#04 ~人間と昆虫のクリーチャー仕立て~

  ◇

  翌日。

  二人は学校へは行かず、街へと繰り出していた。

  聡は奈央から遺伝した本能で、人間を捕食しその身に融合出来ることは把握している。

  しかし知識と経験は別物であり、実際に人間を捕食したいという欲求が抑えきれず、奈央を捕食デートに誘った。

  当然、奈央は大好きな彼氏の欲望を満たすため、喜んでその提案に応じ無差別快楽殺…… 捕食へと足を運んだのだ。

  何と悍ましく残忍なデートなのだろう。

  元々人間だった者が、その人間を捕食するなんて。

  しかも聡に至っては、昨日の夜までは人間だったというのに。

  人を捨て、心も体も全く別の存在となった愛すべき彼は、人を襲うことに何のためらいも感じず、ただ本能の赴くままに捕食と融合を繰り返してくれた。

  奈央はそんな聡の事が愛しくて愛しくてたまらなかった。

  目の前で、人間を捕食を捕食する彼の姿を見ただけで、全身の穴という穴から愛液が滲み出すほどに。

  「その勇敢な性格、俺にもくれよぉ! ぐえェェッ! ぶボォッ!」

  目の前では聡が警察官を捕食している。

  聡の捕食は、これで23体目。

  警官の両肩を異形の手で押し潰しながら鷲掴み、口から夥しい量の寄生虫を吐瀉物のように吐き出す聡の姿は、昨日まで人間だったとはとても思えない。

  昨日の夜、サイ防具生命体となった聡は、街に出てから捕食と融合を繰り返し、今では奈央ですら身震いするほどの姿へと変貌を遂げた。

  途中立ち寄った博物館で武者鎧の構成情報を取り込んだせいか、聡の体はサイボーグと鎧のパーツが混じった生体装甲に覆われている。

  バイオアーマーとか戦闘捕食形態と彼は言っていた。

  頭部は骨格が兜にも似た形となり、顔を包んでいたマスクは鬼の顔を模した黒い総面チックな形状へと変わっているが、上下に開く構造はそのままである。

  そして、彼の体から噴き出す蒸気に混じった強烈な臭気も、聡のままだ……

  そんな変わり果てた聡の勇ましい姿を見ながら、奈央は興奮を隠しきれない様子で股間からオイルのように粘ついた茶色い愛液を垂れ流していた。

  「奈央…… 今の捕食、どうだったかな?」

  聡は捕食融合を終え、残りカスとなった警察官の首をへし折ると、地面に放り捨て奈央へと向き直った。

  捕食と融合を繰り返す度に、聡は強さと残虐性を増している。

  そして、その姿さえも……

  総面が開いた奥に、蠢く白い筋繊維で覆わた顔が見える。

  無数のセンサーで作られた機械的な眼球、耳まで大きく裂けた口は寄生虫を吐き出すための噴射器官へと変貌していた。

  そこには聡の面影など微塵も残っていない。

  その顔を隠すように、上下に開いていた総面がカシャリと音を立てながら閉じると、白く光る目が奈央を捕らえる。

  鎧の形状をしたパーツは全て骨格で出来ており、その表面には金属繊維で出来た真っ赤なバイオ繊維が覆っていた。

  骨格の繋ぎ目からは赤黒い繊維で覆われたケーブルのような物が覗き、それが時折意思を持っているかのように脈打っている。

  生体マシンと無機物、そして生物が融合した歪で悍ましい異形の肉体。

  そんなバイオアーマー生命体と化した聡の姿を奈央は心から愛おしく感じながら言葉を返した。

  「素敵」

  奈央は、足元でジュクジュクと音を立てながら分解されている警察官だったモノに目もくれず、聡の体に抱きついた。

  そして、クチュと音を立て股間を聡の体に密着させる。

  聡の股間からウィーンッと、何かが伸びるような音が鳴り…… 奈央の股間に金属のペニスが突き刺さった。

  その形状は鎧の大袖を想わせる複数の蛇腹状のパーツで構成されており、奈央の膣内を抉るように奥へ奥へと伸びていく。

  奈央はその構造に合わせ膣径を広げ、ナノ単位でその形に沿うように密着させると高速で上下に動かし始めた。

  シュン…… シュンシュシュシュッ! 異形の膣とペニスが機械的に伸縮を始め、奈央の股間に激しいピストン運動を起こす。

  奈央の膣もその動きに合せ、内部で高速にピストン運動を繰り返し、腰を振らずに二人は快感を貪り合った。

  「聡の捕食、見ているだけでイッちゃいそうな位、興奮したよ。 このチンポも凄っごいエグイ……」

  「奈央の捕食だって容赦なかったじゃないか。 それにこの膣だって、凄く…… すご…… あっ…… な、何だ…… こ、ぐォバァツ!」

  奈央の膣に包まれ、その快感に身を委ねていた聡が突然苦しみもがく。

  その衝撃で膣から聡のペニスが抜け、奈央の体が地面へと転がった。

  「聡!?」

  奈央は驚きながらも、慌てて起き上がり聡に視線を向けた。

  聡の体から火花が散り、体内からグチョグチュと生物的な音を響かせながらブルブルと震るえている。

  そして……

  ボコッ! ゴキゴキッ!

