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「ヒーローが行方不明になるなんて前代未聞だぞ…
一体あいつは何をやらかしたんだ。」
ヒーロー本部のデータベースを調べながら、俺はそんな
事態に陥ってるあいつを思い浮かべて愚痴をこぼす。
あいつというのはハピネス・マークスという俺の同僚だ。
兎の獣人で遠距離の狙撃に定評があるヒーローなのだが
連絡が付かなくなって1週間が経とうとしている。
俺はシルバー・ジャスティス…この街でヒーロー活動を
している。あいつとは同期で面識もあるのだが…。
「プライドが高すぎるのも問題だな、好かれてないとは
思っていたが…誰も捜索に積極的じゃないとは…。」
そうハピネスはプライドが高く何かと角の立つ物言いが
原因で仲間内でも少し浮いた存在だったんだ。かく言う
俺もあまり得意ではなかったが…1週間も音信不通だと
何かしらの有事に巻き込まれている可能性もある…捜索に
対して本部の連中の消極的な様子を見かねて、この件の
担当に俺が立候補することになった。
「…やっぱりこの案件絡みのことだろうか。」
2名の一般人失踪について…あいつが担当していた事件の
リストから今回の件に関係がありそうな案件を調べる。
進捗は…なんだ?解決していないのか…被疑者の調査を
3日掛けて本部にて実施するも本件とは関係ないものと
判断…その後の捜査進展は無し。日付は1カ月前…だと?
それだけ時間を掛けて何も掴めなかったのか?あいつの
性格は少しあれだが成績はいつも優秀だった。そんな奴が
こんなに苦戦している案件を抱えているとは珍しい。
被疑者は…なんだこれは?名前も住所もすべて消去されて
いる。容疑が晴れたからって、データベースの情報を削除
するはずがないだろう?
「…はぁ…。一から調べ直しだな。まあ、なんとでも
なる。…いっちょ、行きますか。」
俺はそれ以上の情報を見込めないデータベースを離れ
自分の足で捜索を開始した。
[newpage]
元々、捜査されていた案件だったのもあって調べるのは
案外簡単だった。行方不明者は2名とも被疑者と面識が
ある人物で、名前をディアス・グレイスというらしい。
捜査していれば間違いなく最初に名前が挙がる人物になる
だろう。…このくらいならアクセルに任せて良かったか?
最近はだんだんと実力を付けてヒーローらしくなってきた
からな。ちなみにアクセルってのは俺のことを師匠って
慕ってくれる可愛い後輩のことだ、同じ系統の種族なのも
あって相性も悪くない。歳は10も離れてないくらいか?
さて、被疑者の自宅に到着しましたよ…っと。変わった
立地でもないし、一見して普通の家だな。怪しい所は…
しかし…ハピネスのやつ、行方不明者の捜査をしていて
自分が行方不明になるなんて笑えなさすぎだろう…。
「ディアスってやつに直接聞いてみるか。」
回りくどい事は性に合わない。俺はチャイムを鳴らした。
あいつが3日も掛けて調べた相手だ、流石に何も出ては
こないだろうが念の為といったところか…。
チャイムを鳴らして程なく玄関のドアが開かれ…。
「はい。どなたでしょうか?」
痩せ型の獣人が姿を現す。俺と同じ系統か?犬か狼…
暗めのグレーの体毛に金色の眼が特徴的だった。
「ヒーロー本部からきた、シルバーという。あなたが
ディアス・グレイスさんか?」
「はい。そうです。ぼくに何か用事ですか?」
男は優しそうな笑顔でそう答えた。俺がヒーローだと
聞いても物怖じすることもない。なるほど、怪しい所は
見当たらないが…一応聞いてみるか。
「ハピネス・マークスを探している。1カ月前にあなたの
調査を担当したヒーローなんだが、何か知らないか?」
さて…どんな回答が帰ってくるかな?
「…ちょっとここで待っててもらえますか?」
「ん?…あ、ああ。」
男はそう言うと家の中に入っていった。…これは予想外の
反応だ。この男が黒なら逃亡の恐れが出てくるが…家に
押し入るか?俺は玄関のノブに手を掛け…するとこちらに
向かってくる足音が聞こえ、俺はドアから離れた。
「玄関ではなんですので、中へどうぞ。」
「…ああ、わかった。」
男は俺を家の中に招き入れる。俺は有事に備え、相手の
敵意を可視化する能力を使った。男は穏やかな青色の光を
放っている…敵意は無い。ひとまず信用していいのか…?
