犬の気持ち ③

  ほんのりイザ武な人間×獣人パロのみっち愛されになってると思いたい今日この頃

  幻覚とか妄想とかを捏ねくり回した結果の産物

  最後の世界線から並行世界に移動してる

  みーんな仲良く会社立ち上げて社畜してるよ

  獣人は今のところみっちのみ

  最終的にはハッピーエンド……を目指したい

  今回は天竺との交流編、ちょっとだけ不穏を添えて

  灰谷蘭が好き勝手動くもんだから文字数増えまくったわ

  東卍編も書く予定

  いずれ本になるかもしれない

  もう文字数気にすんのはやめましたわ

  前回、前々回とコメント・スタンプやいいねにタグなどなどありがとうございます

  フォローもありがとうございます

  ぼちぼちやっていきます

  著作権は放棄してないんで無断転載とか止めてくだせぇ

  [newpage]

  社畜といえど人間。そんな仕事人間にも休みはある。仕事に忙殺されているイザナは武道と出会ってから何も無い休日を初めて迎えていた。

  今までに休みは勿論あったものの、武道の健康チェックや役所の手続きを完了させたりと、必要なことに時間を費やしていたためである。しかしそのお陰で申請は無事に通り、イザナと武道は家族として共に居られるようになった点は良いことだった。

  言葉のとおりイザナと武道は正式に家族になり、武道はイザナのものであると大手を振って言えるため、イザナも心のどこかでホッとしている。口には出さないが鶴蝶もイザナの気持ちを察しているのか目が嬉しそうだ。

  そんなイザナが休みということは秘書的な立ち位置である鶴蝶も休みになる。下の階に住んでいることもあり、普段からイザナと武道の食事の用意をしている鶴蝶は、いつもと変わらず朝からイザナの部屋に訪れていた。

  「今日はどうするんだイザナ、特に何もないんだろう?」

  「そうだな……タケミチは何したい?」

  鶴蝶に用意された朝ご飯を小さな手で必死で食べていた武道は、突然投げかけられた質問にポケッとした顔をしてしまう。自身の名前を伝えた際に必要にかられて筆談で名前は伝えたものの、それ以外に関しては未だジェスチャーでしか交流していない。しかしイザナも武道はもちろん、鶴蝶も言葉なしでもうまいこと交流できていた。

  (そういやこの世界の外って施設っぽいとこから出た日と検査や手続き以外で出たことないな。外か……ちょっと行ってみたいな)

  イザナと鶴蝶にそれぞれ顔を向けた後、窓の外を眺めながらぼんやりと考える。室内が快適過ぎて今まで考えたことがなかったが、武道はこの身体になってからあまり外に出た記憶がない。1つ前の世界線と変わっていないように見えるが、獣人なんてファンタジーな存在がいるからもしかしたら違うところもあるかもしれない。そう思うと途端に外への関心が出てきた。

  「……外行くか」

  「そうだな!用意する!」

  イザナと鶴蝶には武道が少し寂しそうに外を見つめるように見えてしまった。鶴蝶に至っては軽く目に涙が浮かんでいる。

  虐待されていたのなら外に出てもいい記憶がないだろう。ならばその記憶を上書きしてやらなければならない……! と酷く勘違いをしている。武道はただ呑気に考えていただけなのに、相変わらず武道以外は深刻に捉えてしまうのはもうデフォルト。

  鶴蝶は食事を急いで食べると武道の服などが仕舞われている部屋に駆け込んでいった。外に出るために必要な服や荷物を纏めるためだろう。なんでそんな2人が意気込んでいるのかわからない武道は、キョトンした顔で鶴蝶を見送るとイザナを見上げた。

  (え?何?今のどこにそんな意気込む要素があったのイザナくん)

  「……気にせず飯を食え」

  食べる手が止まっていた武道を催促するようにイザナは声をかけ、ぽすりと武道の頭を軽く撫でた。

  ◇◆◇

  「あれー?大将達出かけんの?」

  「休みなのに珍しいな」

  武道はショーの衣装片手間に仕上げたという三ツ谷特製の服に身を包み、イザナの腕に抱かれ鶴蝶と共に出かけようとマンションから出てすぐのところで聞き慣れた……そして1番会いたくなかった声に動きを止める。

