変身物ー05_誠と修行

  魂だけの存在になった誠が連れて来られたのは、山奥の神社だった。

  誠は既視感を感じながら、神社の鳥居をくぐる。

  誠の霊体が引き締まる。無いはずの心臓の鼓動が激しくなるようなそんな気分だ。

  「ここは神気に満ちた霊域。ここでならあなたの魂に仮初めの形を与えられる」

  コマの父親は、青年の姿からいつのまにか狼人の姿となっていた。

  「少し眩しいですよ」

  狼人の手の平から光が生まれ、それが誠を包む。

  「うっ」

  目が眩む眩しさ。思わず目を閉じて開けると、誠には手足があった。

  「え、あれ?」

  しかし、視線は低く、手足は毛むくじゃらだ。

  「俺?子犬に?」

  「誠様の精神の形から、その姿となりました」

  「だって俺、高校生だぜ?これじゃまるで」

  「コマのようですか?」

  「ああ・・・」

  言おうとした事を言われ戸惑う誠。

  「憑依者と霊獣が合体する事は、誰とでも出来るわけではありません。強い結びつきや精神の波長など、心が合わねばならぬのです。」

  「俺とコマが似てるから、合体できるのかよ・・・。あんな真面目野郎と俺が似てるのかよ・・・」

  「ええ、とても似てると思いますよ」

  狼人は微笑むと、誠を抱きかかえて社の中へと進む。

  社には全裸の男が一人。

  引き締まった身体は雫が滴り、湯気を立てている。

  「準備はできております」

  男は頭を下げると、その身体を惜しげもなく晒すように床に寝そべる。

  「誠様、この者を好きなようにお使いください」

  「はっ?」

  突然の発言に戸惑う誠。

  しかし、狼人は顔色一つ変えず、説明を続ける。

  「誠様の魂と結びついた陰気を完全に食べるには、陰気を受け入れる必要があります。つまり、一時的に陰気の元である妖異と合体するのです。」

  「はぁ?え?」

  驚く子犬を床に降ろすと、狼人は男と誠の回りに結界を作る。

  「彼はこの社に仕える人間。常に神気を受けて生活しているので、多少の陰気にも耐性があります。妖異と合体して、彼を犯し、全てを飲み込むのです。」

  「ちょっと待てよ!さっきからなんだよ!妖異と合体?あんなおぞましやつらと?そもそも、あいつらはもう喰っちまっていないだろう?」

  「いえ・・・います。」

  「え?」

  「あなたの魂の奥底にいる欠けら。そして私の中に注がれた欠けら達を合わせれば・・・」

  狼人が目を閉じ瞑想を始める。溢れる神気が陰り、黒い陰気が狼人から溢れる。

  「ぐうっ」

  狼人の身体が膨れる。

  引き締まった身体が風船のようにデップりとした脂肪に包まれ、端正な顔立ちがにやにやといやらしい顔に歪み、鼻が醜く広がり、豚鼻になる。

  「げふぅっ」

  豚人がそこにいた。

  暴飲暴食悪食の悪霊大食らい。

  ボクシングジム仲間に取り付き、コマと共に最初に倒した悪霊。

  「な、なんで」

  「ぐへへ、魂異合神んん」

  大食らいが合体の呪文を唱えると誠は豚人に吸い込まれた。

  身体が無尽蔵に膨らむ。

  鼻が捻れて広がる。

  陰部からグロテスクな逸物が伸びる。

  包皮で完全に包まれたそこは悪臭を放つ。

  心に真っ黒な物が満ちる。

  空腹感

  劣等感

  怨み嫉み

  性欲

  目の前に美味そうな男がいる。

  無駄な肉もなく、知性的な瞳。

  汚したくなる。

  俺と同じようにブクブクと太らせ、澄ました顔を快楽で歪ませたい。

  「ブヒィィ!!」

  誠は男に向かって突進した。

  口を吸い、舌で蹂躙してならすと、臭い男根をねじ込む。

  「ブフゥ!」

  気持ちが良かった。男の口が与える刺激。支配する快楽。

  邪念を込めた先走りが男の身体に注がれると、男の身体に脂肪がつく。

  こんなにも容易く支配できるのか。

  誠は男の細胞ひとつひとつが、意のままになる事を感じていた。

  欲望のまま、肉ダルマのような人間に変える事も、陰嚢を肥大化させ豚の睾丸のように変える事も、意のままだ。

  「ブヒッ」

  口の端が歪む。笑いを堪え切れない。

  こんな俺を。こんな醜い俺に。

  「プギィィ!」

  グロテスクな逸物から精液が迸る。

  支配の興奮から漏れたそれが男を更に変えてゆく。

  だが足りない。

  もっともっとだ。

  俺より醜く。浅ましく変えてやる。

  「そこまでです」

  スルリと黒い物が抜けた。

  合体が溶けて、誠の霊体と狼人が分かれる。

  狼人は涼しげに元の身体に戻って、男を介抱している。

  「欲望に飲み込まれてはいけません。欲望を逆に飲み込むのです。」

  「そんな・・・ごめん、俺止められなくて・・・」

  倒れた男に、いままで助けて来た人々の姿が重なる。

  欲望のままに、誰かを傷つけてしまった罪悪感。

  彼の正義にヒビが入る。

  「ぶひっ」

  しゃくりのように鳴くと、誠の姿が子狼から子豚へと変わってしまった。

  「誠様、飲まれてはいけませぬ。飲まれてしまえば、その姿のようにあなたの心は妖異へと変わってしまいます」

  「そんな!?最初より悪化するって事かよ?それならこんな事やらなければよかったブヒィ」

  「いえ、複数の妖異が残っていたまま、合体を繰り返していたら、複数の妖異の力を持ったとてつもない妖異の王が生まれていたでしょう。まだ軽い今だからこそ、悪意を飲み込み事がてきるのです。さぁ続けますよ。」

  狼人の姿が変わる。今度は昨夜倒した妖怪枕返しだ。

  「ちょ、ちょっと待っ!ブヒィ?」

  誠の修行は始まったばかりだ。