男に案内されて家の中を進み…ある部屋に通された。
「…ハピネス!?」
「ジャスティス!…そうか、君が来たのか…。」
そこにはベッドに横たわる同僚の姿があった。すると
家の主はハピネスに手を貸して上体を起こしてやった。
ベッドの枕元に背を預けて座らせる。そして男は俺にも
椅子を用意してくれて…。
「お話があるようでしたら退席しましょうか?」
「ああ、そうしてくれると助かる。悪いな。」
男は俺の返答に笑顔で返すと部屋から出て行った。
「…さて、どういうことか説明してもらおうか?」
「ジャスティス、見逃してはくれないよな…。」
「意味が分からんことを言うな。…それよりもだ。
自分で動けないくらい…弱っているのか?」
俺はハピネスのメディカルチェックを行った。登録された
ヒーローならこれで大体のことはわかる。
「…!!…おい、エネルギー値が3分の1以下に低下
しているぞ!そんな激しい戦闘を行ったのか!?」
「…いや、…それが私にもわからないんだ…。」
行方不明者の案件が行き詰まり、ディアスの調査を再開
したところで原因不明の体調不良になり…現在に至る。
それも日を重ねるごとに悪化しているのだと…。
「そんな事態にっ!こんなところで何をしているっ!?」
「すまないっ!だが…っ…これだけは…自分でっ…!」
「プライドが高いのも大概にしておけっ!そんな悠長な
ことを言ってる場合じゃないってのはお前も…っ!。」
「わかっている…。それでも…私は…。」
何故こんなにも頑ななんだ…?俺には到底理解できん。
だが…プライドの高いこいつがここまで言っているのを
そう簡単に無下するわけにもいかないか…仕方ない…。
「はあ…。わかった、そこまでの理由があるんだろう?」
「ジャスティス…。」
「だが1週間だ、それ以上は待たない。それまでに解決
出来なかったら本部の医療施設に連れて行く。」
「恩に着る…私も、その時は腹を括ることにしよう…。」
そこまで触れられたくない何かがあるのか?まったく…
まあ、ヒーローとしてそういう大事にしてるところって
のは誰にでもあるものだしな、今回は大目に見てやるか。
「ところで、あの男は大丈夫なのか?一応今回の事件の
被疑者だったんだろう?」
「ああ…私も本人とこの家の事も、かなり調べたんだが
何も出てこない。痕跡一つ見つからなかった。」
「インヴィジヴル・イレイサーか…あのディアスって
奴じゃないのか…。」
「その線も…私なりに随分探ってみたんだが…。」
「一応俺の方でも調べる。ここにも毎日顔を出す…何か
あっても困るからな。本部の方は何とかしておこう。」
「何から何まで…すまない。」
それからもう少しだけ話をして俺は部屋を後にした。
「あ、お帰りですか?」
ちょうど部屋を出たところで飲み物の乗った盆を持った
男に遭遇した。それにしても…まさかハピネスが誰かに
貸しを作るなんてな…俺と、そして…この男に…か…。
「ああ、急な訪問ですまない。ハピネスが世話になって
いるようだ…その迷惑を掛けてないだろうか?」
「いえ、ぼくは大丈夫ですよ。迷惑だなんて…。」
「俺も様子が気になるから…明日も来ていいだろうか?」
「はい、是非お願いします。ぼくも彼のことが心配なので
ジャスティスさんが来てくださったら助かります。」
これも嘘は付いてないようだ…。能力を使ってもいるが
本能的にもこの男からは危険な反応を感じない。
「あの、シルバー・ジャスティスさんですよね?」
「ん?…ああ、そうだが…。」
「以前テレビの放送で見かけたことがあって…。ぼくと
同じ歳なのに素敵な人だなって思ってたんですよ。」
「ありがとうございます。でも、自分なんか…
まだまだですよ。そうだ…。」
調査を円滑に進める為に少し距離を詰めておくか…。
「せっかく同じ歳なんですから、俺のことは呼び捨てで
良いですよ。…俺もディアスと呼ばせてもらっても?」
「ええ。大丈夫です。それでは…ジャスティス君と…。」
「ありがとう…改めてよろしく。」
その後、用意してもらった飲み物を丁重にお断りしてから
家を出ることにした。さて…本部になんて報告するかな。