  「大将の腕の中にいるの獣人?」

  「目、でっか」

  「わふ(わ、灰谷兄弟)」

  「……お前ら、なんでここに」

  振り向けば車から降り立ちこちらへと近づいてくる灰谷兄弟の姿。イザナ達と同じ会社に在席しているものの、主に夜の店であるバーやクラブ経営を中心にしているため、日中に外を歩いているのは珍しいことだった。

  「大将達が休みって聞いて久しぶりに遊べねぇかな〜って」

  「え、柴犬の獣人?クソ可愛くね?」

  相変わらず気の抜ける返答をする灰谷蘭に、イザナの腕の中にいる武道に興味津々な灰谷竜胆。この2人……特に蘭がウザ絡みをしてくるのがわかっていたから、天竺の中では武道のことについて黙っていたかった。イザナと年が近いのにノリとテンションは未だ女子高生である。これくらいの若さがないと夜の店を経営はできないのだろうか。それにしても何も連絡なく、自らの王のマンションに突撃をしようなんてこの兄弟くらいだ。

  「……連絡はしてたか?」

  鶴蝶が怖ず怖ずと灰谷達に聞くが、着いたらしようと思ってたという返答にイザナの額に青筋が浮かぶ。一言言ってやろうとした時に、イザナの頬にぺたりと小さな手が添えられた。

  目線を下にやると腕の中にいる武道が不安そうにこちらを見ていた。折角の外に出かけるのだ。怒鳴り声や威圧される思い出を作る必要はない。イザナは1度大きく息を吸い込み吐き出すと、くるりと灰谷達に背を向けた。

  「オレらは出かける、また今度にしろ。行くぞ鶴蝶」

  その場から素早く立ち去ろうとしたが、そんな一言だけで諦める兄弟ではない。

  「待って待って大将。オレらも連れてってよ」

  「大将オレらにもその子紹介してよ」

  「おい……お前ら」

  鶴蝶も止めようとしてくれているが、面白いことや王に関わることなら積極的に絡んでくる2人だ。簡単にこの場から立ち去ることはできないのはわかっていた。わかっていたが立ち去れないかと試さないわけにはいかない。何せイザナの中でこの2人は武道の教育に良くないという判断をしているのだから。

  「……足」

  「流石大将、わかってる〜」

  「元々そのつもりで来たから乗ってよ」

  一言だけで理解するのはこの王の部下だからだろうか。了承を得られたと瞬時に理解し、さらにテンションを上げる灰谷兄弟。

  こうなったらとことん財布を使わせてやるつもりで3人は灰谷兄弟が乗ってきた車へと乗り込んだ。

  [newpage]

  場所を移動し着いたのは、元々イザナ達天竺が1番最初に拠点を置いた横浜。そんな横浜にある八景島に来ていた。目当ては勿論水族館。本当は都内にある水族館でもよかったのだが、どうせ車があるならと足を伸ばした次第だ。

  イザナにリュック型のハーネスを付けられた武道は、イザナと手を繋ぎながらも久しぶりに地面を歩いていた。どうにも周りには保護者がいっぱいで、どこかへ歩こうものならすぐ抱き上げられてしまう。そのため久しぶりに1人で歩けることに武道は感動していた。迷子防止用に音がなる靴を履いているのはこの際目を瞑る。

  「わっふ……わん……!(久しぶりの外!オレ、自分で歩いてる!めっちゃ足音鳴ってるけど!!)」

  「タケミチ落ち着け。興奮すると転ぶぞ」

  「わん!きゅーん!(ありがとうイザナくん!やっと歩く練習できる!)」

  「聞いてねェな」

  イザナ達の後ろでは隙あらば写真を撮り続ける鶴蝶と灰谷兄弟が続くかたちでついて行く。何を質問しても獣人の名前がタケミチという名前以外教えてくれないので、質問する対象を鶴蝶に変えたようだ。