  顔を覆う総面を吹き飛ばし、頭部を破裂させながら巨大な膨らみが飛び出した。

  顔の半分を覆うほど左右に大きく飛び出したソレは、内部に無数の黒光りする球体が敷き詰められている。

  「グギギギィーッ! ギィヤッ」

  大きく口を開き、叫び声のような奇声を上げた聡の下顎が バキッ!と音を出して外れて左右に割れると、その形状を巨大な鋏のような鎌のような形へと変えていく。

  異形の形へ変化を進める頭部を、まるで前に押し出すかのように背中が盛上がり、その形状をより禍々しい物へと変貌さる。

  そんな異質な変化を進める聡の体に、奈央は焦りの表情を浮かべた。

  「なにそれ…… どうしたの聡! 」

  奈央は、聡の性器を受け入れた際に膣に付着した体液の情報を調べ始めた。

  膨大な情報を取り込み複雑化した聡の複合遺伝子。

  無限にも思える長さの塩基配列を一つ一つ解析し…… 奈央は目を大きく見開いた。

  「蟻……」

  取り込んだ警察官の服に蟻が付着し、それが聡の遺伝子に入り込んでいた。

  他の生物との融合は奈央自身も経験が無い。

  目の前で新たな生命体へと進化を続ける聡を、奈央は驚きの表情で見つめた。

  「キィィィーッ!」

  もはや人では無い奇声…… いや高周波のような音を上げ、聡の変化は更に加速する。

  背中の盛り上がりは一向に収まる様子は見せておらず、遂には頭部よりも上に迫り出し、首と顔は前方へ突き出るような形へと変型していた。

  膝から下の脚がググググッと伸び、膝と足首の間でゴキンッ!と鋼鉄が折れるような音を出して“く”の字に折れ曲がると、新たな逆間接が形成されていく。

  全身を包み込んでいた鎧状の骨格から寄生虫…… いや、藍色をした夥しい数の蟻が飛び出し全身を包み込んだ。

  脇腹を突き破り、腕のように太いケーブルが飛び出すと、その表面にも蟻が這い回り、ギチギチと音を立てながら覆っていく。

  体中を隙間無く埋め尽くした蟻は、体表でゆっくりと溶け、まるで剣道の防具を思わせる藍色をした硬そうな生体外骨格へとその姿を変えた。

  頭部も、胴体も、手も、脚も、体を構成する全てが甲殻で作られた生体骨格へと変貌を遂げ、脇腹から飛び出したケーブルも昆虫の脚のような外骨格に変わっている。

  だが、それだけで聡の変化は終わりでは無かった。

  体表から今度は藍に染まった寄生虫が溢れ出し、全身の外骨格の上の柔らかそうな物質をコーティングするように覆い尽くしていく。

  まるで剣道の小手を包む生子にも似た質感。

  蟻の遺伝子を元に作られた甲殻に、寄生虫が持つ聡の最強をコーティングしたその姿は、まさに虫とバイオアーマーが融合したかのような生体外骨格と化していた。

  頬を突き破って生体ケーブルが伸び、肩に突き刺さるように接続される。

  それは体の至る所にも出現し、まるで血管の変わりを果たしているかのようだった。

  奈央は、そんな歪で悍ましい形へと変貌した聡を、胸の高鳴りを抑えられないような眼差しで見続けた。

  「シャァ……」

  聡が奇怪な声を上げながら、変わり果てた自分の体を確認するように腕や脇腹から突き出た脚を動かしている。

  そして、顎をカチカチと鳴らし触覚を蠢かせながら、奈央の方へその頭部を向けた。

  巨大な複眼の中に密集した生体センサーが奈央の顔を捕らえる。

  「オレ、進化…… 姿、変身…… まるデ、蠅男…… みたいダ」

  グロテスクな変身過程と、その変わり果てた生物的な生々しさは、確かに映画・THE蠅男を彷彿とさせた。

  しかし、そんな生やさしい物ではない。

  今の聡は、バイオアーマー生命体と化した肉体に蟻の遺伝子をねじ込み、融合させた異形の生命体。

  奈央ですら躊躇していた他の生物との融合をやってのけたのだ。

  「蟻男…… アントメンだね。 スパイダーメンやバッタライダーより格好いいよ」

  「怪人の方が…… 近イ…… けどナ……」

  聡の口からブシャーと液体が吐き出され、地面に転がる警察官に降りかかった。

  彼の体から煙が上がり、グジュグジュと音を立てその肉が溶け爛れていく。

  「蟻酸…… オレ、分かル…… 体内デ猛毒を……作れル」

  そう言いながら聡は、溶解していく警察官の体を踏み潰しながら、奈央に近づいていく。

  一歩、また一歩と近づくたびに、蟻酸がボタボタとアスファルトに落ち溶かされていく。