そんな事を考えていると…外に出て急に寒くなったのか
身体がブルっと震え、俺は尿意に襲われた。
(うぉ!?急に…なんだ…?どこか…トイレは…
ヒーローが立ちションなんか出来ないしな…。)
幸い近くの公園にトイレがあり…俺は用を足しながら
今日の出来事を振り返ることにした。ハピネスは簡単に
見つけることが出来た…だが少々面倒な事態だな…。
しばらくはハピネスの容体とあのディアスという男の
ことを調べながら過ごすことになりそうだ。
用を足し終わると…あまりに予想外の事態に頭を多く
使ったせいか、少し目眩がした。…まったくハピネスめ
この貸しは高く付くぞ?その後、ハピネスの件は調査中で
何かわかり次第報告を改めて行う旨の連絡を本部に送信し
この日はここで調査を終わることにした。
[newpage]
「師匠、朝ですよっ!…起きてくださいっ!」
「…アクセルか…もう…朝か…。おはよう。」
「おはようございますっ。もうすぐ朝ごはんが
出来ますから、リビングまで来てくださいね。」
そう言うと目覚ましの代わりをしてくれたアクセルは
部屋を出ていった。アクセルもそんなに朝は強くない
はずなのに…元気だな。
「さて…俺も…?…ん…?」
俺は下腹部の違和感に顔をしかめる。なんだ…?濡れて?
「~~っ?!…いや、落ち着け。そんなわけ…。」
30手前の俺がそんな…盛んな年頃でもなかろうに…。
俺はおそるおそる下着の中を覗きこんだ。
「…?…なんだ…?夢精…じゃないのか?」
布団もズボンも濡れてはいない。ただ下着がほんのりと
湿っていた。あの特徴的なニオイもしなかったが…。
「だったら…漏らしたとでも?いやいや…この歳で
まさか…。そんなはずはないだろう…?」
自分でそう言い聞かせながら…俺は新しい下着を持って
浴室へと向かい…疑惑の証拠を隠滅することにした。
アクセルも鼻が利くからな…シャワーでも浴びるか…。
「師匠。朝からお風呂なんて珍しいですね。」
アクセルは先に食べ終わって片付けに入ろうとしていた。
「…まあな。なんだか夢見が悪くてな…シャワー浴びて
すっきりしたぜ。たまにはいいもんだな。」
人は嘘を付くとき饒舌になるというが…俺も人のことは
言えないな。アクセル…嘘の審議は能力を使って調べたら
ダメなんだぜ…。しかし、幼児でもないのに…緩んでる…
のか?だったら…歳で?いやいや…まだ20代だぞ…!?
「そうかもしれませんね。そしたらオレは洗濯に…。」
「あっ!あ、アクセル!?今日は良いから…俺がする
からっ!…そうだ、本部に取りに行くやつを頼む。」
「…そう…ですか?わかりました、行ってきますね。」
俺はアクセルが出掛けて行くのを見送ってから…洗面所へ
やってきた。少量とはいえ…寝小便をしてしまったことを
後輩には知られたくない。先ほどシャワーを浴びた時に
軽く洗ってはきたものの…濡れた下着があれば色々と
疑われてしまう。洗い物をすべて洗濯機に放り込んで…
俺はようやく一息ついた。まあ、切り替えていこう…
とりあえず洗濯物を干し終わったら…今日もハピネスの
ところに行ってみるか。
[newpage]
午前10時半ごろ…俺はディアスの家までやってきた。
あの男がどんなに怪しかろうと現在ハピネスが世話に
なっていることには変わりないので、俺は手土産を持参
することにしたのだが…昨日から冷えるからか?家を出て
買い物の途中に2度もトイレに行くことになった。朝から
飲み物はそんなに飲んでなかったと思うんだが…?
玄関のチャイムを鳴らすと、昨日と変わらず優しそうな
笑顔を浮かべて男はドアを開けてくれる。
「あ、ジャスティス君。おはようございます。」
「おはよう。ディアス、昨日からすまないな。」
「いえいえ、そしたら今日もハピネス君の部屋に?」
「ああ、お願いしたい。会えるか?」
どうぞ、と彼に通され俺は家の中に入る。しかし…この男
人当たりの良い奴だな。被疑者でさえなければごく普通の
好青年、仲良く出来そうなんだがな…。
客間の前まで来てディアスがハピネスに声を掛ける。
「ハピネス君、ジャスティス君が来てくれたよ。」
「じゃ、ジャスティス!?ちょっと待ってくれ…!