  「尻尾も振ってすっげぇ興奮してんじゃん。ぷぴぷぴ鳴らしてんのもかーわいい」

  「で?どうしてタケミチを大将が育てることになったんだ?」

  「どっかから逃げてきて公園で蹲ってたタケミチをイザナが連れてきた。どうやら虐待を受けてたみたいでな。迎え入れた理由は……そういえば聞いてないな」

  武道とイザナを撮っていた手を止め、竜胆からの質問に答える。これくらいなら伝えてもいいだろうという判断だ。

  「タケミチは裏だとウケよさそうな見た目だもんな」

  「イザナの前でそれ言ったら蹴られるぞ、蘭」

  「ふーん。そしたらオレらに近々裏調べるよう言われっかな」

  「ありえるな……審査の際にタケミチについてもちろん調べられた。オレ達が調べられる範囲でもな。だけどどこにも登録記録がなかった。それに虐待の跡もあったんだが……注射の跡もあってな」

  「へー……真っ黒そ」

  「ま、そういうのはオレらに任せてよ」

  夜の店を任されている彼らにとって裏の世界はある意味隣人のようなものだ。元々東卍加入前の天竺で暴走族をしていた時も、裏に関わるような話はあったくらいである。未だに六本木のカリスマとして名を馳せている灰谷兄弟。会社以外の兵隊も年々増え続けているため、会社として表立って動けない時はよく彼らを中心に動いてもらっている。

  「でさー、オレらいつになったらタケミチと交流させてもらえると思う?」

  「大人しくしてないと今日は無理じゃないか?」

  「大将もだけど鶴蝶も厳し〜」

  打って変わって明るい雰囲気で武道と交流させてもらおうと蘭は交渉するが、鶴蝶はどこ吹く風。パシャパシャと撮影をまた再開し、素気無く突っぱねる。厳しければ厳しい程やる気になるこの兄弟。口元には笑みを浮かべていた。

  ◇◆◇

  八景島の水族館は武道にとって今はもちろん、人間だった時にも来たことがない場所だったため普通に楽しんでいた。また身体も小さいため成人で見るよりも何倍も迫力がある。つまるところ、身体の幼さにも引っ張られ武道はテンションが上がっていた。

  手を放すと夢中になってふらふらと何処かへ行きそうなため、イザナは念の為手首にハーネスの紐を巻き武道との手をしっかり握っていた。

  武道は夢中にはなるが時たまハッとしてイザナの方を振り向く。そしてまたすぐに視線は大きな水槽へと目線が戻る。水族館の中に入ってからその繰り返しをしていた。

  「虐待受けてたわりには大将にめちゃくちゃ懐いてんね」

  「興奮して魚に夢中になるけどすぐ大将に目線いくな」

  「基本身内認定したらすっげェ懐く、獣人にしては珍しく人間寄りとのことだ。愛情に餓えてるのかすぐ人に懐くが、空気を読んで控える仕草もある」

  「今は初めての場所で興奮するけど、大好きな大将がいないと不安って感じ?」

  「ならやっぱ大将や鶴蝶以外にも慣れさせた方がいいんじゃないか?」

  「……それは、そう……なんだが」

  「歯切れ悪ッ」

  武道の成長のため色んな人と関わるのは大事なことだ。だがしかし鶴蝶もそしてイザナもこの可愛い姿を自慢したい反面、他人には見せずに仕舞い込みたい気持ちもあった。

  そんな鶴蝶の気持ちもわかっているのか蘭はニヤニヤと笑いながら、

  「ならやっぱ今日は丁度いいじゃん。オレと竜胆っていう新しい顔にもタケミチに慣れさせようぜ」

  なんて笑いながら言う姿に少しイラッとする。竜胆はまだいい。普通に武道が可愛いから気になっているのかチラチラ見ているくらいだし、蘭に比べて比較的まともなので交流してもいいのではと鶴蝶は思っている。

