昨晩の銭湯での一件から、コマの心は熱に浮かされたようだった。あの時のことを思い出すと陰茎が硬くなる。
授業中や歩いている最中、ふとした瞬間にあの男の顔を思い出し、頬が赤くなる。
「僕どうしちゃったんだろ・・・」
ジムからの帰り道。今日はスパーリングはなし。筋トレ中心のメニューを無難にこなした。
会長の視線が気になった。
昨日、叱られた事もあるが、会長の顔が銭湯であった中年の男を思い出させ、見つめられると身体が反応してしまい、何度かトイレに駆け込んだ。
性欲という事は理解していたが、こんなにも強烈だなんて。突き上げてくる熱を抑え込むのに、こんなにも苦労するなんて。
気分を落ち着ける為、途中の公園で休憩をする。
入れ替わり騒動からまだ三日しか経っていないのに、霊体で過ごした日々が遠い昔の事のようだった。
「おう、にいちゃん!久しぶりやな」
その声に振り返ると、銭湯にいたあの男だった。どこかの工事現場で働いて来たのか、汚れた格好で頭にはタオルを巻いている。
「あっ、やっ・・・」
顔が火照る。股間が硬くなる。咄嗟に立ち去ろうとした腕を、力強く捕まれた。
「なんや逃げんでもええやろ。また気持ちええ事したないんか?」
濃厚な雄の匂いがコマの鼻をくすぐる。
「えっ、僕、そんな・・・」
「ここ、ガチガチやんけ」
太い手がコマの硬くなった陰茎を掴む。
「へへっ、なかなかデカイのお。こんだけデカイとすぐ溜まってしまうやろ。おっちゃんが気持ち良く抜いてやるわ」
肩を抱かれて暗がりへと歩く。
夜の公園は人気もなく、林を切り開いた公園の為、奥側は木が密集した植え込みが多く、中に入れば周りからは殆ど見えなくなる。
「どや、おっちゃんの秘密基地やで」
木々を抜けると、四畳程のブルーシートが引かれていた。
缶ビールの空き缶。灰皿。使い捨てられたコンドーム。子供が駆け回る公園にやり場が出来ていた。
「んんっ」
呆気に取られる暇もなく。煙草と酒の匂いに口を塞がれる。
舌が絡む。唾液を交換する。コマはゆっくりとブルーシートに押し倒された。
制服のボタンが慣れた手つきでスルスルと外され、誠の鍛えられた胸筋や腹筋が露わになる。
「んぁっ」
口付けされたまま、大きな手が肌を撫でる。
腹筋の割れ目。左脇腹。胸の突起。
要所に触れられると楽器の様に蒼い音が鳴る。ズボンの中はすっかりキツくなり、既に限界に近い。
「若いモンは反応が良くて嬉しゅうなるわ。あそこの反応もええしなぁ」
口を離すとベルトに手をかける。触れたら爆ぜる青い果実。そっと皮を剥くように、丁寧に止め具を外し、ファスナーを下ろすと、若竹の香りが漂う。
トランクス越しに濡れた先端を舐める衝動を堪えて、男はトランクスをそっと脱がした。
「元気ええなぁ。昨日抜いたばっかやのに、若いモンはホンマうらやましいわ」
言いながら、男も作業着を脱いでゆく。
オイル。汗。タバコ。包まれていた匂いが外気に触れ、あたりに漂う。
ベルトに手をかけ股間を開けば獰猛な獣の匂いが立ち込める。腐りかけの果実の様な蠱惑的な匂い。その中心には先端まで包皮の被った太短い陰茎がコマを誘うように揺れていた。
「さわってんか」
ずいっと、男は腰を出す。匂いは脳を犯し、コマは熱に浮かされる。
高鳴る鼓動。触れたい。好奇心。憧れ。獣の自分よりも獣らしいこの男に、コマは引かれていた。