すまない…ディアス君だけ入ってきてくれないか?」
俺たちは顔を見合わせた。俺はもちろんだがディアスも
意味がわからないらしい。一体なんなんだろうな…。
「…そしたら、ぼくだけ入りますね。すみません。
ここで待っててもらえますか?」
「ああ、かまわない。急ぎでもないしな…。」
ディアスは俺に頭を下げてからハピネスのいる部屋に
入っていった。聞き耳を立てるのは失礼だろうから…
やめておいたのだが…なにやらバタバタしているようだ。
しばらくしてディアスが顔を出して。
「ジャスティス君。お待たせしましたね。」
「いや、大丈夫だ。…そうだ、これを良かったら
食べてもらえると嬉しい。」
「あっ、駅前の。ありがとうございます。これ美味しい
ですよね。もらっちゃっていいんですか?」
「ああ、ハピネスが迷惑を掛ける。すまない。」
「ジャスティス君が気にしなくてもいいのに…。でも
有難く。後で飲み物と一緒に持ってきますね。」
そう言うとディアスはリビングの方へ進んで行った。
俺もハピネスの部屋の中に入らせてもらう。
「よう、元気か?…昨日と変わらずといったところか。」
昨日と変わらずベッドの上で枕もとを背もたれにして
座っているハピネスを見てそう思った。
「本部にはとりあえず誤魔化して報告しておいたが
本当に一週間が限界だからな?」
「ああ、恩に着る、迷惑を掛けるな…。」
「お前さえ良ければ今すぐでもいいんだぞ?まったく…
さっきもドタバタして何をしてたんだか…。」
「~~っ!?わ、悪い…。」
ハピネスは慌てた様子でそう答える。しかし…貴重な
姿だな。普段もこのくらい大人しかったなら嫌われも
しなかったんだろうが…まあ、良い薬かもしれんな。
「ところでデータの削除をしたんだろう?ディアスの
情報を知ってる限りで教えてくれよ。」
「ああ…これに入っている。」
そう言ってハピネスは記録媒体を俺に渡した。
「…なんでデータを削除した?」
そう俺が問いかけるとハピネスは俯き口を紡ぐ。
「それまで秘密なのかよ…。まあいい、どちらにしても
一週間だ。その時はすべて教えてくれよ。」
「本当にすまない…。」
そこで部屋のドアがノックされて声が掛かる。
「入っても大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。」
ディアスが俺が持ってきた茶菓子と飲み物を持ってきた。
「どうぞ。あっ、美味しかったです。ジャスティス君
ありがとうございます。先にいただいちゃいました。」
「気に入ってもらえたらなによりだ。」
「そしたら、ぼくはここで失礼しますね。お話の途中に
すみません。何かあったら言ってくださいね。」
そう言うとディアスは俺たちの分の茶菓子と飲み物だけを
置いて部屋から出ていった。
「被疑者でなければ…ただの好青年だな。」
「そうなんだ…ここまで張り付いても怪しいところの
一つも出てこない。ただ他の線も浮かんでこない…。」
「あれだけ気配りが出来れば誰からも好かれているん
だろうな。…誰かさんと違って。」
「ぐっ…。…はぁ…そうだな。私も見習うべきかもしれん
…次があったら、もう少し周りを見ることにするよ…。」
驚いたな…こいつがこんなに素直になるなんて…。
「さて、飲み物も用意してもらったし…いただこうか。
まあ菓子は俺が用意したやつだが…食べれるか?」
「そうだな、せっかくだから…いただこうか。」
「だが…その前に…。」
毒物検知…ヒーローになってからは常にこういうことに
気を張るようになった。絶対に大丈夫だと思っていても
必ず行うようにしている。
「いたって…普通の水だな。俺たちへの配慮か?」
大体こういうときはお茶の類が出るもんだが…毒物の
混入に気を付けていることを知っている…?
「いや、彼の場合は違うだろう。…そういう趣向だ。」
「それはどういう…~~っ!?」
(なん…だ…!?また…急に…?昨日から…どうして…
今朝も…何度も…トイレには行っただろう…!?)