  しかし蘭に至っては確実に楽しんでいる。下手したら武道の教育に良くない影響を与えるかもしれない。そんなことをぐるぐると考えてしまう。

  しかし暫くは武道のテンションも落ち着かず、彼らの王様もそちらにかかりきりなので現状維持なのだが。彼らにとって全ては王様の言葉で決定するのは今も昔も変わらない。

  元々マンションから移動の時間もあり到着が遅かったため、途中フードコートで少し遅めの昼食にする。そんな中イザナと蘭は席を外し、鶴蝶も昼飯を買いに席にいない。イザナが武道から離れるのは珍しいことだが、恐らく先程鶴蝶が話していた裏について指示をしているのだろう。席を外したのは武道に聞かせたくない気持ちからなのもわかる。

  鶴蝶はイザナから竜胆ならと了承を得たため、武道から目を離さないように念押しし、席を離れた。ここで一緒に車に乗ってから初めて竜胆と武道は交流しようとしていた。

  竜胆は元々獣人という種族が好きだ。人間とは違ったポテンシャルを持ち、また可愛さやカッコ良さがある。武道はどちらかといえば断然可愛さだ。

  過去にも灰谷家で獣人を迎えようといったことがあったが、獣人の性格が蘭に受け入れられず今日まで獣人と触れ合うといったことがなかった。

  竜胆の目から見ても武道は異質だった。このくらいの年の獣人だと癇癪持ちだったり、獣寄りがほとんどで暴れることが多い。だが離れて見ていた武道は大人しく、むしろイザナのことをチラチラ確認する姿は大変愛らしかった。

  人間寄りで大人しいのもあるが、虐待も影響しているのかもしれないと踏んでいる。蘭も苦言を呈さないということは、ある程度武道のことを気に入ってるみたいだ。

  残念ながら武道は見た目は愛らしい幼児の獣人だが、中身はいい大人で元人間なのは誰も推理できまい。

  竜胆はようやく兄も気に入る獣人に出会えたが、今まで触れたこともなかったのでどう接すればいいかわからず、2人きりになってからもジッと武道を見つめていた。

  武道は武道で、竜胆とどう交流を持とうか悩んでいた。同じ暴走族に居たものの幼馴染の多い東卍メンバー、比較的関わりのある黒龍のメンバーよりイザナを中心に年上で構成されている天竺。

  鶴蝶は幼馴染、イザナとは万次郎、武藤は春千代経由で交流があったが、それ以外の面子……灰谷兄弟含めて直で関わるのはそこまで多くない。

  1つ前の世界線では結婚式に招待したら来てくれたので、立ち位置的には知り合い以上友人未満だろうか。

  目の前に座っている竜胆は武道のことが気になっているのがよくわかる。撫でようと手を出して止めてを繰り返しているし、目も心なしか少年のようにキラキラしてる。

  (蘭くんはちょっと怖いけど竜胆くんなら……)

  ここは武道から動くしかないと思い、伸ばされたものの武道に触れずに止まっていた竜胆の両手の甲を掴む。急に触れてきた武道にビクリと一瞬驚いたものの、すぐに落ち着いて恐る恐る武道の方へ手を伸ばす。竜胆の両手は武道の頬に辿り着くと、もにもにと軽く揉んでみる。

  「うわ、柔らけ」

  そのまま頬を無心で触っていると今度は武道から竜胆の手に頭を擦り寄せた。恐る恐るといった感じで両手で頭を撫で、犬耳部分もふにふにと力任せにならないように触る。

  (竜胆くんの両手でけぇし触り方柔らかいから気持ちいい……イザナくんが1番慣れてるし気持ちいいけど竜胆くんも負けてないな)