  奈央はそんな姿にも臆することなく、まるで宝物を見るように目をキラキラと輝かせていた。

  今までに見たこともない悍ましい怪物へと進化した聡の姿を心から愛しく感じていたのだ。

  「す、素敵」

  奈央は、そう呟くと自ら聡に抱きついた。

  聡の体表を包む小手にも似た感触を持つ組織からジュワッと体液が染み出し、奈央の体を濡らしていく。

  触れるだけで生体鋼鉄で構成された体が腐食するほどの強力な酸と、人間が耐えうる限界を超えた強烈な臭を放つ体液。

  そんな体液を奈央は自分の体に擦り込むように更に強く押しつけながら聡の体を抱きしめた。

  頭の上にポタポタと液体が垂れ落ち、奈央の顔にドロッと垂れてくる。

  奈央は嬉しそうに顔を上に向けると、眼前に体から突き出した聡の顔が奈央を見下ろすように垂れていた。

  聡の口から溢れ出た蟻酸が奈央の顔に糸を引かせながら垂れ落ち、奈央の顔の表皮を溶かしていく。

  「あ~ 聡の顔、格好いい……」

  カチカチと顎を鳴らしながら、聡の下顎が左右に大きく開いた。

  そして……

  奈央の頬に、巨大な顎が挟み込むように添えられ、ギチッと不快な音を立てる。

  今にも顔をその強靱な鎌で噛みつぶされそうな感触に奈央はブルッと体を震わせた。

  「奈央も…… 昆虫の遺伝子ヲ…… 体に…… 進化、凄いゾッ」

  その言葉の意味を、奈央は容易に理解できた。

  昆虫の遺伝子を取り込んだ聡の本能が、捕食本能と生殖本能で埋め尽くされている。

  言語処理すらままならない程、頭の中が本能で埋め尽くされているのだ。

  それは生物として当然の欲求であり、奈央自身もそれを望んでいた。

  奈央の本能が告げている。

  これこそが、自分の求めた究極の生命体だと。

  剥き出しの本能をさらけ出した聡を全力で受け止めるためには、自分の体に昆虫の遺伝子を組み込む必要がある。

  今までは、他の生物の遺伝子を体に融合するとどうなるのか未知数な部分が多く躊躇していた。

  だが、今は違う。

  奈央は、体を突き抜ける快感と期待で体を震わせながら、聡に返事を返した。

  「聡オススメの虫は何?」

  奈央は、どんな昆虫の遺伝子を自分に組み込むか、どんな生物に進化するかという楽しみで頭が一杯になっていた。

  綺麗な羽を持つ蝶か…… 蜂も美しく、それでいて攻撃的な一面もあり捨てがたい。

  聡が自分にどんな姿を求めるのか。

  それに対する答えに、奈央は胸を躍らせた。

  「ゴキブリ…… 生殖本能が凄く強イ…… 奈央にピッタリ……」

  聡は、その巨大な複眼を奈央の頭部に近づけ触覚を蠢かせながらそう答えた。

  その答えに、奈央はゴクリと喉を鳴らす。

  奈央が人間だった時に最も忌み嫌い、恐怖を感じた生物。

  それは彼女だけでなく、殆どの人間にとって同じだろう。

  そんな悍ましいゴキブリの遺伝子をこの体に組み込んで進化する。

  自分が人間にとっての恐怖の存在に成り果てる……

  奈央はゾクゾクとした快感を覚えた。

  あれだけ嫌悪感を抱いていたゴキブリの遺伝子が、自分の体に組み込まれた姿を想像するだけで下半身が疼く。

  「最高。 ありがとう聡。 私、ゴキブリをこの体に取り込む」

  奈央は、聡の巨大な顎に自らの手を添えると顔を近づけ舌を這わせた。

  ザラザラとした舌触りと、聡の臭いを放つ酸っぱい体液が奈央を興奮さる。

  「この体ハ…… 一度しか交尾…… デキない」

  「そうだね。 交尾は私が進化した後に、だね」

  そう、蟻のオスは交尾の後、死に至る。

  今の聡なら遺伝子操作でその制約を無くすことは出来るだろうが、この姿での全力の交尾は一回しか出来ない。

  ならば、交尾は進化した後に取っておいた方がいい。

  奈央は聡の体液を味わいながらそんなことを考えた。

  「今日の夜までお預けだね」

  「あア」

  その後、聡は溶解していく警察官の残骸に跨がり巨大な顎で体を噛み砕きながら、捕食という名に恥じない行為に耽り始めた。

  肉を喰らい、骨まで噛み砕きながら、聡は新たに取り込んだ昆虫としての剥き出しの本能をさらけ出していく。

  聡が人を食べている……

  人間が単なる餌へと成り下がった瞬間。

  その行為に、奈央は言いようのない興奮と快感を覚えていた。

  (私もあんな事しちゃうようになっちゃうんだ……)

