変身物ー03_コマとおっちゃん

  翌朝。元に戻らない二人は、とりあえず家へと帰った。

  合体と解除を繰り返し、生気の尽きた二人はコマの提案で、コマの父親に連絡を取ることにしたのだ。

  (んで、どうやって連絡取るんだよ)

  「えーとっ、ちょっと電話借りるね」

  誠の携帯を取り出すと、コマは器用に操作して電話をかけはじめる。

  (お前、なんで携帯の操作とか知ってんの?)

  「勉強してたの」

  携帯を耳にあてながら、こともなげに応えると、電話が繋がったのか話し始める。

  「あ、もしもしジンさん?コマだけど、ちょっと困った事になっちゃって・・・。うん、そう。お父さんいる?」

  (ジン?というか普通にコマの親父は電話できるのか?)

  「父さん?そう、僕。コマだよ。うん、実は元に戻らなくなっちゃって・・・。え?すぐに来るの?いまから?あっちょっと!・・・切れちゃった。なんかすぐに来るって。」

  (来るって今からウチに来るのか?)

  「山奥の神社だから、そんなにすぐ来れるとは思わないんだけど・・・」

  ピンポーンと玄関のベルが鳴った。母や弟が誰かと玄関で話声がする。

  「誠ー!お友達が来たわよー」

  お互いを見つめ合う。コマと誠。

  (まさかもう?)

  「とりあえず行ってみよう」

  二人が玄関に向かうと、そこには見た事もない学生がいた。

  「やあ、誠君。急ですまないね。早速、練習に行こう。」

  長身で細身。白い髪に青い瞳。ボクシンググローブを肩にかける姿は、洋画の俳優のようだ。

  「にいちゃんすごいね!外国のお友達がいたんだ!かっこいいー!」

  弟が珍しいお客に興奮しているのを掻き分け、コマは彼へと近づいていく。

  「えーとっ・・・」

  「ハハッ、寝ぼけてるのかい?さあ、車は外に待たせている。早く行こう」

  そう言って、コマと誠を外へと促し、リムジンへと乗せる。母と弟達に見送られ、リムジンは住宅街を出発した。

  「あ、あの。父さんなんだよね?」

  「・・・」

  青年はコマの問いかけを無視し、誠の霊体をマジマジと見つめている。

  「枕返しか・・・、厄介なものを食べたもんだ」

  (えっ、どうしてわかるんだ?)

  「食べるという事は、そのものの一部を己の物とする事。魂を見ればその残滓は分かるさ」

  青年はそう呟くと、今度はコマへと向き直る。

  「コマ。禊の儀をちゃんとしてるのか?」

  「えっ!・・・えーっとその・・・」

  「全くお前という奴は・・・禊の儀をしないと完全に神気が同調できない事は知っているだろう。今回の原因は、同調が完全ではない為に、消化不良を起こして食べた物の影響を受けているのだ。つまり、お前の責任だ!」

  「ご、ごめんなさい・・・」

  コマが震えて、涙を流す。

  見た目的には誠が泣いているようで、誠本人としては、落ち着かない。

  (あー、まあ許してやれよ。その禊の儀ってやつすれば治るんだろ?さっさとそれして元に戻ろうぜ)

  「誠様の寛大な御心ありがとうございます。しかし、ことはそう簡単ではないのです。見ればあなたの魂には、今までの食べた悪霊の残滓が複数残っております。それを綺麗にせねば、禊の儀を行っても元に戻ることはできません」

  (そ、そうなのか?じゃあ、さっさっと綺麗にしちまおうぜ)

  「ありがとうございます。しからばこれから山で一週間我々と過ごしてもらいます」

  (へっ、山?一週間?)

  「コマよ。それまでの間、誠様の肉体を頼んだぞ」

  「へ?僕も行くんじゃないの?」

  「馬鹿者!誠様は学生の身、学生の本分を全うするよう、仕えるのも我々の使命!学業に励めよ」

  (ちょっとまてよ!コマに俺の代わりさせるのかよ!無茶だろ!?)

  「大丈夫です誠様。学業ならコマの得意分野。おそらく誠様よりも、良い成績を・・・。おっと口が過ぎました」

  (ぐぅ・・・)

  ド直球な正論に誠は何も言い返せない。

  「では、誠様はこのまま山に連れて行く。コマよ、後は頼んだぞ」

  「うん、わかったよ!僕がんばる!」

  (余計なことしなくていいからな!!)