  竜胆は通常の獣人であれば慣れている好きな相手以外から触られるのを嫌がる耳まで触れさせて貰え、念願の獣人に触れ合うこともでき感動していた。

  武道は武道で竜胆の撫で方を気に入り、声をくぅくぅと洩らしている。お互いに歩み寄った結果、ある意味互いに満たされるようになっている。

  そんな2人を話し合いから戻ってきたイザナと蘭は、少し離れた場所からカシャカシャと写真を撮りながら会話をしていた。

  「可愛いに可愛いは反則だろ〜なんだあの交流の仕方」

  「……」

  「大将、ちょっと竜胆にジェラってる?」

  「……少しな」

  「正直じゃん! ……ま、裏のことは任せてよ。竜胆もタケミチのこと好きみたいだしきっと張り切るぜ」

  「その件は任せた。戻るぞ」

  イザナがタケミチと声をかけながら近寄ると耳をピンと立ててタケミチはイザナの方を向く。イザナが戻ってきたことにより、竜胆の撫でる時間も終了した。少し残念そうにしながらも念願の獣人に触れられたのもあり、またチャンスがあれば触らしてもらおうと固く決意をする。

  「竜胆」

  「何、兄貴」

  「鶴蝶も言ってたこと正式に大将に頼まれたから兵隊動かすぞ」

  「わかった」

  「で?撫で心地はどうだった〜?」

  「めっちゃ癒やされた」

  [newpage]

  灰谷兄弟に武道の存在がバレたので、どうせならいっそ天竺のヤツらには武道のことを周知しておくかとイザナが判断した。そのため水族館にいないメンバーへ本日仕事だったのにも関わらず、仕事終わりに灰谷兄弟が経営するクラブに来いとの命令が下る。

  水族館を堪能した一行は横浜から東京六本木にあるクラブへと移動する。武道は日中はしゃいだ結果、イザナの腕の中でぬいぐるみを抱きしめながら既に夢の世界へと旅立っていた。

  「すっげぇ無防備……腹向けて寝てる。大将、日中も思ったけどタケミチの野生死んでね?」

  武道を気に入った竜胆は昼食後もタケミチへとよく絡んでいた。武道もイザナに伺いの顔をチラチラ見せながらも竜胆を気に入ったようで、肩車をされたり動物と触れ合える場所では2人共同じテンションではしゃいで仲良くしていた。

  途中必ずぬいぐるみが当たるくじを2人してチャレンジし、お揃いが嬉しいのか小さい身体いっぱいにぬいぐるみを抱きしめる武道を見れたのもいい思い出だ。

  イザナの中で竜胆は武道の友人枠として許可した。成人済のパリピないい大人と5歳以下の獣人の幼子であるが、イザナから見ればテンションが同じなので友人だ。そしてその2人の光景をいたく気に入り、只管写真を撮ったり動画を撮っている灰谷蘭が傍らにいるのがセット。

  蘭はイザナの中ではまだ武道に近づくことは許されていないが、本人はそれでもいいらしい。可愛いと可愛いが戯れている姿は癒やされると本人談。ちょっとその気持ちがわかってしまうだけにイザナも鶴蝶も強く拒むことはできなかった。悔しいが可愛いは正義。

  「タケミチは慣れた相手に野生なんて消えるな……ちょっと消えるの早ェなと思う時はあるが」

  「最初は多少ビビったりするがな。身内認定して慣れたら消えるな、野生」

  「……イザナ。タケミチに知らないヤツには着いて行かねェって教え込むべきか?」

  「万が一を考えて言い聞かせるか」

  イザナと鶴蝶は真剣な顔で腕の中で寝ている武道を見つめながら話す。そうか、野生死んじゃってるのかと遠い目をすればいいのか、心休まる相手が見つかってよかったなと泣けばいいのか竜胆はどういう顔をすればいいかわからない。蘭はただその光景がツボにどハマリしたのか、声を出さずに震えているといった全体を端から見たら不思議な光景だった。

  可哀想なのは運転をしている灰谷兄弟の兵隊。こんなやり取りがクラブ到着まで続いたのは言うまでもない。

  ◇◆◇

  「施設で1番小さいヤツと年は近いか?」

  「腹天してんな」

  「……野生どこいった?」

  仕事を終えて合流した斑目・望月・武藤の3人は未だイザナの腕の中で寝ている武道に目線がいく。クラブは賑わっているがイザナ達がいる部屋はVIP部屋のため、そこまでの喧騒はない。そのため武道も深い眠りについたままだ。