  あの体なら……

  きっと凄い交尾だって出来るはず。

  奈央の妄想は、止まることなく大きく膨らみ続けた──

  ◇

  昼を過ぎ、奈央はひとり学校へと足を運んだ。

  聡は蟻と融合を果たした姿のまま、街へ繰り出し捕食行為に耽っている。

  街中で活動する蟻と、より強化された寄生虫を操り認識操作を行っているため、人間には聡を認識できない。

  ただ、聡の通った後は彼の放つ臭いで死体が転がる凄惨な状況になっているだろうが……

  人間がそれに気付くのはもう少し先になるだろう。

  「さて、と」

  奈央は、学校に到着すると周囲を見渡した。

  学校に来た目的はただ一つ。

  その身に宿す新たな遺伝子をもつ生物を捕獲するため。

  しかし、そう簡単に見つかるはずがない。

  だったら大勢で探せば良い。

  出来るだけ閉ざされた場所で、必ず目的とするモノが潜む場所を。

  その条件を満たす学校は好都合だ。

  奈央はキョロキョロと辺りを見渡し…… その目が2階の踊り場に人影を捕らえた。

  「おっ、丁度良いのが居た」

  剣道部で何度か見かけた事のある後輩の男女。

  女子の方は、中村早紀と捕食した際に軽蔑の視線を向けてきた少女だ。

  彼女には奈央の寄生虫がすでに入り込んでいる。

  奈央は、彼女の体から寄生虫を放ち一緒に居る男子部員の体内に侵入させた。

  「まずは実験しないとね」

  直後、奈央の体がボコボコと波打ちながら寄生虫に覆われていく。

  そして、パンッ!と破裂するかのように周囲に飛び散った。

  ◇

  部室棟へと繋がる廊下。

  胴と垂れを付けた道着姿の男女が柱の陰で、唇を重ね合っている。

  「そろそろ先輩達来ちゃうね」

  「3年生は1限多いからな。 たぶんそろそろ来……」

  男子部員が言葉を言い終わらないうちに、ピクンッと背筋を伸ばし体を硬直させた。

  そして、口から白い泡と涎を垂れ流し、白目を向いてガクガクと体が痙攣を始める。

  「ちょ、どうし─── 痛っ!」

  彼女の両肩を掴んでいた男子の手に力が籠る。

  ミシミシと音を上げ、まるで彼女の肩を砕いてしまわんとするほど強く……

  「痛い! 痛いって! 離して健太!!」

  「あっあっ…… あがぁがぁぎぎぃ!!」

  健太と呼ばれた男子部員の口から言葉にならない奇声が上がり、全身から汗が噴き出し始めた。

  まるで猛稽古後のように道着が濡れ、体が湯気を上げている。

  彼女の眼前に広がる彼の顔が内側からボコボコと波打ち、その変化に付いていけなくなった皮膚が裂け始めた。

  中から吹き出てきたのは真っ赤な血でなく…… 夥しい量の白い寄生虫。

  1ミリにも満たない小さな寄生虫達が、彼の顔を覆っていく。

  「嫌! 嫌! イヤーッ!!」

  彼女は悲鳴を上げながら離れようとするも、彼の両手が肩をガッチリと掴んだまま離そうとしない。

  そして、その両手から噴き出していた汗がいつの間にか白い液体…… いや寄生虫へと変わり、瞬く間に彼の体のみならず道着や防具までも白く染め上げていく。

  上から下まで全てを真っ白な寄生虫で覆われ、なおも口から寄生虫を吐き出しながらビクンッビクンッと痙攣する男子部員。

  その口からは声にならない呻き声だけが漏れ続けている。

  そして……

  「うっ! ガガァ! んグギギィ! ん……っ! んあぁ! んぁ~ん!」

  唯一、口として認識できる場所から発せられていた苦痛に満ちた低い声が、艶めかしい女性のような矯声へと変わっていく。

  白く染まった防具や道着が、いつの間にか白い筋のような血管が浮き上がり脈打ち始める。

  まるで防具が肉体の一部となったように……

  「ぷはぁ」

  口から噴き出す寄生虫の噴出が収まり、呼吸が落ち着きを取り戻すと、何かに解放されたかのようにそれは口を開いた。

  寄生虫に覆われ蠢いていた白い顔がパキパキと音を上げながら高質化し、両目が裂けるように開くと瞳のない真っ白い眼が開かれる。