  リムジンはコマを降ろすと、山奥へと走り抜けて行く。コマと誠。それぞれの一週間が始まる。

  [newpage]

  「おはよー、誠」

  「おっ、誠はやいじゃーん」

  教室に飛び込んでくる同級生達がみな机に座る誠に驚く。控えめの笑顔で答える誠は、制服を着崩さずにぴっちりと着込んでいる。

  ひょんな事から、誠の代わりに生活をするようになったコマは、学校に行く事が楽しみだった。

  コマは勉強が好きだった。何かを学んだり、知ったりするのは驚きと興奮をコマに与えてくれた。山奥の神社で過ごしていた日々とは比べ物にならなかった。

  誠と一緒にいたときも授業を聞いたりできたが、霊体だったので、先生に質問する事は出来ないし、教科書をめくるのも誠に頼まないといけなかった。

  それがいまや自分で本のページがめくれるのである。

  真剣にノートを取り、授業に手を上げる姿は周囲の生徒や先生から驚かれ、病気を心配されたが、何とか誤魔化す事が出来た。

  勉強面は楽しかったが、運動面ではからっきしだった。

  体育の授業では、盛大に転び。サッカーゴールに身体から突っ込むしまつ。肉体のスペックは、一流のスポーツ選手並みだが、運動センスがからっきしだった。

  もっとも最悪だったのは、ボクシングジムでの練習だった。

  「駄目だ!駄目だ!どうしちまったんだ誠。腹でも痛えのか!?」

  ジムの会長がミットを投げ出し、リングから降りる。

  「腑抜けたパンチ打ちやがって!てめえの持ち味の狼みてぇな気迫はどうしたよ!今日はもう帰っちまえ!」

  とぼとぼと家路を歩くコマ。狼の守護霊として生を受けたコマは、昔から狼らしくなかった。

  他の守護霊の子供に比べ、内向的で狩りよりも本が好きな霊だった。それ故によく言われていた。狼らしくないと。

  「僕、人間になりたかった。」

  コマの呟きはため息と共に夜道に消えた。

  [newpage]

  夜の銭湯。家の湯沸かし器の調子が悪く、弟と共に訪れた銭湯で、誠と入れ替わったコマは悩んでいた。

  「どうしよう・・・全然おさまんないよぉ」

  誠の魂と入れ替わったコマは、誠の肉体に宿る獣性が突如発現した事に困惑していた。

  脱衣所で服を脱ぎ、身体を洗って湯に入るまでは何ともなかった。しかし、湯につかった瞬間、どういうわけか陰茎にどくどくと血が流れ、大きくなってしまったのだ。

  固くなった陰茎は触れると爆発しそうに敏感で、手で隠すことも、湯の中で動く事も難しい。

  「にいちゃん、どうしたの?」

  突然動かなくなった兄を心配する弟。

  「あ、ああ。えーと、先に上がってろ。にいちゃん、もう少しだけ入って行くから」

  返事をしながら弟は出て行った。

  幸い今日は空いていて、頭を洗っている太った中年だけ、今なら股間で立ち上がるモノを見られずに、とりあえずは脱衣所までいけるはずだ。

  ゆっくりと立ち上がりかけると、中年の男は頭に湯をかけて、洗うのを終えてしまった。これでは立ち上がる事ができない。

  「お、にいちゃん、弟さんはどうしたんだい?」

  「あ、あの。暑そうだったんで先に上げました」

  「そうかい。にいちゃんも大変だな。あんな小さな子の面倒見ながら風呂なんてよ。ゆっくりできねぇだろ」

  中年の男は、きさくに話しかけながら、コマの近くに座った。男の股間で図太く揺れる陰茎からなぜか目が離せない。

  「いえ、そんな・・・」

  ドキドキと胸が高鳴る。陰茎は水面から顔を覗かせていた。手で隠す事も忘れている。

  「なんだいにいちゃん。溜まってるのかい?おっちゃんがちっとばかし手伝ってやろう」

  大きな手が太ももに触れた。払いのける事も忘れ、なすがままその手の動きを目で追う。

  「あっ」

  太い指が陰茎に触れた。ゆっくりと慣れた手つきで、男の手は陰茎を包み。上下に動かす。

  「あっあぁ・・・」

  コマにとって初めて他人から触れられた陰茎は腰が抜けるほど気持ちよかった。男はコマの反応に満足すると徐々に刺激を強めていく。男の黒く太々しい陰茎も立ち上がり、陰茎と陰茎が触れ合うように正面に座る。

  「にいちゃん、気持ちええか?わいのも、気持ちよーしてや」

  太い手が誠の手を掴むと、男の陰茎へと導く。熱いそれを握ると男の身体がおうっと震えた。

  浴槽が波立つ。

  共鳴する音波のように、次第に強く、激しく、荒々しく。熱に浮かされたコマは男に陰茎をすかれ、男の陰茎をすくことに夢中だった。

  「くっ、にいちゃんなかなかうまいやん、わい、いかされてまうわ」

  男はニヤリと笑うとコマの口を吸った。舌が蹂躙し、匂いが脳を犯す。

  「んんっ!!」

  堪えきれず、コマは射精した。

  「んっ!んんっ!」

  人の身体で体験する生まれて初めての射精に、雷に撃たれたように身体が痙攣する。何度も何度も、白く粘ついた液体が湯の表面に広がる。

  「こいつは美味そうだ」

  ズルズルと音を立てて湯を飲む男。そんな異常な行為もコマには上の空だ。心地の良い虚脱感。獣のような性欲は、凪いだ海のように穏やかだ。

  「ごちそうさん。またな、にいちゃん」

  口から垂れた精液を拭うと男は立ち去った。

  呆然と余韻に浸るコマが正気に返ったのは、風呂から出てこない兄を心配して、戻ってきた弟に発見された時だった。