  「今日タケミチに会わせたのは他でもない、裏のヤツらが狙ってるかもしれねェからだ」

  裏のという言葉に3人は殺気を漂わせ、さっきまで笑っていた灰谷兄弟ですら笑うのを止めている。施設経営もしている上で度々裏の案件に関わることがある。それは獣人やペット対応部門の東卍も関わることはあるが、人間となればそれよりたちが悪いのが多い。

  東卍でも似た組織もあるがそれだけでは手に負えない場合、天竺組も協力し灰谷兄弟やそれぞれの兵隊を使い、こちらも裏から対応するのが天竺組の裏の顔だったりする。バレなければ会社はクリーンなのだ。バレるヘマもしないが。

  「虐待による傷を受けていたがそれ以外にも注射痕があった。これだけもの珍しい瞳をしているんだ、裏で飼われていた可能性がある」

  「役所で審査結果について聞いたがタケミチには登録履歴はなかった。オレ達も調べたがそれらしいものはなかったな。だがイザナが出会った日にオレも会っているが、合っていない大人用Tシャツに足には布を巻いていた」

  イザナの言葉に続き鶴蝶から当時の説明が入る。あいにくその珍しい瞳というのはタケミチが眠っているため後から来た3人は見ることができないが、イザナが言うくらいだから相当珍しい色合いなのだろうと察する。また幼く可愛さもあるため、確かに裏の世界のヤツらには好かれる要素を多く持っていそうだと3人は判断した。

  「逃げたタケミチを追って裏のヤツらが来る可能性は高い。だが、タケミチをこれ以上傷つけさせるつもりもない」

  「タケミチって獣人を囮にはしないってことだな。あくまで守る対象ということか」

  「あぁ。まずは灰谷達の兵隊を使って調べはするがこちらからは仕掛けねェ。いつの時代も先に手を出した方が負けだ。向こうから手を出してきたところを一網打尽にする」

  望月がイザナに改めて方向性を確認する。こちらから迂闊に乗り込むのは危険というのはよく分かっているし、何度もこういったやり取りはしているが確認は必要だ。

  「オレらの兵隊にもタケミチのことを共有するのは有りか?」

  「……許す」

  「わかった。後でタケミチの写真を送ってくれ」

  武藤からも自身らの兵隊への情報共有をしてもいい許可の確認が出た。一瞬言葉が詰まるが必要と判断し許可を出す。どうせならイチ押しの武道の写真を送りつけてやろうとイザナは瞬時に思った。

  「じゃあ最終確認。現状は相手を探るのみで手は出さない。調べるのはまずはオレと竜胆の兵隊だけ。タケミチが狙われる可能性あるから注意しておく。この3点な〜」

  「兄ちゃんすぐ仕切る……あ、オレからも1つ提案」

  ここぞとばかりに蘭が仕切るのはいつもの光景。それに文句を言いつつも自身の意見を王に進言する竜胆。

  「なんだ」

  「外出る時は基本大将と一緒だろうけど、万が一を考えてGPSとか付けておいたほうがいいと思う。首輪……はタケミチが可哀想だな。ダミーでチョーカーとか付けて本命はちっこいキーホルダーとか?」

  「それは考えていた。近々そこは用意するつもりだ」

  「了解」

  イザナは未だ夢の中にいる武道の頭を優しく撫でる。その顔は慈愛に満ちている。しかし目を閉じて、顔を上げぐるりと面子を見る顔は先程の慈愛に満ちた顔とは程遠い。その顔は嘗て天竺という暴走族を率いていた総長、未だ陰ることのないカリスマを魅せていた。

  「やるなら徹底的にやるぞ。抜かるなよ?」

  首を傾げると共にカラリとイザナのピアスが音を立てた。

  [newpage]

  物騒な話をするのは基本武道のいないところ。そのため武道はイザナ達が動いていることは一切知らない。しかし報告をするためにイザナ達のいる執務室に天竺の面子が頻繁に訪れるようになった。