  「ふふっ、やっぱり出来た。 細胞間の転移…… 便利な体になったものだわ」

  彼氏だったモノの変わり果てた姿を前に、彼女はあまりの恐怖に喉が詰まり悲鳴すらあげられない。

  毛穴の存在すら許さない石膏のような真っ白い女性の顔。

  体は男性の体つきだが、肉体が防具と細胞レベルで融合し不気味な白い筋繊維で覆われていた。

  「中々良い体ね。 これ、思ったより筋肉あるし結構強いんじゃない? 気に入った」

  その声は、健太ではなく奈央のものだった。

  奈央の目に異形と化した彼の姿に恐怖で声すら出せず、震えて涙と鼻水を垂れ流す女子部員の姿が映る。

  恐怖に歪んだ彼女の表情を見て、奈央は妖艶な微笑みを浮かべた。

  「お楽しみ中にあなたの彼を消しちゃってごめんね? でも、この体は彼の遺伝子も記憶も全て受け継いでるのよ。 だからお詫びにこの体で続きをしてあげる」

  奈央がそう告げその視線を下げていく。

  震える顔で女子部員がその視線を追うと健太の…… いや奈央と化した股間から白い垂を押し上げ異常な大きさにまで屹立した男根が姿を現わしていた。

  「な、なに……それ」

  「知ってるくせに。 あなたが大~好きなモノ。 昨日の夜だって上と下の口で咥え込んでたじゃない」

  真っ白な肉棒の先から白濁の液体が糸を引きながら滴り落ちる。

  それは、床に落ちると煙を上げながら大きな穴を開けていった。

  「あ~ これが健太くんの臭いなのね…… 私、結構好きかも。 あなたもこの臭い、大好きなんでしょ?」

  ゆっくりと彼女へ向かい、大きさを増しながら伸びてくる白い肉棒。

  彼女の前垂に触れたその肉棒は煙を出して垂と袴を溶かし、彼女の股間へと進んで来る。

  「嫌やっ、違う…… こんなの健太じゃない……」

  「あ~ そっか。 やっぱりそうよね。 確かにこんな大きさじゃ満足できないよね?」

  股間から伸びる肉棒がミシミシと音を上げその大きさを更に増大させていく。

  人の拳ほどの大きさまで太く、そして鋼鉄のように硬くなった金属化した肉棒が、彼女の膣口を目指し更に長さを増す。

  そして キュイーン と音を上げ、まるでドリルのように螺旋を描がきながら回転を始めた。

  「うそ…… 嫌だ、止めて! 誰か助けて! ギャー!!」

  彼女の膣にその螺旋がズブズブと侵入していく。

  切っ先が膣壁を抉り取り、彼女の膣を文字通り広げながら突き進むそれは、彼女に人の耐えうる限界を超えた激痛を与え苦しめる。

  体が反り返り、股間から血とミンチ状の肉片、そして白い煙と腐臭にも似た臭気を撒き散らしながら、少女は白目を剥いて激しく痙攣を起こす。

  そんな彼女を、奈央は慈しむように見つめながら頭を小手と融合した手で優しく撫でた。

  「まだ先っちょしか入れてないのに大げさね。 今から全部突っ込んであげるから!」

  奈央の腰がズドンッと凄まじい音を立てて彼女の体に打ち込まれる。

  ギュイーンというドリル音が更に大きくなり、その先端が子宮を突き破り、その勢いのまま一気に彼女の肺までを刺し貫いた。

  「ギャーー!!!」

  脳天まで突き抜ける激痛に彼女の口から断末魔の悲鳴あがり、股の間から鮮血のシャワーが撒き散らされる。

  しかし、同時に彼女は体内に熱い何かが注入されていくのを感じ取った。

  それは彼女のグチャグチャになった膣から子宮へと染み込み、その内部を浸食してく。

  「あなたの膣も体も、ちゃ~んと耐えられるように作り替えてあげたから、安心して快楽を貪ってね。 激痛と快楽って紙一重らしいよ」

  奈央はそう言うと彼女の体を抱き締め、ドリルペニスの回転数を更に上げていく。

  彼女の体がビクビクと跳ね上がり、白目を剥いたまま口をパクパクさせ白い液体と寄生虫を垂れ流す。

  「感じてるのねぇ? 私も チンポ凄っごい気持ちいぃ! うっ、来る! 来た来た!! 出そう! 出るぅ~!」

  ドヴァッ!

