うす曇りの空が暁色に輝く午前六時。
(誠ー!起きてー!)
「うーん・・・なんだよもう朝かよ。あれ俺なんで裸で?」
寝巻きがわりに来ていたはずのジャージはなく、生まれたままの姿で目覚めた誠。昨夜は何かとても良い事があったような気がするが、良く思い出すことができない。
(知らないよー!もうさっさとパンツはいて!)
大神のコマが顔を赤くしながらパンツを投げた。投げ入れられたパンツに隠されたそこは朝から元気に大きくなっている。
「なんだよ。犬でも人の裸見るのが恥ずかしいのか?」
(そっ、そういう問題じゃないよ!早く支度しないとロードワーク遅れるよ!)
「おっと、そうだった」
誠は手早くロードワーク用の服に着替えると制服の入った鞄を持って部屋を出た。弟はまだ寝ている。父親は今夜も帰って来なかったようだ。
「おはよう誠。はい、お弁当」
玄関からそっと出ようとした時、母親が台所から現れて弁当を手渡す。
「弁当とか購買で買うから良いのによ・・・。というか体調大丈夫なのかよ、あんま無理せず寝てろよ」
「ふふっ、大丈夫よ。最近はちょっと調子が良い位なんだから。ほら、早く行かないと。」
誠の背中を押す母の手はいつもより力強く感じた。確かに体調は良いようだ。
「あんまり無理すんなよ」
「はいはい、誠も練習頑張りすぎないでね。行ってらっしゃい」
「ん、行って来ます」
誠は軽やかに駆けて行った。ロードワークを兼ねて、誠は毎朝走ってから高校へ向かう。途中、公園でのシャドウも欠かさない。
彼の夢はボクサー。高校卒業と同時にプロになる予定だ。早く働いて稼ぎたいと思っていたし、集団作業というものが何と無く苦手で、一人で闘うボクシングは性に合っていた。
(君は考えるのも苦手だもんね)
フワフワと誠の周りを浮かぶ大神のコマ。彼は霊的特異点であるこの町を守護する新米神獣だ。
昔からこの町は人間と神獣が協力して町を守ってきた。とコマは言う。
「お前は犬っころのクセに運動下手で頭でっかちだけどな」
本来ならば霊獣は憑依者の力を強化をし、憑依者はその知識を持って悪霊を狩るが、誠はとコマは反対であった。スポーツ万能な誠が力を、コマは知識を担当している。
あまり前例のない守護者同士だが、彼らの相性は良かった。
(誠こそ、人間なのに勉強しなさすぎだよ。今日の数学はミニテストあるよ? 勉強してないでしょ)
「げぇ!そうだった!ううーん、数学の補習やると練習時間が・・・コマ様!お願いします!」
(また僕が答えを教えるのぉ?もうやらないって言ったじゃん)
「そこをなんとか!ホネっこお供えするから!」
(もうしょうがないなぁ。多めにお供えしてね!)
「ははぁー」
性格の違う二人だが、なんだかんだでうまくやっている。今日も軽やかな足取りで学校へと向かっていった。
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悪鬼羅刹魑魅魍魎
人から生まれし妖異たち人に潜みて人を喰らう
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深夜2時。
タクシーから降りて無言で玄関を開ける。妻は既に寝ているだろう。中学生の息子は起きている気配がする。私は小さくため息を吐くと、自室へと入った。
もはや私の家の居場所はここくらいだ。物置がわりの小さな部屋。そこを私の書斎兼寝室にしたのは、息子が中学にあがり、夫婦仲も冷めた頃だった。
一人寂しく風呂へ入り、寝巻きに着替え、布団へと潜り込んだ。明日も家族とほとんど顔を合わせず、一日が終わるだろう。ゆっくりと眠気に飲み込まれる。せめて良い夢が見たいと思い意識を手放す。
その瞬間、世界がひっくり返った。慌てて目を覚ますとそこは何故か息子の部屋だった。
「なっ?なんだ?」
声がおかしい。身体も不思議と疲労感や足腰の痛みも消えている。自分の身体を見渡すといつもの寝間着姿ではない。半ズボンにTシャツ、自慰の最中だったのかズボンが下され硬くなった陰茎を握りこんでいる。
備え付けの鏡を覗くと、呆然とした顔の息子が写っていた。
「な、なぜ勝太に?」
男は自分の息子の身体の中にいた。
眠りにつこうとした男が、息子の中にいる。これは夢か幻か。脈打つ陰茎の胎動がやけに現実的だ。
「なっ、これは」