  その結果クラブでは起きていなかった武道だが、後日シレッと顔合わせは終えたのである。

  イザナ達の執務室にノック音が響く。返事をすると共に速攻で開く扉。現れたのはあの水族館の日から頻繁に顔を出すようになった灰谷兄弟。

  「タケミチー!元気にしてたかー?」

  「お、今日も可愛い格好してんじゃ〜ん」

  満面の笑みを浮かべた竜胆はその格好を崩さずに武道の元へと近寄る。武道も武道で竜胆に懐いたのか嬉しそうに駆け寄る姿が見える。竜胆の撫で方が気に入ったのか撫でて撫でてといった声が聞こえそうなほど尻尾を振り、竜胆の手を掴んでいる姿は愛らしい。

  蘭は写真と動画を寄越すことを条件に接見は許可されたが、写真と動画を撮ることにハマっているのか武道とはあまり交流せず、竜胆と武道を只管撮り続けている。

  灰谷兄弟だけかと思いきや、続けて入ってきたのは望月と斑目。望月は施設の子供達と同じように武道と交流しているが、斑目は竜胆と同じように武道を気に入りよく一緒に遊ぶようになった。イザナの中では斑目は竜胆と同位置……いや、友人枠というよりも同じ獣人枠やペット枠に近いのかもしれない。

  「元気かタケミチ、相変わらずデケェ目してんな」

  「よし、獅音様が遊んでやるよ」

  「オレがタケミチと一緒に遊ぶんで獅音センパイはいいっス」

  「竜胆テメェ……」

  竜胆と斑目は武道を挟んでよくバチバチしている。間に挟まれている武道がオロオロとしている姿は見慣れつつある光景だ。

  最後に部屋へ入ってきたのは武藤。冷静そうな顔をしているが元から面倒見がいい上に、何気に可愛いものが好きだったりするのを知ったのは武道キッカケだろうか。

  「チーズケーキ作ってきたからおやつにでも食えよ」

  手作りのケーキを持ってきて与えたり、武道用に何かと買ってくる武藤。施設での子供達にもそうやって足長おじさん的なことをしていたのは知っていたが、まさかここまでだとは思ってもいなかった天竺面子である。

  施設の子供は慣れるまで武藤に対してビビっているが、初対面でも尻尾をぶんぶん振って武藤に絡んでいた武道の存在がでかいのかもしれない。武道の場合は見知ったムーチョくんがいる!とテンション上げてただけだが。

  竜胆と斑目から離れ武藤に近寄った武道は、武藤の大きな手で頭を優しく撫でられている。その姿は未だ見慣れない光景だが、これもまた暫くしたら日常の一コマになるのだろう。

  しかしイザナの頭は痛い。武道の人誑しを考えたら天竺の面子も堕ちるだろうことは予想できていた。何せあの黒龍が完堕ちしているのだ。

  ちなみに九井からの交渉はイザナ達が不在の場合は第1優先で預けることを約束した上で、週1で黒龍の執務室に武道が顔を出すことで落ち着いた。もちろん貰えるものはガッツリ貰った上でである。イザナの懐も施設の寄付金も潤った。

  武道が皆に愛されるのは嬉しい。その上でイザナを第一に優先してくれるのである。武道のことは好きだし愛してると言っても過言ではない。呼べば武道はすぐにイザナの元に来てくれるので、心に余裕があるのも大きい。

  以前はたまに何処か心がポッカリ空いている感覚に陥ることがあったが、武道と出会ってからそういった感覚に陥ることがないとふと気づく。

  だからこそ場地と三ツ谷には既に会ってしまっているが、東卍面子に会わせたくなかった。絶対に武道のことを気に入る。万次郎筆頭に。

  だが今後のことや裏の動きを考えると東卍を巻き込んでおいたほうがいいこともわかるため、イザナは痛む頭に手を当てる。

  「イザナ……東卍はどうするんだ?」

  どうやら己の下僕も同じ考えのようで、イザナと同じように複雑な顔をしている。

  「……万次郎はギリギリまで会わせねェ」

  それでもやはり危惧する万次郎には会わせたくない気持ちも多々あるが、以前より譲歩できていることは進歩していると言えるのであろうか。