  奈央の体が反り返り、彼女の膣に熱い液体が注ぎ込まれた。

  ビチャッ! ビチャビチャ……

  直後、彼女の全身から白い煙が立ち上り、肉体がドロドロと溶け体が崩壊を始める。

  確実に死に至るはずの状態になっているが、奈央の遺伝子操作により彼女は死ぬ事すら許されず、激痛を超える痛みを味わい続けていた。

  「オスの射精って最っ高~ 癖になりそう……」

  奈央はドリルペニスを彼女の中からゆっくりと引き抜いていく。

  射精を済ませた奈央のドリルペニスは、今だ回転を続けており周囲に肉片と精液を撒き散らしながらズルズルと引き抜かれた。

  ドサリと、奈央の目の前で彼女の体が床に崩れ落ちる。

  彼女の体は防具や道着が全て溶け落ち、それどころか皮膚すらも失って、肉が剥き出しの状態になっていた。

  「実験としては良い素体ね。 どんな姿に作り替えようかなぁ」

  奈央はそう言いながら、ふと窓に視線を向けた。

  そして、ニタァと口を歪める。

  小さな蜘蛛が窓の縁にとまるのを見つけ、奈央は窓へ向け手を伸ばした。

  「あなた、試しに蜘蛛女にでもなる?」

  「いや…… だぁ…… 死なせ…… で」

  凄惨な姿になり激痛を受けながらも、死ねない体に絶望している彼女の答えに奈央はニタァと笑顔を見せた。

  そして、蜘蛛を摘み上げ彼女の口へと放り投げると、その口をキスで塞ぎ舌と共に蜘蛛を流し込む。

  肉が剥き出しの顔に奈央の口が触れただけで激痛が走り、彼女の体がビクンッと痙攣する。

  「むぐぁ! ゔギィ!」

  くぐもった悲鳴が漏れ、彼女の喉が波打つ。

  口の中へ蜘蛛が流し込まれ、そして喉を通り体の中に入っていった。

  彼女の体が徐々に変化を始めていく……

  「さて、どう変化するかな。 楽しみ」

  奈央はそう呟くと、白い顔を歪め邪悪な笑みを浮かべた。

  目の前で彼女の体がボコボコと波打ち始める。

  「あ…… がぁ! か、がらだがっ! あづいぃ! ぎぃぃぃギャァーッ!」

  彼女の体が、内側から作り変えられていく。

  胴体がグキグキと音を上げ上部へ押し上げられるように伸び、臀部が爆ぜるように後方へ突き出ていく。

  同時に長く伸びた腹部の肉が裂け、脇腹から節足を持った蜘蛛の脚が飛び出した。

  元からあった足は、その形を飛び出してきた蜘蛛の脚に合わせるように変化し、4本になった蜘蛛の脚が巨大に膨らんだ臀部を支えるように地面を踏みしめた。

  「がらだ痛だい!! わだしのがらだ! だづげでぇ!!」

  頭を両手が押さえ悲鳴を上げる少女の肩がバキバキと音を立て、元からある腕の下を突き破って新たな2本の腕が現れる。

  それは脚と同じ節を持った蜘蛛のモノへと姿を変え、彼女の頭を押さえつけている手も筋張った蜘蛛のそれへと変質し始めた。

  脚と手が複数の関節を作りながら長く伸び、その先を槍のような鋭い爪が生えた跗節へと姿を変えていく。