「ジャスティスどうかしたのか?」
「い、いや。トイレに行きたくなった。すまん。
食事の前に…ちょっと借りてくる…。」
「…!?…あ、ああ…わかった…。」
俺は部屋を出てディアスの姿を探す…が見当たらない。
や、やむを得ない…断りを入れたかったが…トイレを
探させてもらおう…。いい歳したヒーローが漏らすわけ
にはいかないからな…。…しかし、探している時ほど…
探し物は見つからないもので…。
「ぐ…うっ…。どこに…あるんだ…?」
このままじゃ…漏れ…!?状況がひっ迫してきたその時
俺の後方から声が掛かった。
「あれ?ジャスティス君。どうかしましたか?」
「あ、ああ…すまない。ディアス、君を探していた。
トイレを借りたいんだが…。」
「あっ。すみません。ちょっと庭の方に出てて…トイレ
ですね?大丈夫ですよ。ハピネス君の居る部屋の横に
ありますので、使ってください。」
どおりで…部屋の中にいなかったはずだ…。しかし、隣の
部屋にあったのか…ずいぶんと遠回りをしたな…。
「ありがとう。…~~っ!?…か、借りる…な…。」
や、やばい…こんな状況…小さい時以来じゃないか…?
早く…いかないと…本当に…っ…!?…も、漏れ…?!
急がないといけないが、激しい動きは取れそうにない…
よろよろと弱々しい足取りでトイレへと向かう…。
だが、我慢し続けた俺の膀胱は既に悲鳴を上げており…
少しずつだが下着を濡らしはじめていた…。
(や、やっと…着い…~~っ!?も、漏れ…てるっ!?
…早く…っ…中へ…入らないと…っ!!)
ようやく目的地に到着し、ズボンと下着を降ろすと…
勢いよく…じょぼじょぼと大きな音を立てて流れ出すが
今の俺にそれを気にするだけの精神的な余裕は無い…。
「ふ…ぅ…。…間に合っ…て…ないが…。
盛大に粗相するのは避けられたか…。」
今朝のようにほんのりと下着を濡らしてしまった。
ズボンは…なんとか濡れていないらしい…。
「…情けない。こんなところ誰にも見せられないぞ…。」
俺はため息を漏らしながら備え付けの紙で濡れた下着を
拭く…苦し紛れだが、やらないよりはましだろう…。
そんな危機を脱した(?)その後…部屋に戻ったが…
さっきの件もあって…普通の水だと分かっていても水分を
口にする気にはならなかった…。そして、なんとか下着は
拭いて…もう濡れてはいないのだがニオイが気になり話に
集中できない…こんなことで…最悪だ…。
「…そろそろ失礼するかな、とりあえずもらった記録を
見させてもらうことにする。…また明日来る。」
「ああ…頼んだ。…っ!…ジャスティス…っ…!」
「ん…?なんだ?」
「…い、いや…なんでもない…。」
「…?そうか…?それじゃあな。」
結局、俺は昼前にディアスの家を出ることにした。
その際にディアスから…。
「もうお昼も近いですから、昼食を食べていかれては?
ジャスティス君の分も用意しますよ?」
と…言ってもらったのだが…。
「いや…ディアスには世話になりっぱなしだし…
今回は遠慮させていただくよ。」
断ることにした。…本当にそう思ってはいるのだが…
汚した下着を早く着替えたいというのが本音だ…。
「そうですか…では、今度は是非。ジャスティス君は
明日もうちに来ますか?」
「ああ、連日すまない。ハピネスの様子を見たい。
おそらく毎日になると思うが頼めるか?」
「ぼくは大丈夫ですよ。遠慮せずに来てくださいね。」
「ありがとう。…それではまた明日来させてもらう。」
「ええ。お待ちしてます。それじゃあ…。」
そんなやりとりをして…玄関まで見送られた。
本当にディアスは協力的だな…感心する。一般人がみんな
彼のようなら俺たちも助かるのだが…。
そして俺は自分の事務所への帰路に着いたのだが…途中
2回もトイレに立ち寄ることになる。昨日からやけに…
冷えるからか?そんなに…水分も摂ってないのに…。
それに…朝から心配事が絶えないせいか…頭が…
ふらふらする…な…。今日は…早めに休むか…。
俺はこの時…まだ自身に起こっている異変について…
深刻に考えていなかったんだ…。
つづく
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