人は特に食べる物に括りもないため大寿の独断で決めた。そこそこ美味くて量さえあれば九井も特に不満はない。そして3人のいる執務室に届けられたのは、3人の昼食と何故か店にいるはずの乾だった。
「イヌピー……店は」
「ドラケンに任せた」
「……なんて、言ってだ」
「会いてェヤツに会ってくる」
「……名前を出さなかっただけマシか?」
「どうだろうな……後からドラケンから質問されそうだ」
2人は大きい溜息をつき頭を抱えた。そんな2人のことは気にせずに、乾は武道に会えた嬉しさから即武道の元へ向かい絡んでいる。
武道から乾と大寿・九井へ交互に目線をやってから2人に対して心配そうな視線を送ってくる。こんな小さい命にまで心配されることが2人の頭痛を酷くする。武道は悪くないが、乾この野郎……といったところだ。これは後からドラケンからクレームも来るだろう。しかしどうやって武道の名前も出さず説明するかと悩ませる。
「……オレらは今から飯の予定。イヌピーは?食ったのか?」
「買ってきた」
「用意周到か……」
ドヤ顔をするのにちょっとイラッとしたが、オロオロと未だにこちらを見つめる武道が可哀想になり、諦めて昼食にすることにした。説明は未来の自分が何とかするだろうという投げやりな考えもある。大抵そういうのはうまくいかないお約束だ。
乾が途中参戦し、ドラケンからの電話もすぐにかかってきたが、電話はクレームではなかったため比較的問題なく対応できた。
ドラケンからの電話はドラケン曰く、朝からずっとイヌピーは落ち込んでおり仕事にならない。そうならいっそ行ってきたらどうだと送り出したということだった。事情はわからないが話せる時に話をしてくれればいいという言葉を最後にもらい電話を終えた。
流石マイキーの保護者。スパダリも良いところである。マイキーと武道を会わせるのはイザナ的にアウトのようだが、どうにも同じ苦労人なドラケンには武道に会って癒やされて貰いたいと思う大寿と九井だった。
尚、乾は午後はずっと武道と遊んでばかりだったので、今度はドラケンを会社に呼んで乾に店を任せる算段を組み始めたのは予想できた未来だ。
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黒龍に初めて武道を預けたその日、イザナと鶴蝶は持ちうる限りの能力を駆使し、宣言通り仕事を終えて武道を迎えにきた。2人して荒んだ顔な上にキマったような目をしているので武道は若干怯えていたが仕方ない。ちょっとしたホラーだったものだから武道だけでなく3人もドン引いた。
日中の武道の様子に与えた食事の説明、預けられた午後に乾の途中参戦があったことに加え、乾が抜け出した店のフォローをしてくれたドラケンのことも念の為伝えておく。イザナは小難しい顔をしていたが、最終的に小さく検討しておくと言っていたので、近い将来ドラケンと武道は会う機会ができるかもしれない。
そうして初めて武道が黒龍に預けられた日は1部例外はあるもののほぼ恙無く終えた。それから暫くはイザナと鶴蝶が相当頑張ったのか、武道が黒龍に預けられるということはなかった。
だがそれに関してたった数日で大寿からイザナに逆ヘルプコールが飛んできた。
「一体何の用だ」
武道を抱きかかえ、いつも通り鶴蝶を引き連れたイザナは大寿と九井の執務室に訪れていた。大寿はどこか気まずけに腕を組み、目を伏せて沈黙を貫いている。九井から話があるから武道と共に来てほしいといった内容だったが、説明は九井からさせるつもりのようで黙ったままだ。
そして九井はと言うと、こちらも机に肘をついて顔の前で手を組み真剣そうな顔をして黙っている。いわゆるゲンドウポーズ。窓から差し込む逆光がまた雰囲気を重くしていた。笑うところでは決してなく、九井は真剣そのものである。
「……いくらだ」
「ハ?」
「いくらでタケミチを貸し出してくれる」
「……」
どうやら九井、以前預かった際のペットセラピーにどハマリしていた。何せ小さい命が視界にちょろちょろと映る上に、時折心配そうにキュンキュン鳴きながら休憩を催促してくるのだ。たった数分で陥落した男にほぼ1日一緒にいるのは劇薬だったらしい。大寿も黙っているのは自身も気に入ったからだというのはすぐにわかった。
貸しを作る筈が逆に貸しを作らせちまったのは何故だ?とイザナの頭を悩ませるが、ふと抱きかかえている武道に視線を下ろすとうるうるした瞳でイザナを見上げてくる。
それを見て、コレは仕方ねェかと半分諦めながらもどのような妥協点なら落ち着くかとイザナは痛む頭を回転させた。