目の前のモニターには、おかずに使っていたであろう無修正のエロ画像。
「何故、私が・・・」
それは己の裸体だった。着替えやトイレ、風呂の写真。いつの間に撮られたのか。
「何だこれはっ?」
さらには、自分が見知らぬ男と性交している写真さえもあった。尻穴に陰茎を差し込み腰を振る自分。逆に尻を広げて目の前の男の陰茎を飲み込もうとする自分。
自分の知らない自分の写真。
「よく撮れてるだろ」
部屋のドアが開いていた。扉の奥には寝巻き姿の男がいる。
「お前は・・・」
男が服を脱いでいく。肌が、胸が、陰毛があらわになっていく。
「父さんの身体、人気あるんだぜ。尻も拡張して、どんな男とでも楽しめるようにしたし」
男の尻穴から何か革紐のような物が出ている。それを引っ張るとごとりと太いディルドが床に転がる。
「俺、父さんで童貞捨てたかったんだ・・・やっと夢が叶う」
そう言って男は、息子の肉体を押し倒す。馬乗りになった男の尻穴が息子の陰茎を飲み込んで行く。ゆっくりとゆっくりと、目の前の自分の顔が快楽に歪んでいく。
自身が見た事もない。いやらしい雌の顔。
全てが飲み込まれ、包み込まれると男の身体は上下に動き始めた。柔らかな肉に己の陰茎が包み込まれ、そして締め付けられる。
息子の陰茎から感じるソレに男は夢中になっていた。
「こんなの・・・。きっと夢だ。」
(夢ならば良いではないか。男の尻穴を楽しんでも。 例えそれが私の身体で、息子の身体と入れ替わっていたとしても。)
男は息子の身体を使って、がむしゃらに腰を振る。体位は後背位となって強く打ち付ける。
「あっあぁっ!」
腰を叩きつけるたび、いやらしい声が響く。それは男の声なのか、息子の声なのか、どちらの喘ぎかもわからない。
込み上げて来る何かを解放する為、男は一心不乱に腰を振り続ける。
「いぐぅ・・・」
息子の身体を使って、男は自分自身の中に全てを吐きだした。男の気が遠くなっていく。全てが抜けて消えかかりそうになる。
「畜生!間に合わなかった!」
人狼が結界を割り、中へと飛び込んだ時、佐藤親子はぐったりと倒れていた。
妖怪枕返し。
夢を操り夢を繋げ、人の生気を吸う。西洋ではサキュバスとも言われている。
「げふぅ、厭らしく暗い生気だったぜ。」
象のようなそのサキュバスは満足そうにゲップをすると、人狼へと目を向けた。
「何だおめぇ、おれの結界に入ってきやがって」
「おい、その生気を二人に返しやがれ」
「あ?馬鹿かよ?こんだけ濃い生気返すもんかよ。」
「そうか・・・じゃ仕方ねぇな」
人狼の神気が高まる。空間に光が満ち、その牙が発光する。
「な、くそっ!これでもくらえっ!」
危険を察知したサキュバスが鼻から黒い煙を吹き出し、人狼を包み込む。
「天牙光刃!」
しかし、それすら切り裂いて光の牙がサキュバスを襲う。
「ぐぁー!」
断末魔をあげながら、サキュバスは狼に飲み込まれた。
「うっぷ!あいつ脂ありすぎたろ・・・」
少し苦しそうに全てを飲み込むと、両手の平に生気を集中させ、球体を形作ると倒れた二人の親子へと返した。
(これで二人とも大丈夫かな?)
「まあな。 ただ一瞬でも夢が繋がっちまったんだ。 お互いの精神にどんな影響が出るかなんてわかんねぇよ」
(そっか・・・)
「とりあえず、元の場所に戻しとこうぜ。全部、夢だったって思ってくれたらラッキーだし」
人狼は二人を抱きかかえると、結界から脱出した。
「ふー、ここら辺で良いだろ」
親子を元の部屋へと返し、人気の無い公園へと向かう。変身解除を人に見られないように最新の注意を払って、匂いや音に気をつける。
「誰もいないみたいだな」
(うん、そうみたい)
「よし、じゃ変身解除するか」
一つに合わさっていた魂が分離する。一つは肉体へ留まり、一つは外へと。いつも通りの解除手順。しかし、今夜はどこか変だった。
「あれ?僕なんで?」
(は?なんで俺が目の前に!?)
戸惑うコマと誠。
「もしかして、僕(俺)達、入れ替わってる!?」
誠の身体にはコマが。空中に漂うのは霊体となった誠が。二人はしばらくの間、合体と解除を繰り返すが、一向に元に戻らなかった。
「へぇ、なんやけったいなことになってるみたいやなあ。やるなら今のうちやろか?」
(まだ様子を見ようよ。東の一族も動くかもしれないし)
二人の騒ぐ様子を遠くから大きな影が見つめていた。