ふてぶてしく天を向く陰茎に手を伸ばすコマ。それは熱く固かった。
昨夜の銭湯での擦り合いのように、ゆっくりと手を上下に動かす。
「ええこや、もっと玉裏とか弄ってくれや」
大きく柔らかい玉袋。固い陰茎と対照的。
右手で陰茎をすき。左手で玉袋をもむ。
「おぅっ、おぉぉ・・・」
撫で擦ると男は喘ぐ。それが面白く、そして何故か嬉しく感じた。
男の手がコマの頭押して己の股間へと近づける。目の前には男の陰茎。臭くて汚い。
「舐めてくれ」
男の声が頭に染みる。絶対的なリーダー。群れを纏めるアルファ。心酔する師。父性。
「はい・・・」
男の陰茎を舐める。
太く短いそれは、ぶ厚い皮に包まれていた。ソーセージの先端のようなそこをチロチロと舌を這わせる。塩辛い味と酷い臭いが口の中に広がる。嫌な味ではない。むしろ好ましいと思った。
先端を舐めていると男が腰を動かしてきた。喉の奥を突かれて吐きだしそうになる。しかし、男の手が頭を押さえつけて動かせない。
「んんー!」
「堪忍な兄ちゃん。いや、いまはコマって呼んだ方がええかな」
「んっ!?」
「ダメやでコマちゃん。知らない大人と遊んだらあかんって教えられんかったんか? もうコマちゃんは、おっちゃんのオモチャやで」
男の腰が振られる。陰茎が喉の奥に触れる。
コマは男から離れたかった。その口内にある陰茎を吐きだして逃げ出したかった。しかし、身体は全く動かない。男の両手に頭を掴まれて、太い陰茎が口内を出入りする感覚とえづきに耐えるしかない。
「ええ顔するなぁ。そんな泣きそうな顔見たらおっちゃんも本気出さないかんなあ」
男の陰茎が一番奥まで入れられると、その太鼓腹に顔が触れた。丸く膨れた腹の奥に筋肉の壁を感じた。しかし、次第にその感触が柔らかくなっていく。
脂肪が増えてきているのだ。
男の身体がぶくぶくと太ってゆく。ツナギを押しのけ、胸や首、二の腕や太腿が風船のように膨らんでいく。
「あ、よいしょお」
掛け声と共に男から尻尾が生えた。全身が茶色の獣毛に包まれて、耳や鼻が形を変えていく。目の周りに黒ぶちのような毛が生えると、耳は丸くなり頭の頂点に動く。鼻が前方に伸び、マズルへと変わる。
「ここも戻さなにゃ」
玉袋が生き物のように脈動すると、ただでさえ巨大だった袋が、スイカサイズに肥大化した。毛皮に包まれたそこはクッションのようにもみえるが、そこから香るフェロモンは獣の鼻を狂わせるのに十分だった。
「わしの臭いきっついやろ。特に犬の鼻には効果バツグンでなあ。風呂場もコマちゃんにだけ効くようにしてたんやで」
巨大な狸獣人はそういってグリグリと股間をコマの口に押し付けた。脂肪に埋もれたそれを口で舐めるのは、泥や粘土に飲み込まれているようだった。
「あー、そろそろ一発目でそうや。ほれ、おっちゃんの神気たっぷり味わってくれな」
ドブッと音を立てて狸の陰茎から精液が出た。まるで身体の脂肪のようにドロドロとして粘性の強い黄土色の液体。
汗や垢を濃縮して煮詰めたような強烈な臭気が、コマの内側から鼻を通って外に漏れてくる。それでもコマは動けない。
瞳は虚ろで涙だけが流れ落ちていく。
「おぉ、くっさいのう。まだまだたっぷりあるからな。」
狸が再び動き始める。全身の肉は揺らして、誠の身体をオナホのように扱う。
ズリ、ズリ、ズリ。
夜の公園の片隅。ブルーシートが敷かれたその場所で、コマは朝まで狸のオモチャになった。