  「痛だい! 痛だいよぉ! あづい……あづ── シャーァ!」

  口が裂け、下顎が左右にバクリと割れると彼女の悲鳴が人ならざるものへと変わった。

  その口元には2本の大きな牙が生え、まともに閉じる事が出来なくなったその口からは粘液を周囲に撒き散らしている。

  そして大きく見開いた両目が赤く染まり、額を引き裂くように新たな黒い目が横一列に4つ並ぶと、彼女に新しい視界をもたらした。

  髪の毛は全て抜け落ち、頭部の骨格がメリメリと音を立てて耳や側頭部から節足を持った蜘蛛の脚がまるで角のように飛び出す。

  頭部の周囲を取り囲むように8本の蜘蛛の脚が広がり、激しく蠢めく。

  最後に、巨大な腹部と変わり果てた臀部の後ろから透明な糸がシュー!と吹き出し、彼女の体を宙に持ち上げた。

  その行為は、彼女の体に蜘蛛の本能が完全に融合したことを物語っていた。

  「へぇ~ 結構人間の形態は残るんだ」

  奈央は、天上から吊るされるように宙に浮かんだ少女を見上げながらそう呟いた。

  その姿は、まさに蜘蛛人間。

  口元は完全に蜘蛛のそれへと変わっているが、顔は少女の面影を残している。

  全身も硬そうな茶色い皮膚に覆われているものの、胸ははち切れんばかりに膨らんで乳首が大きく立ち上がっており、彼女が女であることを主張し続けていた。

  腰から下は完全に人としての形状を残していないが、純粋に人間と蜘蛛の遺伝子を受け継いだ生物がそこに居た。

  「シャー! シャァァアア!!」

  彼女は元からある目からとめどなく涙を流し、空中で変わり果てた長い節足を持った手を動かしながら悲痛な叫びをあげていた。

  人の身のまま蜘蛛にされた事で、彼女は今だ自我を保ち、苦痛と悲しみ、そして絶望に泣き叫んでいる。

  「蜘蛛も有りかも……」

  奈央は、泣き叫ぶ彼女を眺めながらそう呟いた。

  長い節足を器用に動かし、全身をくねらせながら泣き叫ぶ彼女の姿に奈央は言い知れぬ高揚感を覚える。

  そして、新たな進化の可能性を考えた。

  「色々な昆虫をこの体に取り込んで混ぜ合わせれば……きっと、凄い生物になるかも」

  奈央は、興奮に息を荒らげながら変わり果てた彼女へ迫る。

  そして、悍ましい蜘蛛の化物に変わり果てた自分の姿に絶望し、暴れ回る彼女へ1匹の寄生虫を寄生させた。

  直後、蜘蛛女の動きがピタリと止まり、その顔を奈央へと向ける。

  「ここから先は誰ひとり通さず見張ってて頂戴。 人間はあなたの餌だから、食べちゃって良いよ」

  奈央の言葉に大粒の涙を流していた蜘蛛女の目が鋭い眼光を放ち赤く光った。

  そして周囲に糸を張り巡らせ、踊り場に巣を張り巡らせていく。

  まるで自分のテリトリーだと主張するように。

  奈央は満足そうにその様子を見つめると、ゆっくりとした足取りで階段を上って行った。

  防具と融合した不気味な姿のままで……

  ◇

  奈央はまだ授業が行われている自分の教室へ向かい廊下を歩いていた。

  途中すれ違う生徒や教師達に手当たり次第寄生虫を寄生させながら。

  そして、教室の前へ到着した奈央は扉越しに中の様子を窺う。

  丁度今日の授業が終わるタイミングだった。

  「はい。 では今日はこれで授業を終了しま───」

  奈央は、ニタァと笑みを浮かべながら勢いを付けてドアをスライドさせる。

  バンッ! と大きな音を立ていきなり開かれたドアに、中にいた生徒や教師が驚いて奈央に視線を向けた。

  「みなさん、虫探しの時間です。 校舎内をくまなく探して、捕まえた虫をその体に取り込み、後で私にみんなを食べさせてください!」

  突然現れた異形の姿と化した奈央に、その場にいた全員が悲鳴を上げた。

  だが次の瞬間、奈央の体から体量の寄生虫が教室内へ飛び散り、生徒や教師に次々と寄生していく。

  教室中から上がっていた悲鳴は消え、誰もが虚ろな表情に変わると奈央に視線を向ける。

  クラスメイトから向けられる生気のないその視線に、奈央は満足そうに微笑んだ。

  「行け」

  奈央の言葉を合図に、皆が取り憑かれたかのように一斉に立ち上がり、我先にと教室を飛び出していく。

  彼らは、敢えて自分たちが最も嫌う虫を見つけ出し、その身に取り込むため校舎内を駆け回り始めた。

  その体からは、体内で増殖した寄生虫が周囲の人間へ寄生を広げ、1人また1人と生徒や教師を虫探しへと駆り立てていった。

  奈央は、その様子をニヤニヤと笑いながら見つめ、聡に思念を飛ばす。

  《ねぇ聡、学校で私達の進化を祝したパーティーでも開かない?》

  《キシャーッ!》

  すでに人としての言葉すら失った聡の奇声が奈央の体を走り抜けた。

  その人外の声を聞いただけで、奈央の体が肉体変化を始める。

  先程見た聡の姿を思い出しながら、体を変異させていく。

  ゴリゴリ! ゴキッ!

  骨や筋肉の構造を変え、奈央の体が合金の外骨格に覆われると、その上を小手の材質と同じ分厚い皮が包み込んでいく。

  頭部に巨大な複眼を模した目を作りだし、下顎を左右に割り広げる。

  「あ~ 早く聡とセックスしたい……」

  奈央は、両手で体を強く抱きしめ全身から聡と同じ臭いを再現した液体をジワリと滲ませた。

  そして、小手状の手を左右に開いた下顎で挟み込むように咥え、溢れ出る液体をゴクゴクと飲み込んでいく。

  秘所からボタボタと腐臭を伴う濁った愛液を滴らせ、その上でいきり立つ肉棒を擦り上げながら……

  「早く虫と融合したい!! 聡と交尾!! 交尾交尾ぃー!!」

  奈央は、巨大な目を赤く光らせながら、そう叫んだ。

  人としての面影を完全に失った歪な存在と化しながら、奈央は更なる進化の欲求にその身を焦がす。

  それは奈央自身の気持ちなのか、それとも寄生虫の本能なのか。

  すでに寄生虫と完全に同化した奈央には、そんなことを考える意味さえ失われてしまっていた──

  つづく